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二十七刃


 姫神ヒロムの姿をしたホムンクルスを倒す決意をしたガイ。

アストはガイの言葉を信じてホムンクルスを任せるようにキッドとともにトーカーを相手にしようとし、彼の信じてくれるその思いに応えようとガイは刀を強く握って構える。

 

 姫神ヒロムのホムンクルスはガイが構えたところで別段構えることを意識したりするようなことは無いが、ガイがこれまで目撃してきたどのホムンクルスとも違うただならぬ雰囲気を発していた。

 

 対面するガイは肌でそれを感じ取っており、それ故にガイは一瞬の油断も許すことなく刀を構えて集中していた。

 

「……」

(姿や中身はホムンクルスの偽物だ。

けど、トーカーが生み出したこのホムンクルスの力が他のどのホムンクルスよりも強いことは確かだし、この個体の戦闘力はヒロムと遜色ないレベルだ。

さっきの攻撃の力はたしかにヒロムのそれだったしオレのことを認識してるその様子もヒロムと同じだ。

けど……だからこそ見つけられた弱点がある)

 

「オレがコイツを倒すにはそれを乗り越えるしかない。

ヒロムの偽物を越えられないなら……オレはアイツを超えるなんて到底できない」


「……邪魔をするな」

 

「何?」

 

「オマエが今何を思おうが関係ないが、これ以上の戦いは無意味だ。

トーカーに従えば誰も苦しまずに救える、そのチャンスを無駄にするのか」


 ガイが考えをまとめるように思考を働かせていると姫神ヒロムのホムンクルスはガイに告げる。

人造生命体のホムンクルスとは思えないほどに流暢に話す目の前の個体、その言葉にガイは心が揺らがぬように自らの意思を強く持つように深呼吸をすると姫神ヒロムのホムンクルスの言葉に反論した。

 

「チャンスはたった一度のものじゃない。

幾度となく巡り逢う偶然の中に生まれるきっかけが誰かのチャンスとなるだけ。

オマエの言うのはチャンスではなくトーカーが用意した偽りのもの、そんなものに手を伸ばしても何も救えないし何も起きない。

それに本物のヒロムならそんなことは言わないし、アイツなら自分の道は自分で切り開くからトーカーに頼ることはしない」

 

「オマエがいう本物というのはこれまでのオレのことでしかない。

これまでのオレを今ここにいるオレが倒してしまえばオレが本物になる。

つまり、オマエの論理は破綻するのさ」

 

「そうか、なら仕方ない。

ついでだから……いいことを教えてやる」

 

 姫神ヒロムのホムンクルスの言葉にどこか呆れながら呟くとガイは全身に魔力を強く纏い、刀の切っ先を姫神ヒロムのホムンクルスに向けながら告げた。

 

「オレに勝てないようなヤツはアイツには手も足も出ない。

そしてオレはここでオマエを倒す。

だから、オマエのその望みが叶うことは無い!!」

 

「ほざけ!!」

 

 ガイの言葉を受けた姫神ヒロムのホムンクルスは強く言うと地面を蹴って走り出し、ガイに接近すると飛び蹴りを放つが、ガイは刀の鞘を左手に持つとそれで飛び蹴りを防ぎ止め、防ぎ止めた蹴りを横に受け流すと続けて鞘を逆手に持って姫神ヒロムのホムンクルスの顔面に殴打する。

 

「!!」

 

「はっ!!」

 

 鞘で殴打された姫神ヒロムのホムンクルスが怯んでいるとガイはすかさず蹴りを放ってホムンクルスを蹴り飛ばし、さらに刀を構えると斬撃を飛ばして姫神ヒロムのホムンクルスに命中させる。

斬撃を受けたホムンクルスは大きく吹き飛んでしまうもすぐに立ち上がって拳を強く握りながら走り出し、姫神ヒロムのホムンクルスはガイに接近すると彼を殴ろうと拳撃を放……つが、ガイは姫神ヒロムのホムンクルスが放った拳撃を刀で防ぎ止める。

 

「!!」

 

 刀で防ぎ止められた拳、だが拳には斬られたような傷はなかった。

刀で拳を止められたのなら通常何らかの傷の負っていてもおかしくないし、最悪の場合拳がそのまま切断されていても不思議ではない。

 

だが姫神ヒロムのホムンクルスの拳はガイの刀に止められても負傷すらしていない。

 

何故なのか?その謎が気になる姫神ヒロムのホムンクルスは彼に問う。

 

「……何故斬れない?

オレの素手の一撃は刀に止められたのに何故斬れていない?」

 

「何だ……斬れてほしかったのか?

なら仕方ない……」

 

 姫神ヒロムのホムンクルスの一言が意外だったのか少し驚いた顔を見せるとガイは深呼吸をしてから刀を振り、ガイが刀を振ると地面が無数の刃に抉られたような痕を出現させる。

 

 今ガイが何かしたのは明白だが、あまりに一瞬で起きたことに姫神ヒロムのホムンクルスは思考が追いつかずに唖然としてしまう。

 

 そんな姫神ヒロムのホムンクルスの反応を気にすることも無くガイは地面を強く蹴って走り出すと姫神ヒロムのホムンクルスに接近し、ホムンクルスに接近すると同時に一閃を放つ。

 

 放たれた一閃、その一撃を受けるのは危険だと咄嗟に判断した姫神ヒロムのホムンクルスは慌てて回避行動を取るも数秒ほどタイミングがズレてしまい左肩を軽く抉られてしまう。

 

「な……!?」

 

「二閃」

 

 すかさずガイは二撃目を放って追撃を喰らわせようとするが姫神ヒロムのホムンクルスはギリギリで回避するとガイから離れるように後ろに飛んだ。

 

 だがその瞬間ガイは左手に持つ鞘を持ち直すと勢いよく突きを放って姫神ヒロムのホムンクルスの軽く抉った左肩を突き、傷口を突かれたホムンクルスは痛みによるものなのか仰け反ってしまう。

 

「がっ……」

 

「我流……散り雨」

 

 ガイは両手に持つ刀と鞘で二刀流を思わせるような構えを取ると目にも止まらぬ速さで連撃を飛ばし、飛ばされた連撃が姫神ヒロムのホムンクルスに命中すると彼は次々に全身を負傷させていく。

刀とそれと同じように構えられた鞘、二種の武器ゆえに斬るか叩き殴るかの二択に絞られるのだが姫神ヒロムのホムンクルスはそれを識別する暇もなく全身にガイの連撃を受けて負傷してしまう。

 

 負傷する姫神ヒロムのホムンクルスがその負傷によってフラつくとガイは魔力を全身に纏いながら高く飛び、高く飛ぶと刀と鞘を持った手を大きく広げながら纏う魔力を翼を広げた鳥のように変化させながらホムンクルスに向けて急降下していく。

 

「我流……鷹狩り!!」

 

 急降下していく中でガイは両手の武器を勢いよく振って纏う魔力を解き放ち、解き放たれた魔力は大鳥のように羽ばたきながら姫神ヒロムのホムンクルスに接近すると彼を襲い吹き飛ばす。

 

 吹き飛ばされた姫神ヒロムのホムンクルスは胴に斬撃を受けたような傷を負い、その傷から多量の血を流していた。

 

「バカな……!?

ありえない……何故オレが……!?」

 

「……それはオマエがただの偽物だからだ」

 

 何故ガイに追い詰められているのか、それが理解出来ない姫神ヒロムのホムンクルスが今起きてることに対する理解が追いつかずに混乱している中、ガイは人造生命体である彼にあら事実を明かしていく。

 

「ヒロムが強いのはアイツがこれまで自分の力を高めるために何度も何度も鍛錬を続けたことでその結果が力となって身についたものだ。

それをただデータを集めただけの模倣品のオマエが体現できるわけが無い」

 

「バカな……だとしても、オレは……オマエより強いはずだ……!!」

 

「簡単な話だ。

オマエが偽物、それだけのことだ」

 

 事実を明かされても信じられない姫神ヒロムのホムンクルスにただ簡単に言うとガイは刀を構え、ガイの言葉を受けた姫神ヒロムのホムンクルスはその言葉に怒りを抑えられなかったのか拳を強く握るとガイを殴ろうと動き出す。

 

 だが、それすらガイからしたら想定している事だった。

 

「……残念だよ。その程度の挑発でヒロムは取り乱したりしない。

むしろアイツなら冷静に聞き流して次にどうするかを考える」

 

 走ってくる姫神ヒロムのホムンクルスが殴りかかってくるとガイは鞘で殴り弾き、続けて鞘で連撃を放ってホムンクルスを一方的に追い詰めていく。

 

 連撃を放ったガイは鞘を強く握ると渾身の一撃を放ってホムンクルスを強く殴り、殴られたホムンクルスは勢いよく倒れる。

姫神ヒロムのホムンクルスは鞘での連続の殴打によって体を負傷しているが、ホムンクルスは何とかして立ち上がるとガイを強く握りながらまた走り出して彼を殴ろうとする。

 

「……最後の忠告だ。

オマエは……オレには勝てない」

 

 ホムンクルスに向けて冷たく告げるとガイは刀に……霊刀「折神」に魔力を纏わせ、纏わせた魔力を蒼い炎へと変化させると刀を構え、ホムンクルスが接近してくると彼の攻撃を回避してカウンター代わりに蒼い炎とともに一閃を放って敵の体を両断してみせる。

 

 ガイの一閃で両断された姫神ヒロムのホムンクルスは縦に斬られ、斬られたことに気づいた頃にはホムンクルスは崩れてしまう。

 

 両断されたホムンクルスが崩れるとガイは刀を鞘に収め、刀が鞘に収められる瞬間に金属音が鳴ると崩れたホムンクルスの体は塵のようになって消えてしまい、そして体の消えたホムンクルスの中から小さな赤い石が姿を見せ、ガイがそれを視認したと同時に赤い石は砕け散ってしまう。

 

「バカな……姫神ヒロムのデータを揃えたはずなのに何故……!?」

 

 アストとキッドの二人が相手をしているトーカーは姫神ヒロムのホムンクルスが倒されたのを確認すると驚いた様子を見せ、トーカーが驚いている中でガイは彼を強く睨みながら告げた。

 

「オマエはこんな人形で人を造り代用できると思ってるようだが勘違いするな。

人が積み上げてきたものはオマエが崇拝しているその力では再現されない。

オマエが甘く見ている人間の力は……人の思いは知識すら凌駕する!!」

 

「くっ……!!

だが私の力まで凌駕するとは限らん!!」

 

 どうかな、とアストは言うとガイの横に並び、キッドも同じようにガイの隣に並ぶ。

そして外にいたはずの天晴やミスティー、そして音弥も現れてトーカーを包囲する。

 

「これは……」

 

「トーカー……いや、「コード・プレデター」。

オマエが錬金術をどう思おうが関係ないが教えてやろう。

敵に回す相手を間違えたこと、そして一番侮ってはいけない剣士のことを甘く見た事をな」

 

「いくぞ……ここでオマエを終わらせてやる!!」

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