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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎
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プリムたちの旅

 旅支度を終えたプリムたちは、ガブリエルの家でのんびりしていた。

 荷物は全てクロネの魔法袋へ収納したのでほぼ手ぶら。持ち物といえば、アイシェラとクロネは武器を、プリムはバッグにお金を入れている。やはり身軽なのはいい。

 夕食は町で済ませたので、あとは明日の出発に備えて寝るだけだ。


「はぁ~……イエロートパーズ王国かぁ。行きたくないにゃん」

「クロネの故郷があるんでしたっけ?」

「まぁ……故郷と言うか、獣人たちの集落と言うか。イエロートパーズ王国には知られてない、獣人たちの村……悪いけどこれ以上は言えないにゃん」

「それより、ダニエルだったか……堕天使の居場所は知っているのか?」

「知らないにゃん。あの婆さん、もう音信不通にゃん」

「ではどうしろと言うのだ。あてもなくイエロートパーズ王国内を彷徨えと?」

「うちが知るわけないにゃん。というか、うちの仕事はイエロートパーズ王国の案内にゃん。手紙を届けるのはあんたらの仕事にゃん」


 アイシェラとクロネはちょっと険悪になる。だがプリムにはなんとなくわかった。

 ガブリエルから預かった手紙の筒をそっと掴む。


「たぶん、わたしたちに『探せ』って言ってるのかもしれないです。行くのも、手紙を届けるのも、探すのも……ぜんぶ初めての『冒険』だから。ガブリエル様はわたしたちに『冒険』をしなさいって言ってるのかも……しれないです」

「お嬢様……」

「にゃん。うちは案内してこの首輪を外して欲しいだけにゃん」


 クロネには魔法の首輪が嵌められ、プリムに危害を加えようとしたり一定の距離を取ると電流が流れる仕組みになっている。文字通りの首輪だった。

 アイシェラはお茶の飲む。


「ふん。飼い猫には似合いの首輪だな」

「にゃんだと!? だったらお前がすればいいにゃん!!」

「黙れ!! お嬢様に首輪を付けられ飼われているようなお前に私の気持ちがわかるか!? お嬢様の意志一つで電流が流れる首輪……はぁ、はぁ、っくぅ~~~っ!! た、たまらん……お、お仕置き、お仕置きされたいぃぃぃっ!!」


 これにはクロネもドン引き……心底嫌そうにプリムに言う。


「ガチなお願いにゃん。アイツを連れて行くのやめるにゃん」

「……真剣に考えておきます」


 結局、アイシェラは連れて行くことになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 翌日、プリムたちは港へ。

 見送りにはどこかやつれた表情のギーシュがいた。


「や、やぁ……」

「ギーシュ? わざわざ見送りありがとう」

「い、いや……ははは。ちょっと忙しくてね、でも見送りたくて来たんだ」

「そうなんだ。お仕事、がんばってね」

「う、うん。ありがとう、プリマヴェーラ……元気出たよ」


 そうは見えない。だが、ギーシュを押しのけるように一人の女性が。


「よう、久しぶりだな」

「エリザベータ……まさか、お前が?」

「ああ。イエロートパーズ王国への海路はもう荒れてるさね。進めるのはブルーサファイア王国の潜水艇くらいさ」

「なるほど……適材適所だな」


 送るのは、ブルーサファイア王国の海軍中将エリザベータだ。

 ラーファルエルに船は殆ど破壊されたが、一隻だけ使える船があるという。それに潜水艇を搭載してイエロートパーズ王国の海を越える。

 イエロートパーズ王国への海路は数年に一度しか安定しない。安定期は逃してしまったが、潜水艇なら進める。


「覚えておくといい。海面が荒れ狂っていても水中は穏やかなもんさ。さ、さっさと乗りな」

「は、はい」

「世話になるぞ」

「にゃん……船、ちょっと苦手にゃん」


 三人は乗船し、船は出発した。

 ギーシュは見送りが終わると、ガブリエルが残した仕事に取り掛かることに。


「あぁ、プリマヴェーラ……なんだか遠くに感じちゃうよ」


 ギーシュは一人、トボトボと歩きだした。


 ◇◇◇◇◇◇


 プリムたちは船室に案内された。

 二人部屋が一つと一人用の個室が用意された。最初はクロネとアイシェラ、プリムと分けたのだが、アイシェラもクロネも一緒が嫌だというので、クロネを個室にしてアイシェラとプリムにした。が……アイシェラが気持ち悪いくらい興奮したので、アイシェラを一人部屋にしてクロネとプリムが同室に。クロネもアイシェラよりはプリムがいいと了承してくれた。ちなみにアイシェラは悲しんでいたが二人は無視。

 甲板に集まり、これからの話をする。


「確か、イエロートパーズ王国は魔法の国でしたよね」

「そうにゃん。あそこ、人間が優遇されてる国だから、うちみたいな獣人はあまり歓迎されないにゃん。幸い、うちはネコミミと尻尾を隠せばなんとかなるから平気にゃん」


 クロネは魔法袋からローブを取り出し、尻尾を隠しネコミミを覆い隠す。


「あぁん。せっかく可愛いのにぃ……」

「可愛いって……ふん、変な奴にゃん」


 ちょっとだけ照れるクロネ。

 アイシェラは何が悔しいのか、クロネを睨むように言う。


「……イエロートパーズ王国に到着したら情報収集だ。名前がダニエルで堕天使……くそ、これだけで集まるとは思えんな。それに堕天使ということは言わない方がいいかもしれん」

「わかっているのが、男性で名前がダニエル、堕天使ってことだけですよね……容姿もわからないし、けっこう大変そうかも」

「イエロートパーズ王国は若い魔法使いがかなりいるにゃん。情報源としても使えるかどうか」


 いろいろと大変だ。クロネは面倒くさそうに、アイシェラはため息を吐く。だがプリムだけは嬉しそうに笑っていた。


「なんか、冒険って感じですね!」

「そうですねお嬢様!! ふふふ、冒険、お嬢様と冒険……」

「うちはさっさと自由になりたいにゃん……」


 船は、イエロートパーズ王国に向かって進んでいく。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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