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七刃


どこかの廃墟……


薄暗く明かりと呼べるような証明もなく、電気が通っていないのか数ヶ所に蝋燭に火が灯されていた。


薄気味悪い廃墟の中に一人の男がいた。


いや、男なのかすら分からない。

そこに誰かいるのは分かっている。

だがあまりにも気味の悪い奇妙な存在と気配を感じさせるこの人物が男なのか断定したくても出来ず、あまりの奇妙さから人なのかすら疑ってしまう。


その奇妙な存在のそれの元に一人の男が歩いてくる。


「……サイクロプスが倒された。

ミスティーには逃げられた」


「逃げられた……?

ミスティーにはサイクロプスを倒すような力は無いはずだ?」


「……近くの監視カメラをハッキングした。

その結果、あの女に協力者が存在することがわかった」


男は数枚の資料を渡し、資料を受け取った奇妙な存在は一枚ずつ資料に目を通していく。


「……傭兵である「忍撃」の月影天晴、非情な闇の貴公子「酷獣」のアスト。

まさか腕利きの能力者が二人も加勢するとはな」


「いや、「酷獣」はサイクロプスが倒れた後に現れた。

ミスティーに加勢したのは月影天晴と……もう一人の男で、そいつがサイクロプスを倒した」


「もう一人の男……」


奇妙な存在は次の資料に目を通そうとした。

そこには……


「……「閃剣」雨月ガイ」


「八歳にして大人三百人を無傷で全員倒し、若くして天才剣士の名を与えられた能力者だ。

残念ながら能力は使用せず、刀だけでサイクロプスを倒した」


「刀だけ……。

自分の力を最大限に発揮して倒したということか」


素晴らしい、と奇妙な存在は全ての資料に目を通すと男に資料を返し、資料を受け取った男は奇妙な存在に対して相談をした。


「次の作戦はどうする?

「酷獣」の関与がある以上、こちらとしては足取りを掴ませる訳にはいかないよな?」


「……掴まれてもいいさ」


「何?」


「私の足取りを掴んでも私は捕まえられない。

闇の貴公子がどれだけ知恵を搾って人員を集めても私を捕まえることは不可能」


「……さすがの自信だな。

なら見つけさせるのか?」


「いや、私が言ったのは彼らには私を捕まえることは不可能ということ。

だからといってこのまま野放しにして答えである私に辿り着くのは見てて面白みがないだろ?」


奇妙な存在の言葉に男はため息をつくと頭を抱え、頭を抱えながら奇妙な存在の言葉の意図を確かめるように質問した。


「……新しい駒を用意しろってことか?」


「如何にも。

私到達するにはまだ彼らは早い。

少しずつ時間をかけ、時間をかけて辿り着いた私のもとに来た瞬間に私が彼らを殺害して全員の異名を狩り取る」


「……さすがは「異名狩り」として恐れを抱かれてるアンタだな」


当然だ、と奇妙な存在……「コード・プレデター」は男に向けて言うと続けて話した。


「私の存在は誰にも脅かせない。

私の存在は人の恐怖があるかぎり存在し、人々が消えぬ限り私は永劫に恐怖を与え続ける」


「……アンタが本気を出せば世界は終わる。

それでもそうしないのは……自分の楽しみのためか?」


如何にも、と「コード・プレデター」は答えると男に向けて言った。


「私は私を絶望させるような敵に会いたい。

誰もが私を見て恐怖し、私を楽しませることは不可能となる。

それでは意味が無い……私の生涯において私が楽しめないなど言語道断。

名を与えられたものが私を楽しませること、それこそが私が世界に求めるものだ」


「狂ってるな、アンタ。

自分のいのちが危険に晒されても平気なのか?」


「この命を対価に私が楽しめるなら私は喜んで差し出すさ。

私という存在を前にして人々がどう楽しませてくれるか……それだけが私の渇きを潤す材料なのだよ」


「……そうか。

駒を用意次第、次の行動に移る」


男は「コード・プレデター」に言うと背を向けて去ろうとした。


……が、「コード・プレデター」はそんな男を呼び止めるように声をかけると彼に向けてある事を伝えた。


「待て、一つだけ条件がある」


「条件?

駒を選ぶためのか?」


「いいや、駒を選ぶのはオマエが好きに選べばいい」


「なら何の……」


「一人だけ……「閃剣」だけは始末しても構わない」


「今のさっきに自分を楽しませることがどうとか話してたのに、その一人を殺すのか?」


「いい事を思いついた。

「閃剣」がこうしてここに現れたということは彼の始末に成功すれば芋づる式に新たな獲物が現れる」


「……なるほど。

そういうことなら了解した」


任せとけ、と男は「コード・プレデター」に言うと音もなく消え、「コード・プレデター」は椅子に腰掛けると独り言を呟く。


「思わぬ獲物がかかった……。

私はいずれ合間見えるとは思っていたが、こんなにもチャンスが早く巡るとはな。

「覇王」……またの名を姫神ヒロム。

「閃剣」を殺せば必ず仇討ちに現れる……その時は、あの男に存分に楽しませてもらおう。

全ては……私の快楽のために!!」







***



とある飲食店。

いわゆるファミレスだ。


夕飯時のためか家族層も多く、学校や部活帰りの学生たちが食事をしている。


そんな中、店内の奥の方にはガイがアスト、ミスティー、天晴とともに席に座り、コーヒーを飲んでいた。


ミスティーは紅茶を嗜み、天晴はドリンクバーで何杯ものメロンソーダを運んできて飲んでおり、三人が何かを飲む中でアストは一人ノートパソコンで何かを調べていた。


「……」


「アスト、何か飲まないのか?」


「結構だ」


何も飲まないアストを気にかけて声をかけるガイ。

だがアストはガイの言葉に対して冷たく返すとパソコンの操作に集中しようとした。


が、そんなアストに対してミスティーはガイを手助けするかのように彼に言った。


「一仕事終えたのだから何か飲みなさいよ。

水分を摂ることは悪いことじゃないわよ?」


「……不要だ」


「どうして?」


「……一日の水分摂取量とタイミングはしっかり管理している。

裏社会に生きるものとして生活のリズムは確立し、全てにおいて万全にしなければならない」


「そこまでする必要あるの?」


「……オマエが飲みたいなら飲めばいい。

オレは必要ないから飲まないだけだ。

それを覚えとけ」


「……あっそ。

なら好きにしなさいよ」


「さっきからそうしてる」


「……腹立つわね」


アストの態度に不満を持ってしまったミスティーは不機嫌そうな顔でアストを睨み、アストはそんな事は一切気にすることなくガイに対してある話をした。


「ガイ、刀は早くて一時間後にオレのもとに届くようになっている」


「早いな。

そんなに早いものなのか?」


「今回は急かした。

オマエがサイクロプスを倒した報酬の金を受け取らないと言ったから代わりに相応のサービスで受け取らせるためだ」


「なるほど……」


「刀のグレードは前回と同じだが強度は今までで一番高いものを選ばせた。

万が一にも折れるようなことがあれば……その時は発注先の刀鍛冶を埋め殺すことになるけどな」


「冗談で言ってるんだよな?」


「本気で言ってるんだけどな。

今回の仕事はリスクが大きい分、確実な仕入れをしたいからな」


「……」


少しいいかしら、とミスティーはガイとアストの会話に割って入るとアストに対して質問をした。


「アナタさっき「コード・プレデター」の名前を出したけど、本気でアレを殺す気でいるの?」


「……ガイからその話を聞いて承諾したからここにいるんじゃないのか?」


「ええ、そうね。

でもそれは半分の理由、もう半分の理由はサイクロプスに狙われて逃げるだけってのが嫌だからよ」


「なら話すことは無い。

情報を得たら動く、それだけだ」


「賞金を稼ぐならそれが正当な方法よ。

でも私が言いたいのはそこじゃない」


「何だ?」


「……「コード・プレデター」を相手にするのはこの四人なの?」


ミスティーの質問、それは彼女の疑問であると同時に不満でもあった。


「コード・プレデター」を倒す、そのためにガイはアストの力を借りている。

当然、ミスティーの力を借りるのも「コード・プレデター」を倒すためだ。


だがそのミスティーはサイクロプスを倒す前に「コード・プレデター」を倒すために協力を申し込まれた。

つまりミスティーからすれば「コード・プレデター」を倒すにあたって不確定な要素が多すぎるのだ。


「サイクロプスは運良く彼の力が通じて倒せた。

そのおかげで私たちは傷も浅くて済んだ。

けど……アナタが倒そうとしてる「コード・プレデター」はこれまで異名を与えられた能力者を争った痕跡も残さず殺害してる殺人鬼なのよ?」


「そうだな」


「そうだなって……。

そんな相手にアナタはこの人数で……」


「違うんだミスティー」


ミスティーがアストに説明を求める中、ガイはアストを守るようにミスティーに全てを説明した。


「今回「コード・プレデター」を倒すように言ったのはオレだ」


「え?

アナタなの?」


「ああ、アンタにも言ったけどオレは強さを得るためにヤツを倒す。

オレの分の報酬はアンタに渡すって話は変わらない。

ただアストは責めないで欲しい。

アストはオレに巻き込まれて「コード・プレデター」を倒すための助っ人を集めてくれているだけなんだ」


「……つまり、他にも能力者がいるってことなの?」


「それは……アストがどこまで話を進めてるかによる」


ミスティーの質問に対してガイはハッキリと答えることが出来ず、ハッキリと答えるべくアストに詳細を確認しようと彼に話を振った。


話を振られたアストはパソコンの操作を終えるとノートパソコンをガイたちの方に向けてある話をした。


「……ミスティー、オマエの心配する仲間なら心配ない。

ちょうど今選定が終わった」


「他に何人いるの?」


「あと二人だ」


「少なすぎるわ」


「残念だがこれ以上増やせば標的の「コード・プレデター」に悟られる。

こちらの狙いがバレないようにするためにはオレを含めて六人、そこから二手に分かれて行動する形式を取らなければリスクを下げることは不可能だ」


「じゃあその二人と合流したらガイが倒したがってる「コード・プレデター」と戦うんだな?」


「その通りだ天晴。

そしてその一人はすぐ合流する」


「すぐ?

そんな近くに待機してると言うの?」


「……そういうことか」


そうだ、もアストは何かに気づいたガイに言うとミスティーと天晴にも分かるように説明した。


「これから合流するのはガイの刀を届けてくれる刀鍛冶の男だ。

その男が五人目の仲間だ」

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