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二十八刃


「いくぞ……ここでオマエを終わらせてやる!!」

 

 トーカーを包囲したガイたちは構えると元凶となる敵を倒そうと走り出し、ガイと天晴は霊刀と忍者刀をそれぞれ構えながら先陣を切るようにトーカーに接近して斬撃を放とうとするが、トーカーは両掌に魔法陣のようなものを浮かび上がらせると大地の一部を歪ませながら剣を生み出すとガイと天晴の斬撃を放つのを阻止するように二人の武器を剣で止める。

 

 斬撃を放つのを阻止されたガイと天晴だが、ガイも天晴も攻撃を阻止されると次の一手に移るべく魔力を纏いながら数歩下がって武器を構えるとトーカーの体を貫こうと二人は同時に突きを放つ……が、トーカーは体に魔法陣のようなものを浮かび上がらせると全身を液状化させて二人の突きを避け、液状化させた体を二人から離れるように地を流れさせていく。

 

 ある程度離れた位置まで流れるとトーカーは体を元に戻し、二人の方へと手を向けると魔法陣のようなものを浮かび上がらせながら無数の鋼鉄の刃を撃ち放つ。

トーカーが放った鋼鉄の刃を前にしてガイは自身の能力である触れたものを切り裂く「修羅」の蒼い炎を霊刀「折神」の刀身に纏わせると一閃を放ち、放たれた一閃は青い閃光の斬撃となって飛ぶとトーカーが撃ち放った鋼鉄の刃を全て破壊してみせる。

 

「ほぅ……」

 

「はぁっ!!」

 

 自身の放った鋼鉄の刃を破壊したガイの一撃にトーカーが目を奪われていると拳に魔力を纏わせたキッドがトーカーの背後に現れて拳撃を叩き込もうとする。

が、拳撃が叩き込まれる瞬間にトーカーは自身の体に魔法陣のようなものを再び浮かび上がらせると全身を鋼鉄のように硬化させ、キッドが叩き込んだ拳撃は鋼鉄のように硬化したトーカーの体にダメージを与えることなく終わってしまう。

 

「なっ……」

 

「人の体内は水分が多い。ホムンクルスや賢者の石に選ばれた私も例外ではない。

だが体内の水分全てを鉄化させ、さらに体表をダイヤモンドのように硬くすれば……キミのお得意の攻撃は通用しない。

それについては先程錬成した鋼鉄人形が立証済みだろ?」

 

「ふーん……。

その程度で防げるか試してみるか?」

 

 トーカーの言葉を受けたキッドは何か企んでるかのような笑みを浮かべると力を入れ直してもう一度拳撃を叩き込む。

だがトーカーの体は未だ硬化したままだ。それなのに殴っても結果は変わらないはずなのに……

 

 トーカーはそう考えているのか何もしようとせずにキッドの再度の攻撃を硬化した体で受け止め、キッドの拳を身で受け止めたトーカーはキッドに告げた。

 

「残念だなキッド。

まさかキミがここまで理解力の無い男だとは……」

 

「ホントにそう思うか?」

 

「何を……ッ!?」

 

 キッドの言葉に不自然さを感じたトーカーが彼に問おうとすると突然トーカーの体が勢いよく吹き飛び、吹き飛ばされたトーカーの体は硬化した状態から元の状態に戻ると倒れ、倒れたトーカーは何が起きたか理解出来ぬ

中で立ち上がるとキッドに問おうとするが、トーカーが言葉を発す前にガイはトーカーに接近して彼を斬ろうと襲いかかる。

 

 ガイの攻撃をトーカーは避けると右掌に魔法陣のようなものを浮かび上がらせながらガイに炎を放ち、ガイは放たれた炎を前にして回避を余儀なくされて攻撃を中断する。

 

 ガイの攻撃を中断させたトーカーは改めて鋼鉄に硬化させた自身の体を吹き飛ばしたキッドに何をしたのかを問う。

 

「キッド、キミの力は……鋼鉄人形で立証したはずだ。

その上で私は人形の時以上の強度に体を変化させたのに何故吹き飛ばせた?

キミのその力は一体……」

 

「たしかにオマエの見解は正しい。

体内の水分はもちろん、血液すら振動させて内部破壊するのがオレの得意技だ。

だが、内部破壊するそのエネルギーを元々の形で使用すればどんなに硬くともどうにでも出来る。

「震」の力……オレの能力が持つその力は拳が殴ったものに力を炸裂させる。

オマエが対策した水分についてはこの力を体内に叩き込むことで可能にした応用技だ」

 

「なるほど……能力者故に力を利用していたか。

いやはや、キミ自身の格闘術の技術レベルが高いと聞いていたせいでキミにも能力があることを忘れていた。

いや、キミがこんな戦い方をすると考えないようにしていたと言うべきか」

 

「生憎だが強くなるためなら何でも利用するのがオレのやり方だ。

拳を頼りに賞金首を倒す、武器を持たぬ事が弱いとナメられるのは気分が悪いからな」

 

「利用する、か。

強さが欲しいなら私の考えを受け入れてしまえば何も気にする事無く理想とする強さを得られるのだぞ?」

 

「悪いがアンタが他人にしようとしてるのは真の強さじゃない。

アンタのそれは……ただの偽善から来る施しでしかない」

 

「偽善?

今のこの世界に変革をもたらす私の力を偽善と称すか!!」

 

 キッドの言葉を受けたトーカーは声を荒らげながら地面に魔法陣のようなものを浮かび上がらせると大地を隆起させて無数の槍に変化させながらキッドを貫こうとした。

……が、トーカーのその攻撃がキッドに迫っていく中で黒いエネルギー波が飛んできてトーカーの攻撃を破壊していく。

 

 自身の攻撃を破壊した黒いエネルギー波が飛んできた方にトーカーが振り向くとその先にはアストが立っており、トーカーの視線に気づいたアストが指を鳴らすとトーカーの周囲の地面の下から黒いエネルギー波が大地を突き破るように現れると刃となってトーカーの体を貫いていく。

 

「無駄なことを……!!」

 

「試すか?」

 

 自身の体を貫く黒いエネルギー波の刃を破壊しようとするトーカーだが、トーカーのそれを邪魔するようにアストがさらに指を鳴らすと次々に黒いエネルギー波の刃が現れてトーカーの体を貫いていく。

 

次から次に黒いエネルギー波に体を貫かれるトーカーは賢者の石と一体化したはずなのにどこか痛みに苦しんでるように見え、アストは今のトーカーの姿を見ながら彼に告げた。

 

「どうした?

オマエの言う新世界の頂点に立つはずの存在がこの程度で苦戦するのか?

それともオマエはそこまでの力を持っていなかったのか?」

 

「ふざけるな……!!

野蛮な能力者共が束になって調子に乗りやがって!!」

 

 キッドの言葉に続いてアストの言葉に対しても感情を抑えられないトーカーは強く叫ぶと全身を貫く黒いエネルギー波の刃を破壊して彼らを攻撃しようとした……が、トーカーが攻撃に転じようとするとどこからともなくいくつもの魔力の鎖が飛んできてトーカーの体を縛り拘束してしまう。


「これは……!?」

 

 オレがやった、とアストの隣に音弥が立つと彼は自身の力について話していく。

 

「オレに出来るのはこれくらいだ。

刀鍛冶のついでの造形術、アンタからしたら大したことないかもしれないけど……オレはオレにしか出来ないことで仲間の力になる」

 

「……たしかに大したことはないな。

こんなもの、一時の気休めにしか……」

 

「残念だけど、足止めは彼だけじゃないのよ」

 

 音弥が放った魔力の鎖をものともせずに破壊しようと企むトーカーに対してミスティーが告げるとトーカーの周囲に白煙が発生し、発生した白煙の一部は拳の形となるとトーカーの体を掴んで強く拘束する。

 

「バカな……!?

煙が物理的な行為を行うだと!?」

 

「これはアナタが野蛮だとか低俗だとか見下した能力者の力よ。

そして……あとは任せるわよ!!」

 

「任せろ!!」

 

 ミスティーの操る煙の予想していなかった力にトーカーが動揺している中で彼女が後を託すように言葉を発すると忍者刀を構えた天晴が魔力を強く纏いながらトーカーに向けて走っていき、トーカーに向けて走る天晴は距離を詰める中で自身と同じ姿をした分身を五体出現させ、出現させた分身とともに忍者刀を構えながら鎖と煙に拘束されるトーカーに向けて斬撃を放とうとする。

 

 しかしトーカーは天晴が分身とともに攻撃を放とうとすると力任せに音弥の魔力の鎖とミスティーの煙を体から引き剥がすとともに破壊し、体の自由を取り戻したトーカーは右手に魔法陣のようなものを浮かび上がらせると光を収束させながら天晴に向けて一撃を……

 

「させるか!!」

 

 トーカーが攻撃を放とうとすると全身に蒼い炎を纏ったガイがトーカーに接近して霊刀「折神」で一閃を放ち、放たれた一閃によってトーカーの右腕が切り落とされる。

 

 ガイの行動により片腕を落とされたトーカーの攻撃は中断され、攻撃が中断されたトーカーに向けて天晴が五体の分身とともに斬撃を飛ばすと全ての攻撃がトーカーに命中して敵の体を抉り、トーカーが天晴の一手で負傷して怯むとガイは蒼い炎を霊刀の刀身に強く纏わせながら至近距離で刀の連撃を放って追撃していく。

 

「はぁぁぁあ!!」

 

 キッド、アスト、天晴の連続攻撃を受けたからかトーカーは自慢の錬金術の力を発揮できないままガイの猛攻を受け、ガイの攻撃を受けるトーカーの体は賢者の石を取り込んで人を超えたと豪語していた彼の言葉に反するようにひどく追い詰められている。

自身の身体が追い詰められていくことにトーカーはすでに気づいており、トーカーは自らの力が発揮されないことに戸惑っていた。

 

「何故だ……!?

何故私が追い詰められている!?

私は……人を超えた創造主になるのだぞ!?」

 

「残念だな、「コード・プレデター」。

オマエの野望は……ここで終わらせる!!」

 

 戸惑うトーカーにチャンスなど与えまいとガイは刀に全ての力を集めると敵を斬り、賢者の石で不老不死となっているトーカーに確実な一撃を食らわせようとガイは刀で突きを放つとトーカーの胸部を抉り貫く。

 

「がっ……」

 

「はぁぁぁ!!」

 

 トーカーの胸部を貫いた霊刀「折神」は眩い光を発すると纏う蒼い炎を激しく燃やさせ、そして激しくさせた蒼い炎がトーカーを包み込むと刃のようになって次々にトーカーの体を斬っていく。

 

「ば……バカな……」

 

 蒼い炎に体を襲われたトーカーの息が弱るとガイは刀を引き抜き、刀が引き抜かれるとトーカーは膝から崩れ落ちる。

 

 そしてガイは膝から崩れ落ちたトーカーの首に霊刀「折神」を突きつけながら告げた。

 

「これがオマエが見下した能力者の……人間の力だ」

 

「くっ……」

 

「……これで、終わりだ」

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