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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎
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五等冒険者のフレアとカグヤ

「申し訳ございません。五等ではダンジョンに挑戦することはできません」

「「え」」


 朝早く冒険者ギルドに来た俺とカグヤは、受付のお姉さんにそう言われた。

 これにはカグヤが食ってかかる。


「ちょ、なんでよ!! 冒険者ならダンジョンに挑戦……」

「ですから、五等では入場許可が下りないのです。イエロートパーズ王国のダンジョンは『三大ダンジョン』の一つである『大迷宮アメノミハシラ』……危険が多く付きまとう最難関ダンジョンです。入場資格は『三等冒険者』からになります」

「さ、三等……あ、アタシたち五等だから、あと二つ上げないといけないの?」

「はい」


 マジかぁ……いきなり出鼻くじかれた気分だ。

 受付嬢さんは冒険者でごった返す掲示板を指さす。


「五等ですと、薬草採取やドブ掃除が主な依頼ですね。討伐系は上位冒険者に人気がありますし、三等以上はダンジョンに挑戦しますので、どうしても採取系や掃除系が残ってしまうのですよ。新人冒険者の第一歩として、まずは手頃な」

「アタシたちはそんなひっくい次元の依頼は受けないの!! アタシたちの強さ知らないの!?」

「……申し訳ありませんが、存じ上げません」

「なんかこう、SSとかSSSとかの討伐ないの!?」

「…………」


 やべ、受付嬢さんの笑顔が死んでいく……カグヤの奴、こんなだから問題児扱いされるんだっつの。

 俺はカグヤの襟を掴み受付から引き剥がす。


「ぐえっ!?」

「すんませんでした。ちょっと依頼見てきまーす」

「ちょ、アンタなにすん「ほれ行くぞー」っぶぁ、引っ張んな!!」


 俺とカグヤは、依頼書が剥がされて寂しくなった掲示板の前へ。朝一に貼られる依頼書は冒険者たちの取り合いになる。なので、人がいなくなった掲示板は残り物しかない。

 確かに、掃除の依頼や薬草採取の依頼ばかり。しかも賃金がめっちゃ安い。

 カグヤは俺の手を振り払う。


「ったく、なーにが三等以上よ。ダンジョンは冒険者ギルドの物じゃないでしょうが」

「うっせぇなぁ。いいから、他の依頼をやって等級上げようぜ。せっかくだし、面白そうな依頼ないかな」

「あのねー……残り物の依頼なんて碌なモンないわよ」


 掲示板を眺めると、面白そうな依頼がいくつかあった。


「お、見ろよこれ。『下水道に住むネズミ退治』だってさ。なんか面白そう」

「どこがよ。下水なんて臭いに決まってるし汚れるし絶対ヤダ。やるならアンタ一人でやりなさいよ」

「えー……じゃあこれ、『赤ちゃんのお世話』だって。赤ちゃんの世話してくれる人募集だとさ」

「いやよ。赤ちゃんの世話って……これ、母親が一日のんびり過ごしたいから代わりに世話してくれってやつよ。なんか嫌」

「お前なー……じゃあお前もなんか探せよ」

「ん~……」


 カグヤは掲示板を隅から隅まで眺める。そして、掲示板の隅っこにある古ぼけた依頼書を見つけて手に取り……気味が悪い笑顔で笑った。


「くっくっく……これこれ、こういうのよ」

「お前、マジで気持ち悪いぞ」

「うっさい。それよりこれ見なさいよ」

「あん? どれどれ……」


 カグヤの手にある依頼書には、『アナンターヴァイパー討伐』と書かれていた。


「えーっと、討伐レートSS、アナンターヴァイパー討伐。討伐後は解体し、毒袋と牙と眼球を持ち帰ること。報酬は大金貨十枚……って、なんだこれ? 毒蛇討伐か?」

「みたいね。依頼者は魔法学園の研究者みたい。研究用の素材に使用するって書いてあるわ」

「これ、いつの依頼だよ……本人も忘れてんじゃねーか? それにSSレートってかなり強いんじゃねーの?」

「なによ、自信ないの?」

「いや、倒せると思うけど」

「短期間で等級を上げるにはこういう依頼を受けないと!! それに強そうな相手と戦えるなんて面白そうじゃん!!」

「んー……まぁ確かに」

「じゃ、決まりね」


 カグヤは依頼書を受付嬢さんの元へ。

 そして受付嬢さんは淡々と言った。


「申し訳ございません。こちらの依頼は『四等』から受けられます」


 再び、依頼掲示板に戻った俺とカグヤだった……。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………」

「ほら、機嫌直せって。依頼はまだいっぱいあるし……」

『くぅぅん』


 不貞腐れたカグヤはシラヌイを撫で、掲示板を見ようとしない。

 なんか俺、こいつの保護者みたいになってるな……めんどくさい。

 王国の冒険者ギルドなので掲示板は横長で広い。依頼はまだいっぱい貼ってあるが……やはり、目ぼしいのはなかった。マジで薬草採取と掃除しかない。


「お、見ろカグヤ。魔法学園からの依頼だ」

「……どうせ薬草採取でしょ」

「違う違う。見ろ、『授業の補佐』だって。せっかくだし受けてみようぜ、魔法学園でどんな授業やってるか見るチャンスだし、いきなり大物じゃなくてこういうのから始めるのもいいだろ」

「言っておくけど、冒険者としての経歴はアタシのが長いからね」

「はいはい。で、どうする?」

「……まぁいいわ」

「よし決まり」


 依頼書を剥がし受付嬢さんの元へ。

 

「それでは依頼を確認します……では、こちらの依頼で間違いないですね?」

「はいーっす」

「では、五等冒険者ヴァルフレア様、五等冒険者カグヤ様。依頼書に従って依頼人の元へ向かって下さい。後の指示は依頼人から受けていただくようにお願いいたします」

「了解です。じゃ、行くぞカグヤ」

「ええ。あーあ、退屈になりそう」

「アホ、そういうこと言うなっつの」

『くぅぅん』


 というわけで、俺とカグヤとシラヌイは魔法学園へ向かった。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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