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二十三刃



「人は私を……「コード・プレデター」と呼ぶ。

真の呼び名は……導師だ」


 ガイが精霊・フレイとともに移動し、ソラたちはそんな彼を手助けするべく動いているその頃……


 ガイが合流しようとしているヒロムの前に得体の知れぬ何者かが現れ、自らの事を「コード・プレデター」と名乗ると共に別の呼び方をしていた。

 

「導師だぁ?

この騒動を起こした張本人だってんならイカれたサイコ野郎と呼ぶ他ねぇだろ」

 

「キミが私をイカれたと感じるのは相手の思想を受け入れられぬ人間だからだ。

人は他人の思想を理解出来ぬ時は受け入れずに自身の考えを押し付ける、キミは今その人間の摂理の中で発言したのだからな」

 

「あ?

何言ってやがる?」

 

「この時を境に世界は新たな姿を得る。

究極の完成系、ホムンクルスが人類の全てとなり私が導く統治された世界が具現化すればキミも理解出来る」

 

「理解?

別にしたくねぇよ」

 

 得体の知れぬ「コード・プレデター」を名乗るそれの言葉に冷たく返すとヒロムは地面を強く蹴るなり一瞬で距離を詰めて蹴りを放つが、ヒロムの放った蹴りは「コード・プレデター」の体をすり抜け、蹴りがすり抜けた「コード・プレデター」の体はいつの間にかヒロムから離れた位置へと移動していた。

 

「今のは……」

 

「原始的な戦い方をするんだな、キミは。

だがおかげでキミの戦い方は学ばせてもらった。

その獣のような強さ、そして人としての本能が合わさったような外付けの能力とは違う本来人が到達すべき力の形。

それ故に対処しやすい」

 

「対処しやすいなら避けるなよ。

対処出来ないから避けたんだろ?」

 

「キミは勘違いをしている。

防げないから避けたのではなく、防いでも無駄だから避けたのだよ。

それに他者の攻撃を避けること自体は一種の技術。

その技術は賞賛されるべきなのだよ」

 

「くだらねぇ。

無駄な話して話題逸らすのが得意なのか?」

 

「何のことだ?」

 

「オマエがさっき言ってたホムンクルス、それは街で暴れてる人形のことなんだろ。

同じような顔したヤツが何人もいたから奇妙な術によるものだとは思ったが、オマエの言い方から察するにオマエが犯人なんだろ?」

 

「犯人とは失礼だな。

私は導師、人の世を正しく導く存在だ。

犯人ではなく、先導者と呼んでもらいたい」

 

「街を混乱に陥れるような野郎が先導者?

ふざけんのも大概にしておけ」

 

 先導者や導師などと語る「コード・プレデター」の言葉に対してヒロムは冷静に言葉を返す中でサッカーボールを蹴るかのように地面を強く蹴ると地面の一部を削り飛ばし、削り飛ばされた地面の一部は「コード・プレデター」に向かって飛んでいくが「コード・プレデター」はそれすらも通り抜けるようにして回避するとヒロムに向けて話を続けていく。

 

「キミのその才能は捨てがたい。

私の新世界の中でそれを永遠のものにして人々の上に立ってみないか?

キミならそれが可能だ。ホムンクルスとして生まれ変わるための十分な素質もある。

どうだ、私の忠実な部下としてではなく運命を共に見届ける仲間として手を取り合わないか」

 

「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ。

ホムンクルスだかなんだか知らねぇけど、オマエはオレの日常を壊そうとしてる。

オマエに滅茶苦茶にされたこの日常を取り戻すにはオマエを倒す以外ねぇんだ。

オマエに加担するくらいなら……ここで殺す」


「残念ですね、それは。

キミのような強い存在が古い人間の器であることを好むのは実に理解し難い。

新たな世界の朽ちぬことを知らぬ器が用意されることの喜びを、理解していただきたいのに」

  

 街で起きている騒動の元凶たる「コード・プレデター」の誘いに対して戦って敵を潰すことを口にしたヒロムはその意志を示すべく拳を構え、拳を構えるヒロムの姿に「コード・プレデター」はどこか呆れた様子を見せていた。

 

 すると……

 

「ヒロムに何吹き込んでんだよ、オマエ」

 

 ヒロムと「コード・プレデター」、二人の話に入るようにガイがヒロムのそばに現れ、遅れてヒロムの宿す精霊であるフレイが現れる。

現れたガイはフレイから受け取った刀を抜刀しようと柄に手をかけており、刀を持つガイを見たヒロムは彼に冷たく伝えた。

 

「よぉ、ガイ。

厄介事を持ち込んだ責任を取りに来たのか」

 

「……悪い、勝手なことして。

けど、その話は後でいいよな?」

 

「そうだな。

とりあえず目の前にいるあの訳の分からねぇ野郎を倒してからだ」

 

「あぁ、そうしよう」

 

 ヒロムの言葉にガイは一言返すと刀を抜刀する。

抜刀された刀、柄から鞘に至るまで全てが青い刀が見せた刀身はただの武器とは思えぬほどの強い気迫を放っていた。

ガイが刀に何かしてるのか、それともガイが「コード・プレデター」を倒すための一手と考えていたこの「霊刀」と名付けされた刀が持つ力なのかは分からないが、ガイの抜刀した刀を前にして「コード・プレデター」はどこか嬉しそうに話していく。

 

「ほぅ……それが霊刀、私を倒すための秘策か。

まさかこの目で拝めるとは思いもしなかった」

 

「そうだ。

これがオマエを倒すためにオレたちが選んだ方法だ」

 

「……?」

 

 敵の言葉に返すなり刀を構えるガイの隣で何かを不思議に感じたヒロム。

そのヒロムの感じたものの正体に気づくことも無くガイは「コード・プレデター」に対して言葉を発していく。

 

「オマエが街に放ったホムンクルスを止めるには生みの親であるオマエを殺すしかない。

たとえそうでないとしてもオレはオマエを殺して必ずホムンクルスの悪行を止める!!」 

 

「面白いことを言うな、雨月ガイ。

キミの力はこれまでの戦いから拝見していたが刀一つで大きく力の差が覆ると思っているのか?

キミは旧種の人類の戦士、私は新たな世界の主となる錬金術師。

そこにいるお仲間の彼と力を合わせてもここで私は倒せないぞ」

 

「そうか。

なら本当にそうか試して……」

 

 待て、とヒロムはガイの言葉に食い気味に言うと彼を止めると「コード・プレデター」を見ながらガイに尋ねた。

 

「ガイ、オマエはヤツと面識があるのか?」

 

「え?ないよ。

オレがオマエに黙って行動してたのはアイツを倒して強くなろうと考えていたからで、今までオレはアイツが送ってきた刺客を倒してただけだ」

 

「なら……なんでオマエのそれが霊刀で、オマエがそれを使えば「コード・プレデター」を倒せると考えてることをヤツが知ってるんだ?」

 

「それはおそらくヤツがこっちの手の内を何らかの方法で予測して……」

 

 ヒロムの言葉、それを受けたガイは彼に説明しようとした途中でふとある事を頭に思い浮かべる。

それはここに来るまでのある人物の言葉だ。

 

『不死身となったアイツを倒せる唯一の方法は雨月ガイが有する霊刀だ。

他とは一線を画した刀である霊刀、あれならば「コード・プレデター」の不死身を攻略できるはずだ』

 

『キミが「コード・プレデター」の刺客のサイクロプスや鬼童丸を倒せたのは何故か、それをもう一度考え直したまえ。

もしかすればその答えが霊刀に繋がるかもしれないぞ』

 

『何があってそうなったのか、気になって調べた結果……アイツと賢者の石は奇妙な運命に繋がれていることを知った』

 

『それについてオレが知ったことをアイツはどこかで聞きつけ、アイツはオレが賢者の石を狙っていると考えたのかオレの体から生命力を奪ったのさ』

 

『生命力を奪われたオレの余命は医者の見立てだとあと数ヶ月程度、アイツはオレの体から生命力を奪うと共にオレを絶望させようとしたのさ』

 

 頭の中で思い出されるある人物の言葉、それを思い出すガイはある疑問を抱いてしまう。

 

「何で……オレはこんなことを……?」

 

「ガイ、何が気になる?

オレに話せ、考えてやる」

 

「なぁヒロム。

オマエが見ず知らずの人間にこれから倒そうとする相手のかつての仲間が現れたとして、そいつが話した言葉しか情報がなかったら信じるか?」

 

「あ?

んだそれ?」

 

「……仮にその男がかつての仲間である敵に命を狙われて余命僅かで生き延びてるとしたらどうする?」

 

「……信用出来るわけねぇな。

怪しさしかねぇし、何ならその場でそいつを倒した方がいい。

その手の人間はフィクションでは黒幕の率が高いからな」

 

「フィクション……。

ヒロム、それはヒントのつもりか?」

 

「さぁな。

オマエがそう思うなら、そうかもな」

 

 ヒロムの言葉、どこか素っ気ない態度と物言いのヒロムの言葉を受けたガイは構える刀を強く握ると一閃を放ち、放たれた一閃は「コード・プレデター」に迫っていく。

「コード・プレデター」はヒロムの攻撃を避けたようにすり抜けるかと思われたが、ガイの放った一撃は「コード・プレデター」の体をすり抜けることなく敵を切り、切られた「コード・プレデター」は膝をついてしまう。

 

 膝をついた「コード・プレデター」、その「コード・プレデター」は実を包むローブのようなものの下から右手を出すようにして地に手をつき、その手を見たガイはヒロムに伝えた。

 

「ヒロム、オレは……敵に利用された」

 

「あ?」

 

 ガイが目にしたもの、それは「コード・プレデター」の右手……干からびたようなしわだらけの手だった。

ヒロムもそれを目にしており、ガイの言葉が気になって彼に確かめるように話した。

 

「オマエは……今目の前にいるアレとは別にいる何かに踊らされてたって言いたいのか?

味方のフリをした何者かにここに誘導されてアレを倒すように仕向けられたのか」

  

「ああ、そうらしいな。

今思い返せば、情報の少なさから冷静になることを忘れていた。

ただ、今も納得いかないのは何故オレに霊刀を……」

 

「関係ないな。

オマエが気づくべきことに気づいたならそれをどうにかしろ」

 

「ヒロム?」

 

 行け、とヒロムは首を鳴らすとガイの前に立ち、ガイの前に立ったヒロムは膝をつく「コード・プレデター」を倒そうと拳を構える。

 

「オマエが始めたことならオマエが終わらせろ。

この野郎はオレがやるからオマエはオマエのやるべきことをやってこい」

 

「いいのか?」

 

「その刀を手にした理由、忘れんなよ」

 

「ああ、頼む!!」

 

 ガイは刀を鞘に収めるとこの場を離れるように走っていき、ガイが走っていく中ヒロムは「コード・プレデター」を睨みながら告げた。

 

「覚悟はいいよな。

オマエはここで……殺す」

 

「殺す、か。

私の正体も知らずに倒すつもりか?」

 

「オマエの正体なんて関係ない。

今必要なのは……オマエを殺すって意志だけだ!!」

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