四十四刃
ここで全ての決着をつける、その覚悟のもとでホムンクルス・デッドを迎撃すべく動き出したガイ、ソラ、アスト、砂弥。
人の姿をしながら人で無きホムンクルス・デッドに対しての躊躇いなど一切なくガイたちは迫り来るホムンクルス・デッドを次々に倒しながらアドミニストレータがいるとされる教会に凸にゆうしようとしているが、現れるホムンクルス・デッドの数に際限などないのか倒しても倒してもキリがなく現れ続ける。
「クソが!!
コイツら何体潜んでやがる!!」
「だがこれだけいるということはアドミニストレータがここに居ることの何よりの証拠だ。それにホムンクルス・デッドを無限に生み出す程の力をヤツは持っていないはずだ」
「砂弥の言う通りだ相馬ソラ。
一瞬でもいいから突破口を切り開いてヤツのいるところまで向かうぞ」
「アスト、テメェ……この状況で分かりきったこと言うなよ!!」
自分でも目で見て分かる現状をわざわざ言葉にされたことにイラつくソラは炎を放ってホムンクルス・デッドを焼き払おうとするが、どれだけ炎で葬り去ろうとホムンクルス・デッドはまた教会の方から新しく現れる。
キリがない、ソラと同じように砂弥はそう思っており、ショットガンを構えてホムンクルス・デッドを撃ち倒していく中でアストにこの状況を何とかするべく進言する。
「突破口を開くためにオレの中の毒を使うしかない!!」
「ダメだ!!オマエのその力はアドミニストレータへの切り札だ!!
こんなところで無闇矢鱈に使える代物じゃない!!」
「ならどうすんだよ!!黒徹砂弥の毒を使うなりしなきゃこのまま消耗して終わりだぞ!!」
「そんなこと……」
「アスト、オレに考えがある!!
砂弥の毒を温存してオレたちが教会に突入出来ればいいなら最適な方法がある!!」
「ガイ?
何をするつもりだ?」
任せとけ、と何をするのか分からないアストを説得するようにガイは言うとソラに向けて大きな声で言った。
「ソラ!!オマエの本気ならこれくらいどうにか出来るだろ!!
イクトならこんなの数分で突破しちまうぞ!!」
「……あ?
オマエ、今オレがアイツに劣るって言ったのかぁぁぁあ!!」
ガイの言葉を受けたソラは怒りの感情を爆発させると同時に全身から炎を強く放出しながら巨大な炎の玉を出現させると大量のホムンクルス・デッドの方へと飛ばし、飛ばされた炎の玉はホムンクルス・デッドを次々に焼き払いながら教会への道をつくっていく。
炎の玉はある程度飛ぶと消滅するが、倒しても倒してもキリがないほどの数がいたホムンクルス・デッドは半分以下にまで減り教会へと続く道が姿を見せる。
「ナイスソラ!!」
「すげぇ……」
「これが相馬ソラの本気か」
「見たかゴラァガイ!!
次あのクソバカと比較したらオマエを殺すから覚えとけ!!」
「……だが手がつけられなくなる欠点があるようだな。
相馬ソラ、ひとまず落ち着け。道が出来たのなら急ぐぞ」
「分かってる!!」
「よし……いくぞ!!」
ソラがつくった教会へと続く道をガイを先頭にソラ、砂弥、アストの順で駆け抜けようとする。ソラの活躍により切り開かれた道、時間が経つとともにホムンクルス・デッドは現れるもガイたちはホムンクルス・デッドを走りながら対処して教会の扉へと達する。
「いくぞ!!」
ガイは扉を蹴り開けて中に入り、ソラと砂弥も続くように入る。が、アストは何故か扉の前で足を止めてしまう。
「アスト!?
はやく来い!!」
「ガイ!!この先はオマエに託す!!ここでこの雑魚を足止めしなければ確実な勝利はない!!オレが足止めを引き受けるから進め!!」
「……分かった!!」
ホムンクルス・デッドの大群の相手を引き受けると言うアストの意思を汲み取るようにガイは彼に敵を任せるとソラと砂弥とともに教会の中を進んでいく。
教会の中、そこは別に何の変哲もない普通といえば解決する程度の質素な教会だ。ガイたちは一度足を止め、砂弥はホムンクルス・デッドにされかけた際に変化した左手を頼りにアドミニストレータの気配を探ろうとする。
「……ここにいる。どこかに身を隠している場所があるはずだ」
「なら手当り次第探すしか……」
「んなもん探してる暇はねぇだろ。ここにいるってんならヤツごとここをぶっ潰すしか……」
「いいや、そんなことをする必要はない」
とにかく手段を選ばず進もうとするソラの言葉を遮るように誰かが声を発する。フードを深く被った怪しい男が3人の前に現れ、現れた男を前にして砂弥は武器を構えるとガイとソラに伝えた。
「コイツだ……コイツがアドミニストレータだ」
「……探す手間が省けたな」
「壊す手間もな。つうかホムンクルスが潜んでるならどの道ぶっ潰すから関係ねぇけどな」
「……蛮族はやはり物騒な物言いをする。
私の邪魔をするだけでは物足りぬか?」
「アドミニストレータ……いや、渦波拓海。
オマエの企みもここまでだ」
「大人しく倒されろ。つうか抵抗してもしなくても潰す」
「ついでだ。砂弥の身体も元に戻して……」
「その事だが、私はお礼を言わなければならないな」
目的の人物を前にしてガイとソラは敵を倒すべく宣戦布告するとともに砂弥の身体を戻させようという思いを口にしようとひたが、その言葉を遮るように男は何故か礼を言わなければならないなどと言い始めた。
何を言ってるのか分からない。敵としてガイとソラは倒すことを宣言しているのにその相手に感謝するような言い方。何故だ?
ガイとソラが不思議に思っていると突然砂弥が膝をつき、そして苦しそうに胸を押さえる。
「がっ……あっ……」
「砂弥!?」
「オマエ、コイツに何をした!!」
「何をした?間違えないでもらおうか。その男は私のものだよ」
「あ?」
「どういう意味だ……!!」
「言葉通りの意味だ。その男は私のものなんだよ。黒徹砂弥……いいや、ホムンクルス・デッド完成系よ」
「な……んだと……」
「砂弥がホムンクルス・デッドの……完成系?」
「ふざけたこと言ってんなら今すぐ殺して……」
「不思議に思わなかったのかい?アドミニストレータという未知の敵を前にして反旗を翻すように現れた被害者。その身には仇敵を討つための力を備えている……ここまで聞いて何も思わなかったのか?」
「砂弥はオマエの被害者だ。それに何の間違いがある」
「……ホムンクルス・デッドには欠点がある。生み出す過程で肉体と魂との間に亀裂が生まれ、その亀裂が時間の経過とともに消滅へと導く。それを止めるために生命維持装置を組み込む必要があったが、彼はその装置を介さず生存を可能とした成功例だ」
「残念だがオレはホムンクルス・デッドにはなっていない……!!
雷吾の手で欠片を埋め込まれたがオレは……」
「キミはいつから人間だと錯覚している?」
「……は?」
「まさか……」
「……そう、そのまさかだ。黒徹砂弥……キミは既に死んでいる。そしてキミの肉体に魂を呼び戻してホムンクルス・デッドとして私が蘇らせたのだよ。キミが勘違いしているライトニングとの一件……あれはフェイクの記憶だ。キミのその手に残る欠片はキミにのみ発現した特異性を試すために残した私への発信機だ」
「だがホムンクルス・デッドはオレの毒で……」
「あぁ、アレは毒ではないよ。アレは予めキミの攻撃に反応してホムンクルス・デッドが反応するように私の仕掛けたトリックだ」
「……!!」
「じゃあ、最初から……」
そういう事だ、と男は両手を前に出すと足下に魔法陣を出現させ、さらに砂弥の足下にも魔法陣を出現させると彼に向けて言った。
「渡してもらうぞ……私の新しい体を!!」




