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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎
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船上は戦場

 ぶっちゃけると、俺とカグヤは無関係だ。

 でもまぁ、別にいい。俺はともかく、カグヤは暴れる口実ができたとばかりにやる気だ。

 魔法学園に入学たときのクラス分けの戦い。ルールは、イエロートパーズ王国に到着するまでの三十分、戦って立ってればいい。

 船上は、すでに戦場になっていた。

 Aクラスの甘い汁を啜ろうと、魔法使いの卵たちが拙い魔法を撃ち合い、同期の魔法使いたちと戦っている。

 俺の中の魔法使いのイメージは、魔法をぶっ放す後衛だけど……どうやら、魔法使いにもいろいろな種類があるようだ。


「雷よ、わが剣に宿れ!!」


 フリオニールは剣を掲げ自らの身体と剣を魔法で帯電させる。

 そういえばフリオニール、雷属性とか言ってたっけ。俺とカグヤの見立て通り、魔法使いの卵たちの中ではそこそこ戦えるようだ。


「唸れ!! 『サンダァァーーーッ!! ブレェィィィィドォォッ』!!」


 剣を振ると紫電の雷が周囲の魔法使いの卵たちを痺れさせる。

 というか、けっこうデカい声で叫ぶのな。フリオニールは帯電状態のまま剣を振っている。そして、炎を剣に纏わせて戦う少年とつばぜり合いをしていた。


「っく……きみは炎か!!」

「そういうきみは雷か!! はは、面白い……勝負だ!!」

「いいだろう!! わが名はフリオニール!! 二つ名は無いが敢えて名乗ろう!! 『紫電剣』フリオニールと!!」

「ならばオレも名乗ろう。オレは『紅蓮剣』ラチェット!! いざ参る!!」

「おおっ!!」


 なーんか世界が違うな……正直、暑苦しい。

 ま、フリオニールは放っておいていいだろ。


「あれ、カグヤ……あ、いた」

「ほらほらほら!! アタシを打ち取りたいならまとめてかかってきなさい!!」


 カグヤはすでに十人以上倒している。手加減しているのか、気絶せずに蹲っているのが大半だ。

 でもあれ、見た感じ骨が折れてるぞ……どこまでやっていいんだ?

 カグヤは、詠唱を始めた魔法使いの懐へ一瞬で潜り込む。


「神風流、『凪打ち』!!」

「おっぎゃぁっ!?」


 横蹴り……容赦ねーな。

 延髄を蹴られた魔法使いは吹っ飛んだ。カグヤのやつ、もう少し手加減しろよ。

 

『わぅぅ』

「ん、ああ。俺もちょっとは真面目にやるよ」


 シラヌイを撫でると、数人の魔法使いが俺の元へ。どうやら手を組むことを覚えたらしい。単体で戦っている奴らを狙っているようだ。


「いくぞ!! 援護を頼む!!」

「おう!!」「ああ……」「気を付けて!!」


 お、一人が格闘家で接近戦、残り三人がサポートだな。

 三人の魔法使いは詠唱し、杖を……ありゃ、俺じゃなくて格闘家に? ああそっか、攻撃じゃなくて補助系の魔法なのか。


肉体強化(マッスルアップ)!!」「腕力強化(アームアップ)!!」「速度強化スピードアップ!!」

「おっしゃあ!! はぁぁぁぁ……感覚強化(マインドアップ)!!」


 おお……格闘家の身体、キラキラ輝いてる。

 魔法による強化で強くなるのか……いいな、こういうの俺も覚えたい。

 格闘家は構え、一気に距離を詰めようと前傾姿勢に。


「いくぞ!!」

「ん、どうぞ」


 格闘家は地面がえぐれるほどのダッシュで俺の懐へ。どうやらそのまま腹に一撃くれようとしているみたいだが……ま、俺のが早い。


「ん、残念」

「っぐ……あぁぁぁぁぁっ!?」


 俺は『回転式』を抜き、格闘家の両膝を撃ちぬいた。

 回転式は六発。引金を引くだけで連射できる。両膝に二発の計四発撃ちこむと、前のめりになって転びゴロゴロ転がる。そして看板にあった樽に顔面を強打して動かなくなった。

 すると、魔法使いの一人が言う。


「な、なによそれ!! そんな武器使うなんて卑怯よ!!」

「いや、武器使っちゃダメなんて言ってないし……」

「それ、銃だろ!? 魔法使いが銃使っていいのかよ!!」

「あっちじゃ剣使ってるけど……」

「う、撃つなんて……ひどい!! 死んじゃったらどうするんですか!!」

「あっちじゃ炎の玉とか風の刃を撃ってるやついるけど……」


 なんか銃はダメっぽい……まぁ別にいいか。

 銃を腰に戻し、俺は構える。


「じゃ、こっちで」

「っく……構えろ、詠唱だ!!」

「ええ!!」「はいっ!!」

「…………えっと」


 俺と同世代くらいの少年と少女二人は、構える俺の目の前で何やらブツブツつぶやく……あの、攻撃していいのかな?

 ま、まぁ……やっちゃうか。


「流の型、蝕の型【合】……『虫歯二十本(トゥース・バイキー)』」


 両手に呪力を載せ、三人の間を音もなく通り抜ける。すると、三人は顔をパンパンに膨らませ蹲った。


「「「いっぎゃぁぁぁぁーーーッ!?」」」

「虫歯二十本。じゃ、そういうことで」


 ゴロゴロ転がる三人を放置し、俺は大暴れするカグヤの元へ。

 カグヤは売られた喧嘩を全て買っては叩きのめし、売られた喧嘩だけじゃなく自分から売っていた。カグヤの周りにはボロボロになった魔法使いたちが山のように積まれている。いつの間にかカグヤは恐れられ、逃げる魔法使いたちを追いかけるまでになっていた。


「あーっはっはっはぁぁ!! まてまてアタシはここよーんっ!!」

「やめろアホ」

「あいっだぁ!?」


 カグヤの後頭部をぶん殴ると、カグヤは前のめりになってすっころぶ。

 すぐに起き上がると俺を睨んだ。


「なにすんのよ!!」

「やりすぎだろ。お前、そのうち殺しちまうぞ」

「ふん、殺したら命を持って償わせるとか言ってたけど、アタシを殺せると思ってんの?」

「まぁそうだけどよ……お前、油断するとあっさり負けちまうから。円剣のマルチューラだっけ?」

「…………負けてないし」

「負けたって」

「負けてない」

「負けたって。認めろよ」

「負けてないっての!!」

「おわっ!?」


 カグヤの延髄蹴りが俺を襲う。だが、何とか防御した。


「……陸まであと五分くらいかしら」

「…………」


 たぶん、そのくらいだろう。すでにイエロートパーズ王国港は見えている。

 カグヤは足を引っ込めて構える。


「最後の相手はアンタみたいね……」

「はぁ……まぁ、付き合ってやるよ」

「ふふ。リベンジさせてもらうわ!!」


 五分後……俺とカグヤは疲労でへたり込み、最後まで立っていることができなかった。

 こうして、イエロートパーズ王国に到着した。


 ◇◇◇◇◇◇


 船から降りると、入れ違いで白いローブを着た連中が入ってきた。

 どうやら負傷した魔法使いの治療をしているようだ。そして、最後まで立っていた魔法使いたちは自分の足でイエロートパーズ王国へ入国した。

 そういえば、俺とカグヤは住所がない。入国って身分証が必要なんじゃ……。


「おいカグヤ、俺たち身分証ないぞ」

「あ、そういやそうね。どうしよっか?」

「んー……ま、なんとかなるだろ」

「そうね。とりあえずどうする? アタシ、お腹減ったわ」

「俺も……金はあるし、適当な場所で飯に「ようこそ、イエロートパーズ王国へ」……ん?」


 俺たちの前に、胡散臭そうな眼鏡をかけた男がいた。髪をオールバックにして優雅に一礼……あ、この声、船上で戦いの開始合図をした声だ。


「試験。大変お疲れ様でした……ここにいる皆さんはAクラスとなります」


 すると、俺たちと一緒に船を降りた連中が喜んでいた……あ、フリオニールもいる。さっきまで戦っていた炎の剣士と肩を組んで喜んでいるし。

 そして、船から担架に乗せられて運ばれていく魔法使いたちが横を通っていく。


「彼らは全員Bクラス。適切な治療を行うために魔法学園に向かいました。皆さんはここでいくつかの説明を受け、学生寮へ案内します。おっと、私はデズモンド。お見知りおきを」


 残ったのは二十人もいない。船には百人以上乗ってたみたいだし、残った連中は本当に大したもんだ。

 あ、そうだ。せっかくだし質問するか。


「あの、質問」

「はい、なんでしょう?」

「入国の審査とかないんですか?」

「はい。イエロートパーズ王国は少し特殊でして。来るもの拒まずなのですよ。それに……この国では住所などさほど問題ではありません。学び、鍛える者だけが住むことを許される」

「なるほど」

「フレア、あっちに屋台ある!! 行きましょ!!」

「おう。腹減った……メシだメシ!!」

「はい? あ、ちょっと!!」


 デズモンド先生が俺とカグヤを呼び止める。


「あなたたち、魔法学園に入学希望では!?」

「いや、間違って船に乗っただけ。んじゃこれで。またなフリオニール、どこかで会ったら飯でも食おうぜ」

「じゃあねー♪」

『わんわんっ!!』


 俺とカグヤとシラヌイは、港に出店している屋台巡りを始めた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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