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九刃


ガイの一太刀を止めた鬼童丸はガイの一太刀から彼の実力を感じ取ったのか距離を取ろうと後ろに飛び、後ろに飛んで距離を取った鬼童丸はガイの顔を凝視すると不思議そうな顔をする。


「……奇妙だな。

今の一太刀からは強者の気を感じたが……よくよく見ると強者ではないようだな」


「何?」


「強さを感じたのはその刀から。

貴様からは何も感じぬ」


「そうかよ。

なら……」


やめとけ、とアストは鬼童丸の言葉を受けて本気で戦おうとするガイを止めると彼の前に立ち、鬼童丸からガイを守るように立つアストは鬼童丸に向けて言った。


「そんなに強さが恋しいのならオレが相手になってやる。

コイツに手を出すのは……オレを倒してからにしろ」


「元よりそのつもり!!

貴様を殺してからあの世に行った貴様のもとへ仲間を送ってくれよう!!」


鬼童丸は軍刀を構えるなりアストを斬ろうと走り出し、鬼童丸が迫る中でアストはガイに告げた。


「ガイ、今のオマエではヤツは殺すどころか倒すことも不可能だ」


「待てよアスト、オレは……」


「サイクロプスとオマエたちの戦いは独自ルートで得たデータで見させてもらったが、今のオマエの一撃には迷いが混ざっている」


「迷い……?」


「……その迷いが何かに気づかぬかぎりはオマエを戦わせる気は無い。

今のオマエの攻撃でそう判断させてもらった」


アストはガイに冷たく告げるとゆっくり歩いていき、アストの言葉にガイは動きを止めてしまう。


「オレに迷いが……?」


アストの言葉にガイが悩む中アストは鬼童丸に接近して戦闘を開始し、アストが鬼童丸と戦う中で悩むガイのもとへミスティーは駆けつけると彼に自分とともに加勢することを提案しようとする。


「ガイ、何してるのよ。

私たちも戦うわよ」


「……ダメだ」


「何言ってるのよ?

このままじゃ……」


「迷いがあるオレを戦わせる気は無いってアストが……」


「だから戦わないの?」


アストの言葉にガイが悩む中、ミスティーはガイに向けて問うように言うと続けて彼に向けて言った。


「迷いがあるなら何とかして戦うしかないじゃない。

「コード・プレデター」を倒さなきゃならないのにこんな所で止まる気なの?」


「オレは……」


「……私に力を貸してほしいって言いに来たアナタからは強い意志を感じたわ。

その意志は今はないの?」


「あるさ。

けど……オレは何に迷ってるか分からない。

アストはオレの中の何に気づいて言ってるのか……」


なら悩みなさいよ、とミスティーは冷たく言うとアストに加勢しようと歩いていき、彼女の言葉にガイは何も言えずに黙っていた。


そんなガイのもとへ天晴は歩みよると彼にある事を話した。


「……オレさ、初めてガイに会った時にスゴいヤツだと思ったんだ。

オレよりも年下なのにスゴい剣術使うし、戦う姿はカッコいいし……なんか気づいたらガイはオレの憧れになってたんだよ」


「天晴……」


「音弥がガイのためにその刀を用意したくなるのも分かるよ。

オレが刀作れるならガイのために作ってみたいって思うしな」


「だけどオレは……」


「迷ってもいいんじゃない?」


何かを言おうとしたガイに向けて天晴は彼の今の悩みを解決させようとするかのように彼に向けて伝えた。


「ガイは剣士なんだろ?

剣士は剣や刀で斬るんなら……その悩みごとまとめて敵を斬っちゃえよ」


「悩みごとまとめて……」


「天才剣士のガイなら簡単だろ?

悩むくらいなら斬っちまえよ。

そうでなきゃガイらしくないよ」


「オレらしくない、か……」


天晴の彼らしい言葉にガイは元気づけられたのか笑みをこぼし、ガイは刀を強く握ると天晴に詫びた。


「ごめん、天晴。

オレらしくもないよな」


「アストに何言われても強気で行きなよ。

ガイはそのくらいがちょうどいいしその方がカッコイイよ」


「ありがとな」


「いいって。

それより……オレも手伝おうか?」


「いや、天晴は音弥を頼む。

アイツは……オレが倒す!!」


天晴に音弥を任せるようにガイは言うと走り出し、そして鬼童丸と戦うアストとミスティーに合流するように走っていくとガイは刀を構え直して鬼童丸に向けて斬撃を放つ。


放たれた斬撃は鬼童丸の方へと飛んでいくも鬼童丸は軍刀で簡単に防ぎ、アストは斬撃を放ったガイに迷いは断ち切れたのか訊ねた。


「迷いは消えたか?」


「いいや、多分消えてないさ。

けど……その悩みは今関係ない。

関係あるのならあの男と一緒に斬るだけだ」


「……そうか。

それはそれでいい」


アストの問いにガイが答えるとその言葉にアストはすんなり納得し、アストが納得するとガイはミスティーに謝罪した。


「悪いミスティー。

情けないところを見せた」


「いいわよ別に。

その代わりに……ちゃんと戦いで証明して」


「……任せろ」


ガイは刀を強く握りながら前に出、そして鬼童丸を倒すべく構える。


構えるガイの姿に鬼童丸はため息をつくと彼に対して興味がなさそうな言い方をした。


「貴様に用はない。

私が用があるのは……」


「うるせぇよ」


「……何?」


「猿山の大将の年寄りがオレの雇い主を直接狙うってか?

そんな都合のいい話があると思うのか?」


「……貴様、私を愚弄する気か?」


どうかな、とガイは刀を構えながら言うと鬼童丸を冷たい眼差しで睨むと同時に走り出して接近して敵の首を落とすべく一閃を放つ。


ガイの放った一閃を鬼童丸は軍刀で防ぐが、ガイは鬼童丸を倒すべく連続で斬撃を放ち、ガイが連続で放つ斬撃を前にして鬼童丸は防ぐことしか出来ないのかなかなか攻撃に移ろうとしない。


「くっ……此奴……!!」


「はぁっ!!」


連続で斬撃を放ったガイは刀を瞬時に構え直すと強い一撃を放ち、ガイの一撃を軍刀で止めた鬼童丸は後ろに押し飛ばされてしまう。


「くぁっ!!」

(何だこの小僧は!?

私が最初に止めた攻撃からこの短時間でここまでの変化を……!?)


「小僧……貴様、何をした?」


何も、と鬼童丸の問いに対してガイは簡潔に言うと刀を強く握りながら構え直し、そして深呼吸すると音弥に向けて叫んだ。


「音弥!!

この刀、好きに使わせてもらうぞ!!」


「……ああ!!

その刀はもうアンタのものだ!!

アンタの思うがままに使ってくれ!!」


ガイの言葉に対してどこか嬉しそうに答える音弥。

その音弥の言葉にガイは頷くと頭の中に父の言葉を思い出していた。


『血で汚れた刃では誰も救えない。

血は争いを招き、招かれた人は命を狩られ、命を狩られた人の周囲の人が巻き込まれ、怨嗟の渦が生まれてしまう。

そんな非情な剣術なんかより誰かのために役立てる綺麗な剣術を持って欲しいんだ』


「……悪いな父さん」


『強くても父さんは誰かを助けられるような立派な大人じゃない。

けどガイはこれからたくさんの世界を見ていくんだ。

だったら父さんはガイには誰かを救えるような誰かのための正義のヒーローのような存在になってほしいんだ』


「オレはこの瞬間だけ……修羅になる!!」


ガイが強い決意とともに言葉を発すると彼の全身から青い炎のようなものが溢れ出し、溢れ出した青い炎のようなものは彼の握る刀に纏われていく。


ガイの全身から溢れ出す青い炎のようなもの、それを見た天晴やミスティーは驚き、アストはため息をつくとそれを見ながら呟いた。


「ようやく見れるな……ガイの能力「修羅」が」


ガイの青い炎のようなものを能力と呼ぶアスト、そのアストとは違い鬼童丸はガイに対して強い警戒心を抱いていた。


「な、何だそれは!?」


「……これはオレの力。

守ることをやめ、ただひたすらに狩り取るための力……オマエでも防げぬ破壊の力だ」


「……戯れ言を!!」


鬼童丸はガイの言葉に対して強く言い返すように言葉を発すると風となって消え、そして誰も気づく間も与えずに鬼童丸はガイの背後に現れると軍刀で彼を貫こうとする。


「死ね、小僧!!」


軍刀による突きがガイに向けて放たれ、軍刀の切っ先がガイの心臓を貫こうと背中に迫る……が、軍刀がガイの身に纏われる青い炎のようなものに触れると突然無数の斬撃を受けたかのように刀身が砕け散ってしまう。


「……!?」


「無駄だ……。

オマエではこの力は超えられない」


ガイは背後の鬼童丸に向けて冷たく告げると刀の柄で鬼童丸の腹を殴り、柄で殴られただけの鬼童丸は何故か全身に斬撃を受けてしまう。


「!?」


「……大気と同化するのなら、それよりも先に殺せばいいだけ」


「貴様、何をしたァァァあ!!」


「……安心しろ。

修羅として……命を終わらせてやるだけだ」


叫ぶ鬼童丸に対してガイは殺気に満ちた眼差しで敵を睨むと振り向くと共に一閃を放ち、放たれた一閃が斬撃となると鬼童丸の体を深く抉り、そして青い炎のようなものが鬼童丸の全身を切り裂いていく。


「がぁぁぁあ!!」


ガイの攻撃を受けた鬼童丸の全身は激しく負傷し、そして負傷した体は立つことすら出来なくなったのか倒れてしまう。


「……」


倒れた鬼童丸は意識が無くなったのか何も言わなくなり、ガイは身に纏う青い炎のようなものを消すと刀に付いた血を払うように刀を振った後、静かに鞘を戻していく。


「……」


「殺したのか?」


倒れた鬼童丸を見るガイのもとにアストが鬼童丸の生死を確認すべく歩み寄り、ガイはアストに鬼童丸の現状を伝えた。


「……辛うじて息をするレベルで止めた。

傷が癒えても二度と剣術は披露できないかもな」


「甘い野郎だ」


「……助けを寄越さなきゃこのまま死ぬだけだ。

この手で殺されるより虫の息で苦しみの中静かに死に行く時を待つ屈辱を味わうだけ」


「……そうか。

それはそれで残酷だな」


「……結局否定できなかった」


「?」


ガイの一言の意味がわからないアストは不思議そうに彼を見つめ、ガイはアストに言った。


「……ヤツは音弥の刀を殺人の太刀のためと言っていた。

それを否定したかったのにオレは音弥の作った刀で殺した。

否定するつもりが肯定してしまったな……」


そんなことないさ、と音弥はガイに言うと彼が気にしていることに対して自身の思いを伝えた。


「アンタのおかげでオレの代で殺人の太刀のための刀と縁を切れた。

アンタの行動のおかげでオレのこれからの刀は誰かのための刀になれるってことだろ?」


「……ありがとう。

そう言ってくれて助かるよ」


「だから自信を持ってくれ。

アンタのおかげでオレたち刀鍛冶は救われたってな」


ありがとう、とガイは再び音弥に礼を言い、二人の話が終わった頃を見計らってアストはガイたちに告げた。


「音弥と合流した。

ここでの目的は達した……次の目的に移るぞ!!」

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