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地獄の業火で焼かれ続けた少年。最強の炎使いとなって復活する。  作者: さとう
第六章・魔法王国イエロートパーズ/天使の炎と地獄炎

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二人と一匹の旅路

 レッドルビー王国を出発して数日……俺とカグヤは険悪だった。


「お前が先を進んでただろうが!!」

「最初の方向を示したのはアンタでしょ!? アタシのせいにしないでよ!!」

「ふざけんな!! お前が俺の後ろを歩くの嫌だって言うから先に行かせたんだぞ!? それなのに」

「うっさい!! つーか、そもそも回り道なんてする必要ないじゃん!! 最初みたいに森を抜けて行けば簡単に戻れたのに!!」

「だーかーらー!! ブルーサファイア王国行きの船は違う港から出るってレイチェルが言ってただろうが。少しは話を聞けよこのバカ!!」

「誰がバカよ誰が!!」

「お前だ!!」


 と、俺はカグヤを怒鳴り、カグヤもまた怒鳴る。

 シラヌイは心配そうに鳴くが言わないとダメだ。

 なぜなら……俺とカグヤは、砂漠のど真ん中で迷子になっていたからだ。


「あぁもう……ブルーサファイア王国行きの船、間に合うかな」

「ふん。間に合わなかったら別便で行けばいいでしょ」

「あのなー……お前、マジで話聞いとけよ。ブルーサファイア王国行きの船は三十日に一本しか出ないんだぞ? それをダルツォルネのおっさんが取り計らって、五日後の貿易船に乗せてもらえるようになったんだ。本来ならあと二十日はここで足止め喰らうはずだったんだからな」


 レッドルビー王国に来て三十日ほど。

 双子天使襲来の日にブルーサファイア王国行きの船が出発してしまった。なので三十日は足止めだったんだけど、ダルツォルネが貿易船に乗せてもらえるようにしてくれたんだ。

 レッドルビー王国から貿易船のある港まで三日ほど。でも、すでに三日が経過してしまった。

 どこにいるかもわからないのに、二日後の貿易船に乗れるのだろうか……。


「はぁ……どうすっかな」

「ふん。要は港に行けばいいんでしょ?」

「そうだけど」

「じゃあアタシに任せなさいよ。どこにいるかわからないなら、わかる場所から眺めればいいのよ」

「……?」


 すると、カグヤは右足を高く上げ左足で跳躍。そのまま右足を思いきり振り下ろし砂地に突き刺した。

 右足をそのまま伸ばし、砂中を掘り進み、右足は膝下くらいまで埋まってしまう。


「こんなもんかな」

「な、何してんだ?」

「ま、見てなさい」


 次の瞬間───カグヤの右足が思いきり伸びた。

 そのまま、ぐんぐんぐんぐんと伸び……カグヤは遥か上空へ。

 そうか、上から眺めて海の見える方向を見ようってのか。


『くぅん』

「やるな。つーか、できるなら最初からやれっての」

『わぅん』


 俺はシラヌイを撫で、豆粒よりも小さなカグヤを見上げる。

 

「どうだーっ!?」

『あっちに海が見えるーっ!! 町っぽいのもあるわーっ!!』


 と、小さな声が聞こえてきた。

 そして、カグヤの右足がスルスルと縮んでいく。


「ふぅ……あっちよ。あっちにまっすぐ行けば町に着く」

「…………信じるからな」


 俺、カグヤ、シラヌイは、カグヤの指差した方向に歩きだした。


 ◇◇◇◇◇◇


 夜。

 適当な岩場を見つけて野営する。

 油分の多い魔獣の爪に火を付けて焚火代わりにする。木がない砂漠では魔獣の爪を燃やして暖を取るのが当たり前らしい。

 砂サソリの住む岩場だったので夕食には困らなかった。サソリを捕まえて毒針を抜き、串に刺して焼くとパリパリコリコリでめっちゃ美味い。

 オアシスはないので水筒を大事に飲む。オアシスはけっこうあるみたいだけど、運が悪くこの辺りにはなかった……残念。

 折り畳みテントではカグヤとシラヌイが寝ている。見張りは交代制で三時間後がカグヤの番だ。

 俺は水を飲み、装備を外した。


「道具は手入れが大事って言ってたしな」


 両腕の仕込みブレード、カガリビの『回転式』、そしてグラブとレガース。

 手入れ用の道具を出し、さっそく手入れをする。


「まずはブレード……」


 これをくれた雑貨屋の婆ちゃん、元気かな。

 手首を上に反らすと飛び出すブレード。これにはお世話になってる。

 剣を受け止めたり、魔獣の心臓を突いたり、蔦やロープを切るのにも使ってる。

 分解し、汚れを拭きとり砂を取る。何度もやってるから慣れた。


「……へぇ~、器用じゃん」

「ん、なんだ? 寝ないのか?」

「カチャカチャうるさいから起きちゃった。見てていい?」

「いいけど……あと二時間で交代だからな」

「はいはい。修行時代、断食や不眠の行もあったから数日くらいなら寝なくても平気よ」


 流派は違うけどどこも似たような修行してるんだな。

 カグヤは分解したパーツを見て言う。


「前から気になってたけど、この武器……オリハルコン製ね」

「オリハルコン?」

「ええ。難しいことはよくわかんないけど、めっちゃ硬い希少な金属。前にオリハルコン製の剣を持った奴と戦ってね、すっごく硬くてアタシの蹴りでも折れなかったからよく覚えてる」

「強かったのか?」

「まさか。金にモノを言わせた成金よ。大したことなかったわ」

「ふーん……」


 会話しながら手を動かす。

 カグヤは気になるのか、顔を近づけてきた……邪魔だな。


「へぇ~……これ、ネジから小さな部品まで全部がオリハルコン製じゃん。よっぽどのことがない限り壊れないんじゃない?」

「だな。かなり助かってるよ」


 俺はブレードを研ぐ。切れ味はそれほどでもないが、先端が鋭いので突き刺すのに向いている。

 手入れを終え、再び組み上げ……終わり。

 回転式も分解し磨く。こっちはそんなに使ってないので簡単に終わった。

 最後は、愛用のグラブとレガース。先生が残した大事な武器だ。


「これもけっこういいやつよね」

「ああ。呪術を増幅する効果がある」


 呪闘具『ケイオス』。

 グラブとレガースのセットで、先生が刻んだ呪語が刻まれている。解読してみると『増幅』と『不壊』の効果があった。呪術を増幅し、武具は壊れることがない。

 しっかり磨き、手入れをする。


「うし、終わり」

「……なんかアタシも手入れしたくなった。ねぇ、道具貸してよ」

「いいぞ。そのレガースか?」

「うん。神風流皆伝の証で『神風零式・甲脚』っていうの。ちなみにこれもオリハルコン製」

「へぇ~、かっこいいな」

「でしょ!!」


 武具を褒められて喜ばない奴はいない。カグヤは一気に上機嫌だ。

 この日、俺とカグヤは寝ずに話をした。武具のこと、流派のことで盛り上がり、身体が疼いてきたので模擬戦なんかもした。

 

 気が付くと朝……砂サソリを捕まえ、起きたシラヌイと一緒に朝飯を食べた。


 ◇◇◇◇◇◇


 カグヤの言う方向に進むこと二日。ようやく町が見えた。

 俺とカグヤは焦る。


「やっべぇ!! 船どれだ船!!」

「えーと、あれ!! あ、ヤバい!! もう出てる!!」


 カグヤの言うとおり港町はあった。だが、進むのに思いのほか時間がかかったのだ。

 港町でメシを食うなんて話してたのが数時間前。到着するなり俺たちは走りだす……なぜなら、船はもう動き出していた。

 桟橋まで一気に走る俺たち。

 俺は息を切らし、桟橋前にいた船乗りっぽい奴に聞いた。


「あ、あれ、あの船!!」

「ああ、貿易船だよ」

「お、俺たち、あれに乗るんだ!! 乗っていい!?」

「お、おお……でも、行っちまったぞ」

「カグヤ、シラヌイ、行くぞ!!」

「命令すんな!!」

『わんわん!!』


 カグヤはシラヌイを掴み跳躍。俺は炎を噴射して飛ぶ。

 貿易船までの距離は百メートルほど。俺たちなら問題ない。


「神風流、『空走り』!!」


 カグヤは空中を蹴って移動……どうやってるのか気になる。

 そして、船の甲板に着地。めちゃくちゃ目立ったがなんとか乗り込むことができた。

 

「あっぶねぇ……余裕かましすぎたな」

「え、ええ……空から見るのと実際に歩くのじゃ全然違うわ」

「あーあ。港町でメシ……って、なんか目立ってるな」


 甲板には大勢いたので目立っている……しかも、客層がかなり若い。

 ジロジロ見られるのが嫌だったので移動。乗組員っぽい人にメシ食えるかどうか聞くと、船の地下に売店があるらしい。

 さっそく下へ向かうと、大勢の人でにぎわっていた。


「お腹減ったぁ……」

「俺も。なんか適当に食べて休もうぜ」

『わぅん』


 適当に買い物をし、近くのベンチで完食。

 船の一階が大広間になっていて、俺とカグヤは寝転んだ。周りにはけっこうな人が休んだり本を読んだりしている。のんびりできていいね。


「はぁ~……満腹」

「ねぇ、アタシ寝たい……」

「いいぞ。俺も寝たい……シラヌイ、いいか?」

『わんわんっ!!』


 シラヌイに監視を任せ、俺とカグヤは目を閉じた。


 ◇◇◇◇◇◇


 最初に言っておく。

 俺とカグヤは本当に油断していた。


「くぁぁ~……あぁん? もう朝か?」

『わぅん』

「ああ、ありがとなシラヌイ。よしよし」

『くぅぅん』


 どうやら、けっこう寝てしまったようだ。

 カグヤもゆっくり眼を開け、大きく伸びをしながら起きた。


「はぁ~……よく寝た。着いた?」

「まだ。外出てみるか」

「ん」


 看板に出ると、まだ海の上だった。

 そういえば、どのくらいでブルーサファイア王国に到着するか聞いてなかった。

 俺は近くにいた乗組員に聞いてみる。


「あの、すみません。あとどのくらいで到着します?」

「ん、そうだな……あと三日ってところだ。お前さん、船に乗り遅れそうになった奴だろ?」

「あはは。お騒がせして申し訳ないです」

「いいさ。それより気を付けな。ここはともかく、目立つと睨まれるからよ」

「?」


 首を傾げると、船乗りは言った。


「イエロートパーズ王国は実力至上主義だ。睨まれるとあっけなく潰されるぜ」


 …………イエロートパーズ王国?

 ちょっと意味がわからず首を傾げる。

 すると、カグヤが青ざめる。


「ね、ねぇ……なんか、嫌な予感するんだけど」

「は?」

「この船、どこに向かってるの?」

「どこって、ブルーサファイア王国だろ?」


 そう言うと、今度は船乗りが首を傾げた。


「ブルーサファイア王国? おいおい、この船はイエロートパーズ王国(・・・・・・・・・・)行き(・・)だぜ?」

「「…………え?」」


 えー、完全に油断していました。

 俺とカグヤは、乗る船を間違えてイエロートパーズ王国に向かっていた。

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お読みいただき有難うございます!
脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。
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[一言] ミスってんじゃねーかww
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