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二十四刃


 ヒロムに「コード・プレデター」の相手を任せたガイはある場所に急いで向かうために走っていた。

 

 ホムンクルスの出現により暴動が起こり混乱が広がる街の状態など気にすることも無く走り続けるガイ。

そのガイはアストたちのもとを離れて天晴とこの街に来る際に利用した通路のある場所に向かっている。

 

「早く戻らないとアストたちが……!!

何も知らずに待つアイツらが危ない!!」

 

 ただひたすらに走るガイ。するとガイの前に同じ顔をした何人ものホムンクルスが立ち塞がるように現れ、現れたホムンクルスはどこかで拾ったであろう鉄パイプやバットを手に持ってガイに襲いかかろうと動き出す。

 

「こんな時に……!!

邪魔をするな!!」

 

 ガイは全身に魔力を纏うと刀を抜刀して斬撃を飛ばし、飛ばされた斬撃はホムンクルスを全て吹き飛ばしてガイが進むべき道を切り開く。

道が切り開かれるとガイはホムンクルスが起き上がる前にそこを駆け抜ける。

すると……

 

「ガイ!!」

 

 ホムンクルスを吹き飛ばしたガイが駆け抜けた先には天晴が忍者刀を構えてホムンクルスの相手をしており、戦う天晴を発見したガイは抜刀したままの刀を構えて加勢するようにホムンクルスを斬り倒していく。

 

「無事か天晴!!」

 

「何とかね!!

それよりもう大丈夫なのか?」

 

「ああ、もう大丈夫だ。

それより……早くここを切り抜けるぞ」

 

「何かあったのか?

ここを切り抜けてアストたちと合流して「コード・プレデター」を倒しに戻るとか?」

 

「いいや、違う。

アストたちを助けに行くんだ」

 

 何かに気づいてるガイは天晴に急いでここを切り抜けなければならない理由を話すが、ガイの話を聞いた天晴は彼が何を言いたいのか分からず聞き返してしまう。

 

「どういう事だよ、アストたちを助けるって?

アストたちは別にこの街にいないし、あの住宅街の中に身を潜めてるなら安全なんじゃ……」

 

「そうじゃないんだ天晴。

そもそもオレは何でここに来た?」

 

「それは……霊刀を取りに来るためだろ?」

 

「ならそれを話したのは?

霊刀なら「コード・プレデター」を倒せると発言したのは誰だ?」

 

「それはトーカーが……」

 

「そう、トーカーだ。

「コード・プレデター」の犠牲者の立ち寄った集会所に現れたトーカーの話から敵が錬金術師であることと霊刀の持つ力なら倒せると話したのはトーカーだ。

そしてオレたちの行動を「コード・プレデター」は把握してる可能性を認めたのもトーカーだ」

 

「まさかトーカーが敵だって言いたいのか?」

 

 そのまさかだ、とガイは刀を振って斬撃をいくつも飛ばすとホムンクルスを薙ぎ倒し、ホムンクルスの攻撃の手が緩むと天晴にあることを話していく。

 

「そもそも何故「コード・プレデター」はトーカーを完全に始末しなかったのか、オレはそこを考えないようにしていた。

「コード・プレデター」の素性を知る人間、唯一の手掛かりとしてユリウス・トーマスの魔の手から助けてアストのもとへ連れて行ったが、そもそも何故ヤツはオレたちがあそこに現れると分かった?

「コード・プレデター」を倒そうとする人間が現れると分かっていたからあそこにいたとしても来るかどうかは確かじゃない。

そんな曖昧な中で命を狙われる立場の男が集会所に居座ると思うか?」

 

「た、たしかに!!

オレたちがあそこに向かうなんてアストの指示がない限り分からないことだし、あの集会所にはガイに劣るとは言ってもそれなりの手練もいるはずなのに……」 

 

「今になって思えば何より不快なのがヤツの話しを鵜呑みにしていたことだ。

「コード・プレデター」を知る人間なんて冷静に考えれば怪しさしかないのにオレはアイツが話す全てを信用してしまった。

そして霊刀を取りに来るところまで話を進めてここに来たわけだ」

 

「じゃあトーカーは何者なんだ?

アイツは「コード・プレデター」に生命力を奪われたって言ってたのに……」

 

「天晴、肝心なことを忘れている。

オレたちは……「コード・プレデター」の素顔どころか容姿を知らないぞ」

 

「……ッ!!

まさか……トーカーは……!?」

 

「最悪だよ、ホントに!!

ここまでの流れ、トーカーは最初からこの一連の流れすら想定していたことになる!!

アイツは……トーカーは……「コード・プレデター」は!!」

 

「そんな……オレたちは倒したい相手を懐に連れ込んだのか!?

でも何で……」 

 

「ミスティーのもとへ向かった際に現れたサイクロプス、音弥と合流した道場に現れた鬼童丸、そしてはぁ集会所に現れたホムンクルスとなったユリウス・トーマス。

これら全てが能力者を選別して一ヶ所に集めるためだとしたら……アイツはまずオレたちではなくアストたちを手に掛けるつもりだ!!」

 

 

 

 

***

 

 ガイと天晴が行動する一方の住宅街。

二人の帰還を待つアストたちが滞在する洋館からは煙が上がっていた。

 

 そしてその煙によって住宅街に住む人々が混乱により怯え逃げる中、ミスティーとキッド、音弥は民間人を避難させるべく誘導していた。

 

 一方のアストは煙をあげる洋館の中でトーカーと対峙していた。

 

「よくも騙してくれたな、トーカー。

いや……「コード・プレデター」と呼ぶべきか?」

 

「ひどい物言いだ。

何故私が「コード・プレデター」と?」

 

「オマエの言葉はどこか胡散臭かった。

ガイたちは知能よりもチカラに優れているせいで見落としていたようだが、オレを騙すことは不可能だ」

 

「騙す?

何を言っているんだ?」

 

「サイクロプスを最初に寄越したのはオレに戦力を揃えさせるためだな。

次の鬼童丸はオレたちの戦力の確認とその中で利用出来る能力者を見つけるのが目的だったみたいだな。

そしてガイがオマエと出会った集会所にホムンクルスとなったユリウス・トーマスが現れた。

鬼童丸まではオレたちの足止めか始末程度で見過ごせたが、オマエの出現とオマエを襲うように現れたユリウス・トーマスに関しては都合が良すぎた」

 

「何を言うかと思えば……。

私は命を狙われる身だ。それなのに何故……」

 

「トーカー、貴様は一つ見落としてしまったな。

オレたちは誰も「コード・プレデター」の情報を持っていない。

あるのは「コード・プレデター」に殺されたとされる被害者がいるということだけ。

オマエの話した内容は一見すれば有力な情報に思えるが、それは同時に他に証明する方法がない疑われやすい話でもある」

 

「……なるほど。

キミだけは信じてなかったのか」

 

 オレもだ、と民間人を避難させていた少年・キッドがアストのもとへ現れるとトーカーに向けて話していく。

 

「オマエの話を聞いた時、オレは信じるに値しないと判断した。

疑う理由も別になかったが、信じる理由もなかった。

ガイと天晴が真剣に聞いてるからノリを合わせて聞いていたが……話を聞けば聞くほどオマエを信じられなくなった。

オマエの話……過去に「コード・プレデター」と呼ばれるヤツと行動していたというオマエの話からは中身が感じられなかった。

薄っぺらい話、そんな話をするヤツは嘘をつくのに慣れてるやつだけだ」

 

「……酷いな。

私の話を聞いてるフリをしていたのか」

 

「一応何かあったらオレだけは冷静に判断するようにアストから内密に指示されてたからな。

指示を受けたからには遂行する、それがオレのやり方だ」

 

「……なるほど。

フフフフフ……実に、面白い」

 

 アストとキッド、二人を前にしてトーカーは何故か嬉しそうに笑い始める。

笑い始めたトーカー、そのトーカーの体は突如闇に包まれると彼の体は宙に浮き、宙に浮いたトーカーの頭は闇によって皮膚が剥がされると頭蓋が剥き出しとなり、剥き出しとなった頭蓋は黒く染まると髑髏となって瞳の部分を怪しく光らせる。

 

 乾涸びた手は黒く染まると先程まで乾涸びていたと思えぬほどに潤いを取り戻し、体を包んだ闇はローブのようになると背中に巨大な魔法陣を浮かび上がらせる。

 

「それが……貴様の本当の姿か、トーカー。

いや、「コード・プレデター」よ」

 

「……トーカーでいい。

私の生前の名はトーカーだったからな」

 

「生前だと?」

 

「まるで今は死んでるかのようだな」

 

「その通りだキッド。

私の命は賢者の石を見つけた時に潰えている。

命の鼓動が止まると私の体は賢者の石を取り込んで新たな人類を生み出すための存在となった。

そう……私は神となったのだ」

 

「神だと?

笑わせるな」

 

 命を狙われるトーカーとして装うのをやめて「コード・プレデター」としての本性を表したトーカーの「神」という発言にアストは呆れたような態度で言うと全身に魔力を纏い、魔力を纏ったアストの周囲に何やら黒い炎のようなものが漂い始める。

 

「賢者の石の力で万物創造が出来る可能性に至っただけで満足してるようなヤツが神など恥を知れ。

オマエのそれは神ではない……神を真似て演じようとしている子どもと大差ない」

 

「子どもだと?

私の選択一つで世界は……」

 

「自惚れるなよ」

 

 アストが右手を動かすと彼の周囲を漂う黒い炎のようなものが虎の形を得るとトーカーに襲いかかり、トーカーは手をかさずと光の壁を出現させて虎を止める。

が、光の壁に止められた虎は黒い炎のようなものへと姿を戻すと今度は大猿に変化して光の壁を殴り壊した。


 光の壁を壊した大猿はそのままトーカーを殴り殺そうとするが、トーカーは華麗な動きで大猿の攻撃を避けると光の剣で大猿を斬ろうとするが、大猿はまた黒い炎のようなものに姿を戻すと光の剣を回避してアストのもとへ戻ってしまう。

 

「何だ……その黒いのは?」

 

「これはオレの能力、「黒狩」の力。

あらゆるものを破壊するための黒いエネルギーを操るオレの力、オマエのその賢者の石とやらによる力で生み出したものも破壊する。

オマエが生み出すのならオレが破壊してやろう」

 

「闇の貴公子……!!

その力故の名前か」

 

「少し違うな……。

オレがその名を名乗るのは……この世界で力を示すためだ。

オマエにはこの力を味わってもらうが……光栄に思いながら消えろ」

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