イエロートパーズ王国、到着
「イエロートパーズ王国?」
「うん。人間の魔法使いがいっぱいいる王国、そこで呪術師の反応を確認……でも、詳しいところはよくわかんない」
「上出来よ。あたしじゃ見つけられもしないからね。で、イエロートパーズ王国に行けば見つけられる?」
「……たぶん無理。わたしの力は対象に近づけば近づくほど効果を発揮しにくいから……イエロートパーズ王国で地道に探すしかないね」
「面倒ね……まぁいいわ」
ミカエルとラティエルは、イエロートパーズ王国に向かって飛んでいた。
天使なので移動は空だ。最初は船旅をしたいとラティエルは言ったのだが、イエロートパーズ王国に向かう船はしばらく出ないらしい。海が荒れてるから仕方ない。
「……それにしても、ムカつくくらい青い海ね。燃やしたい」
「だ、ダメだからね?」
「冗談よ。それより、フレアを見つけたら戦いを挑むけど、邪魔したらあんたでも許さないからね」
「わ、わかった」
ミカエルは、フレアとの一対一を望んでいる。
ラティエルとしては邪魔するつもりはない。それに、ミカエルの強さを誰よりも知っている。
聖天使教会最強、『炎』のミカエルは伊達ではない。
「ねぇミカちゃん。イエロートパーズ王国に到着したらご飯にしない?」
「あんた、食べてばっかね。デブるわよ」
「な!? ひ、酷いよぉ~!!」
「冗談よ」
二人の天使がイエロートパーズ王国に到着するまで、半日とかからなかった。
◇◇◇◇◇◇
「や~っと到着にゃん……あぁ疲れた」
「海の底だと日の光が差しませんからね……太陽がまぶしいです!」
「お嬢様が眩しいです!」
アイシェラを無視し、プリムとクロネは大きく伸びをする。
イエロートパーズ王国港に到着し、潜水艇からようやく解放されたプリムたち。
アイシェラは、エリザベータと握手する。
「なるべく早く戻る」
「ま、あたしも仕事があるんでね。一月くらいならここにいる。それを過ぎたら後は自分たちでなんとかしな」
「わかった。ではな」
「あの、ありがとうございました!」
「もう乗りたくないにゃん……」
エリザベータに礼を言い、三人はイエロートパーズ王国へ踏み出した。
ほんの数分歩いただけで、プリムは笑みを止められない。
「お嬢様、嬉しそうですね」
「ええ。だって……冒険が始まったんですもの!」
「お気楽にゃん……それより、これから人探しにゃん。ここは獣人の扱いがあんまりよくないから、うちはあんまり力になれない。情報屋の紹介くらいはできるけど、期待はしない方がいいにゃん」
「えーっと、ダニエルさんって堕天使様を探すんですよね」
「名前と堕天使ってことしかわかんないにゃん。こりゃかなりムズイにゃん」
「いいから情報屋を教えろ。場所は?」
「冒険者ギルドにゃん。昔、一度だけ使ったことあるにゃん」
「では、冒険者ギルドに行きましょう!!」
プリムは元気よく歩きだし、アイシェラとクロネが続く。
「はぁ~……」
「貴様、この町……というか、イエロートパーズ王国に住んでいたのか?」
「うんにゃ、ここは獣人の扱いが悪いにゃん。ヘタな犯罪やれば投獄、獣人は問答無用で死刑にゃん……」
「そんなバカな。獣人といえ人権はある。裁判は」
「ない。教えてやる。このイエロートパーズ王国は獣人にとって最悪の国にゃん。死より恐ろしいことがいくらでもあるにゃん」
「…………何を知っている?」
「……言いたくないにゃん」
クロネはそっぽ向く。
いつの間にかフードを被ってネコミミを隠し、尻尾もマントの下に隠していた。
「あのお姫様は幸せにゃん。何もしらずにこの国の明るい部分だけを見ていられる……羨ましくはないけど、あの笑顔は本物にゃん」
「…………」
「お前には言っておく。この国の外にある魔法研究所には絶対に近づくにゃ。あそこは……地獄にゃ」
「地獄、だと?」
「にゃん。特級冒険者序列第四位、ブリコラージュの作った魔法研究所……行けばきっと後悔するにゃん。お前はあのお姫様を守ることだけを考えるにゃん」
「……わかった」
「ん」
すると、前を歩いていたプリムが。
「ひゃっ」
「っと、悪いわね」
「い、いえ。申し訳ございませんでした」
真っ赤な髪の少女にぶつかり、頭を下げていた。
燃えるような赤髪の少女は少しだけ微笑み歩き去った。
アイシェラはプリムの元へ。
「大丈夫ですか、お嬢様」
「う、うん。きれーな人だったなぁ……真っ赤で綺麗」
「おのれ。お嬢様の柔肌に傷でもついたら……ああ、その時は私がもらえばいいのか」
「アイシェラ、うるさい。さ、冒険者ギルドに行こう!」
三人は、冒険者ギルドに向かって歩き出した。