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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎
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いざダンジョンへ

 魔法学園を出て、カグヤとシラヌイと一緒に街で食べ歩きをして宿へ。

 夕飯は宿の食堂で食べることに。今日のメニューはおすすめ定食で、肉の炒め物と焼き立てのパンだった。肉をパンに挟んで食べると肉汁が染み込んで美味い。

 明日はダンジョンということで、少しだけ酒も飲むことにした。

 軽めのワインを注文し、カグヤと乾杯する。ちなみにシラヌイは部屋で寝てる……食事の場に犬を入れちゃダメって怒られたからな。

 カグヤはワインをグイッとあおる。こいつけっこう酒強いんだよな。


「ぷっはぁ、おいしいわね。ねぇフレア、明日はダンジョンだけど、ダンジョンのことわかってる?」

「あん? ブリコラージュが言ってただろ、六十階層から分岐するって」

「ええ。六十階層まで行けばその先は大丈夫だけど、問題はむしろその前……ランダム階層ね」

「……なんかお前詳しそうだな」

「ま、冒険者ですから」


 カグヤはワインを飲み、デザートへ手を伸ばす。

 カットした果物が蜜漬けになっていて、楊枝を刺して口の中へ入れると、幸せそうに微笑んだ。

 

「レッドルビー王国にいたときに聞いたのよ。ダンジョンのランダム階層には謎解きや迷宮もあるって。こんな言い方はアレだけど……アタシとアンタ、頭悪いじゃん? 行けると思う?」

「…………」


 わからん。つーか、こいつよりは頭いいと思う。

 カグヤはカグヤなりに考えてるっぽいな。果物を食べつつ周囲を見る。


「この食堂にいる連中、みんな冒険者ね。ダンジョンで稼いでる冒険者も多そう……」

「ま、とりあえず進んでみればわかるだろ」

「頭悪いわね……ま、その通りだけど」


 デザートはカグヤに食い尽くされた。まぁいいけど。

 

「目的はダンジョンで遊ぶこと……じゃなくて、最上階にあるお宝だったな」

「ええ。魔法学園理事長が欲しがってるみたいね。遊びながら向かいましょっか」

「だな。じゃ、ごちそうさん。さーて風呂入って寝るか」

「あ! お風呂はアタシが最初だからね!」


 明日はダンジョン。今日はさっさと寝るか。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日、冒険者ギルドへ。

 受付に行くと、指名依頼が入っていると言われた。


「依頼主は魔法学園理事長ブリコラージュ様となっております。依頼内容はこちらでご確認ください」


 依頼書を受け取り、中身を改める。

 ダンジョンの攻略と宝の入手が達成条件になっている。依頼をクリアすると冒険者等級の格上げと白金貨二枚の報酬だ。三等冒険者が受ける依頼では例がないみたい。

 カグヤは興奮していた。


「じゃ、いくわよ!! ダンジョンダンジョン♪」

「おう。で、ダンジョンってどこだ?」


 受付嬢さんに聞くと、定期便が出ているらしい。

 王国東門から出ている定期便に乗って、三大ダンジョンの一つ『アメノミハシラ』へ向かうようだ。

 せかすカグヤに引っ張られギルドの外へ。

 シラヌイを連れ、イエロートパーズ王国東門に向かうと、そこには巨大なウシと連結した大きな荷車がいた。どうやらこれが定期便らしい。

 御者のおじさんに聞くと。


「片道銅貨三枚だよ。乗るかい?」

「乗りまーす! フレア、支払っておいて」

「俺かよ!? お前、自分のぶんくらい……ああもういいや。すんません、犬はいくら?」

「犬? 非常食かい?」

「違うし!! 仲間だし!!」

「まぁタダでいいよ」


 荷車には、ダンジョンに挑戦する冒険者がいっぱい乗っていた。

 同世代の奴もいれば、お爺ちゃんお婆ちゃん、脂の乗った若手冒険者グループや俺よりも年下なんてのもいる。これ、全員が三等冒険者より上の存在なのか。

 荷車はゆっくり走りだし、ダンジョンへ向かって進む。

 荷車には椅子がないので立っている。すると、近くにいたハゲ冒険者が俺に言った。


「おいお前、犬なんて連れてくんじゃねぇよ。クセーんだよ!!」

「いや、昨日洗ったよ。な、シラヌイ」

『わぅん』

「うるせぇ!! てめぇ、等級は!!」

「え、三等」

「は!! オレは二等だ、等級が上の冒険者に敬意を払うのは冒険者の常識だぜ? おい、先輩が命令する……この犬、外に捨てろ」

「…………」


 周りは何も言わない。あ、クスクス笑ってる奴もいる。

 もちろん、捨てるなんてしない。というか。


「おいハゲ……アンタ、アタシのシラヌイになんて言った?」


 カグヤだ。俺も頭にきてたけどこいつのが早かった。

 ハゲ冒険者はカグヤを睨みつける。


「クセェっつったんだよ。おいメスガキ、お前も捨てられたいのか? あぁん?」


 やっべ……カグヤの額に青筋が。

 ま、最初に喧嘩売られたのは俺だ。ボコボコにしてやりたいけど我慢しよう。


「蝕の型、『口内炎になっちまえ(グォー・ナイ・エイン)』」

「おっぶぉぉっ!?」


 ハゲ冒険者にそっと触れ、口の中いっぱいに口内炎を作ってやる。するとハゲ冒険者は口を押え、痛みのあまり声も出せず震えていた。

 俺はハゲ冒険者を蹴り殺そうとしたカグヤの足を押さえる。


「ま、こんなもんだろ。つーか、俺が売られた喧嘩を勝手に買うな」

「アンタが腰抜けだからでしょうが。シラヌイをボロクソに言われて頭に来ないの?」

「来てるからこうして苦しませてんだろ。殴ったり蹴ったりするだけが鬱憤晴らすわけじゃねーんだよ。たっぷり苦しんでる間はたてつく気は起きないだろ」

「陰険。アンタって根暗系?」

「お前も喰らうか? この狭い荷車で盛大に漏らせば冒険者カグヤは終わりだな」


 チリチリとした殺気……ハゲ冒険者よりカグヤのがむかつく。

 すると、ハゲ冒険者は痛みで気を失った。


 ああもう、さっさと到着してくれ。


 ◇◇◇◇◇◇


 アメノミハシラ。

 一言で表すなら、『デカい塔』だった。

 空間歪曲という魔法が掛けられた塔で、各階層の広さは最大で町一つの広さになることもあるとか。

 階層には宝箱が設置され、上階にいけばいくほどレアなお宝が入っているという。冒険者たちは中層まで進み、魔獣を狩ってその素材売買で生計を立てているらしい。

 ちなみに、踏破だれたことはないのだとか。

 俺とカグヤとシラヌイは、そんな塔を見上げていた。


「あのてっぺんか……お宝」

「なんかワクワクしてきたかも!」

『わんわん!!』

「とりあえず、六十階層まで進んで、そこから討伐ルートに進む。んで最上階まで行ってお宝ゲットだな」

「うん! 楽しみね、早く行きましょ!」

「おう。ふふふ、腕が鳴るぜ」


 俺もけっこう興奮してきた。

 初ダンジョン。ふふ、呪術師の村にはこんな面白そうなのなかったからな。

 しばらくは楽しませてもらおう。


「見て、ここ道具屋とか宿とかもあるみたい」

「お、ほんとだ。泊まり込みで挑戦できるのか」


 塔の周りには露店もある。いい匂いもするし、挑戦前の腹ごしらえでもするか。

 すると、変な男が近づいてきた。


「兄さん姉さん、どうだい、情報買わないかい?」

「は? 情報?」

「おうよ。このアメノミハシラの地図さ、二十階層までのルートを示した地図。お安くしとくぜ?」

「へぇ~、いいな。カグヤ、どうする?」

「なんか胡散臭いわね……つーか、アンタなに?」

「オレは情報屋。地図は金貨一枚、二十階層以上のルートを知りたいなら直接案内するよ。オレをパーティーに加えてくれたら最上階も夢じゃないぜ? ちなみに、雇う場合は一日金貨一枚だ。どうだいどうだい?」


 情報屋と名乗った男は、皮鎧に剣を差した三十代くらいの男だ。

 髪はボサボサで髭も生えてるし、なんか胡散臭い感じ……でも、不思議と悪い感じはしない。

 金はあるし、どうすっかな。


「どうする?」

「いらないわよ。なんか臭いし」

「臭い!? あの、胡散臭いならいいけど臭いは酷くない!? ねぇお嬢さん!!」

「お嬢さんって言うな!! アタシはカグヤよ」

「胡散臭いはいいのかよ……」

「で、旦那、どうよ? 見たところ初挑戦だろ? アメノミハシラの罠にかかって死ぬの嫌じゃね? 適度なスリルを味わえつつ適度なルートを案内するよ?」

「……ま、いいか。じゃあ案内してよ。とりあえず金貨三枚ね」

「まいどっ!!」

「ちょ、フレア!! いいの?」

「別にいいだろ。それに、お前とずっと二人きりも嫌だし」

「はぁぁぁぁ!? アタシこそ嫌なんですけど!!」

「まぁまぁお二人さん、喧嘩しなさんな」

「うっさい臭い!!」

「ひでぇ!! お嬢さんひでぇ!!」

「お嬢さん言うなこの……アンタ、名前は? 情報屋じゃない方よ」


 情報屋は「しまった」と言った感じで咳払いし、名乗った。


「オレはダニエル。このアメノミハシラで情報屋やってる一等冒険者さ!!」

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[一言] ふむ、この女にこびない感じとても良いですね。 掛け合いが上手なので、みていて不快感が無いです。
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