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三十五刃


 チーム再結成、アストの口にしたこの言葉を受けたガイは驚きを隠せなかった。

 

「チーム再結成って……まさかアストがオレたちに手を貸してくれるのか?」

 

「言葉通りの意味で言うならそういう事だ。もっともチーム再結成って言うにはメンツが揃って無さすぎるのが問題ではあるな。天晴、ミスティー、キッド、音弥……前回のトーカーとの戦いで手を貸してくれた彼らは今回呼べそうにないからな」

 

「天晴たちに何か依頼をしてるのか?」

 

「いや、天晴たちは各々でやるべき事をやっている。天晴は元々の雇い主たる関西最高の情報屋の元に戻って用心棒、ミスティーは山分けした報酬金で羽を休めにリゾート地、キッドは米国に向かって名高い悪党の始末に、音弥はオマエの霊刀の力を見たせいか刀鍛冶としての腕を磨いてる」

 

「それぞれがやるべき事をやっている、か」

 

「その中でオレはトーカーの置き土産とも言える連続失踪事件と関与が疑われる黒徹砂弥の調査を行おうとしたわけだが……タイミングよく黒川イクトから連絡を受けてヤツとオマエらの仕えている「覇王」こと姫神ヒロムが連続失踪事件を調べようとしていることとホムンクルスについての貴重な情報をこちらに与えてくれたんだ。何かしら人を動かすと読んだオレは2人のどちらかに接触するかガイと会うかするために動き、結果として2人と出会ったのがここまでの流れだ」

 

「で、アンタとして単独で動くよりは事情をある程度知ってるオレらと組んでカタをつけたいってか?」

 

「そういうことになるな、相馬ソラ。

これに関してはガイとキミの判断次第となるわけだがどうかな?」

 

「……まぁ、断る理由はねぇな。

実際問題アンタがいなきゃヒロムが何で連続失踪事件を調べようとしてるかも分からないままだったからな。それにアンタがいた方が何かと都合よくものが調べられるのはたしかだろ」

 

「それはそうかもな。これでもオレは裏社会では名の知れた人間だからな。キミたちが安易に踏み込めない場にもオレは簡単に踏み込めるからその点では重宝してもらいたいものだな」

 

「……なら決まりだな、ガイ。

この男がいれば多少なりとも情報の収集スピードは上がる。それどころかオマエが一度は手を組んだ能力者なら連携も取りやすいはずだ」

 

「たしかにアストが仲間になってくれるのは心強い。

けど……さすがにタダで動いてくれるわけじゃないだろ?」

 

「そこは安心しろ、ガイ。

金なら既に受け取っている」

 

 金は受け取っている、渡した覚えのないガイはヒロムかイクトのどちらかから受け取った線を疑ったが先程の話からしてアストはイクトからヒロムが話したとされる内容を伝えられた程度と認識するのが正しいはずだ。アストと面識のないソラが渡すはずもないし、仮にソラが渡していたのならアストの協力があることを事前に教えてくれているはず。

 

 彼の言う金銭が何を指すか分からないガイが不思議に思っているとアストは彼に分かるように出処の分からない金の正体を明かしていく。

 

「今回の契約金および成功報酬は前払いとして先に受け取っている。ガイ、オマエが強さだけを求めて賞金首たちを倒しては受け取りを拒否していた報酬金がかなり貯まってる。それにトーカーを倒して山分けするはずだった金もオマエは受け取らず天晴たちと山分けしたからオマエの分の手取りが行方もなく彷徨ってる形だ。だから勝手で悪いがそのオマエの手取り分として貯まってる報酬金で勝手にオレはオマエに雇われる形にした。文句あるか?」

 

「いや……むしろそれでいいのか聞きたいくらいだ」

 

「問題ない。元々オマエが解決した賞金首が掛けられていた懸賞金については手出しするつもりはなかったが連続失踪事件の調査をオマエたちもするのなら共に行動する口実として利用させてもらう。オマエはオレに好きに使わせたくて譲ってたみたいだが、オレとして他人の稼ぎに理由なく手をつけるのは心苦しく思うからな。だからその辺は気にするな」

 

 妙なこだわりを見せるアストに少し戸惑いを隠せないガイ。そんなアストのこだわりを前にしても平常心でいるソラは彼にここからどうするかについて尋ねた。

 

「それで、アンタと行動するとしてどこから調べるつもりだ?」

 

「足取りを調べるならやはりヤツが撮影された監視カメラが設置された場所がセオリーなわけだがあえてカメラに姿を捉えさせるような愚かな真似を自らしてるとなれば罠の可能性を考える必要がある。だから手始めに黒徹砂弥の身辺を調べた上でヤツが行きそうな場所に目星をつけて調べることにする」

 

「ならまずはそれを調べ……」

 

 必要ない、とアストが調べようと言おうとしたガイの言葉にかぶせるように言うと携帯端末を取り出し、取り出された携帯端末はタイミングよく着信音を鳴らす。着信音を鳴らした携帯端末をアストは操作し、スクリーン上に何かを表示させるとガイとソラに見せるように提示した。

 

「ヤツについて何かしら情報を持ってる賞金稼ぎと情報屋をリストアップするようある人物に依頼しておいた。そのリストが送られてきたから確認して目的地を決めるぞ」

 

「相変わらず仕事が早いな」

 

「仕事の速さは信用問題に関わることだ。この位は当然だ」

 

「アンタが集めさせたそのリスト通りなら……近場を先ず調べるならこの近くの情報屋と賞金稼ぎの集まる集会所か。砂弥ってのもそこに何度か出入りしてるみたいだし有力な情報求めてここに向かうのもありだよな?」

 

「さすがは相馬ソラ、このリストから最適な目的地を見つけるとはな。集会所ならば他の情報をついでに集めることができるから最初の目的地には適しているからその考えは間違っていない。他の場所に行って戻るくらいならここを経由して次に向かう方が効率は良さそうだからその意見で進めるべきだな」

 

 ソラの考えにアストも賛成して黒徹砂弥を調べるための最初の目的地は今三人のいる場所からもっとも近い距離にある集会所へと決定した。そんな中、ガイはアストに向けてある質問をした。

 

「アスト、変なことを聞くようだがどうしてなんだ?」

 

「何がだ?」

 

「その、疑問を抱いてるってのはさっき聞いたけどそれを解決するためだけにオレたちと手を組んでくれるなんて……」 


「おかしなことではないはずだ。実際問題二手に分かれるよりは共に行動した方が何かと都合がいいだろうからな。それに……オレとしては早々にこの連続失踪事件と関与してると思われる黒徹砂弥のことに終止符を打ちたいと思っている」

 

「そこまで急ぐのには何か理由があるのか?」

 

「ガイ、オマエのおかげでトーカーが消滅して賞金稼ぎが連続して狙われることは無くなって一時は賞金稼ぎ界隈や裏者では「コード・プレデター」に対する不安が消えつつあった。だがここ最近起き始めた連続失踪事件が消えつつあった不安を蘇らせようとしている。そのせいなのか裏社会では不穏な空気が流れていてオレとしては仕事がやりづらくて仕方がない」

 

「自分のためにも解決したいってことだな?」

 

「そういう事だ。オマエには迷惑をかけるがその力を借りるぞ」

 

「あぁ、再結成ってのは少しピンと来ない感じはするけどアストとまた戦えるなら嬉しいよ。さっさと終わらせて解散ってのは少し変な話だけど黒幕を倒してこの件を終わらせよう!!」

 

 再び手を組む、アストと組むことにガイは嬉しさを感じており、彼とアストは互いに協力し合うことを再認するように握手を交わす。

 

 目的となる人物、黒徹砂弥を目指して動き出すガイたち。だが彼らは知らない。その先に待ち構える困難を……

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