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二刃


翌朝。


ガイは制服に着替えており、そして昨晩は何も無かったかのように登校していた。


「……」


街中を一人静かに歩くガイ。


歩き進むガイの耳にどこからか聞こえてくるラジオの音声が入ってくる。


『次のニュースです。

昨晩未明、○○市にて能力者が殺害された事件が発生しました』


「……」


ラジオの音声が語るニュースの内容が気になったガイは歩みを止めると耳を澄ませてその内容を聞き取ろうとした。


『○○市にある博物館近くの駐車場に遺体は放置されていたようですが現場には激しく争った形跡はなく、被害者は無抵抗のまま殺害されたのではないかと推測されています』


「○○市……」

(三つ隣の街か。

能力者が無抵抗ってことは抵抗出来ぬうちに一瞬で殺害されたか?)


ニュースを聞き取る中で何が起きてるのかを分析しようとするガイ。


すると突然ニュースの音声が小さくなり、いつの間にか聞こえなくなってしまう。


「……?」


不思議に感じたガイは音のしていた方で何が起きたのか調べようとしたが、そんな彼の行動を邪魔するように音のしていた方から黒髪の少年が現れる。


「一部界隈では能力者がグループつくって抗争してるって噂もあるけど……気になる?」


「……オマエか」


少年の登場にガイは思わずため息をついてしまい、少年はそんなガイの反応を見ると何故か微笑んでいた。


黒髪、黒い瞳、そしてガイと同じ制服を着ていた。


黒川イクト、彼の名だ。


黒川イクトはガイに向けて携帯端末の画面を見せ、画面には先程ガイが聞こうとしていたニュースが途中停止された状態で表示されていた。


「そのニュース、録画か?」


「Webニュースだよ。

高い会費払って最新のニュースをいつでも映像で見れるのさ」


「ネット開けば検索サイトがタダで記事掲載してるこの時代にか?」


「だからだよ。

簡単に手に入る記事ほど都合よく真実が切り取られてる可能性があるから金払ってでも情報を得るのさ」


「職業病か?

賞金稼ぎの頃の癖が抜けないようだな」


「……そっちは賞金稼ぎの真似事か?」


イクトはガイに続きを見せるかのように携帯端末を手渡すと続けて彼のある事について話し始めた。


「昨日ネクロから連絡があった。

金髪剣士の侍が毎晩非合法な賞金稼ぎの仕事を請け負ってるってな」


「……まだヤツと連絡を?」


「取ってねぇよ。

たまたま向こうが得意の情報網でオレの連絡先手に入れて連絡してきたんだからさ」


「そうか」


「で、何が狙いなのさ?

聞いた話だと請け負った仕事の報酬は受け取ってないらしいじゃんか」


「金に興味はないからな」


「なら何で……」


強さだ、とガイはイクト向けて返すと先程のニュース映像の続きを見ようと再生した。


『……被害者は何か鋭く太い刃物のようなもので心臓を刺されており、現場には凶器と見られるものは発見されていません。

また、数週間前から起きている能力者殺害事件と手口が同じとして警察と対能力者対策特殊部隊「ギルド」は同一人物の犯行として捜査を進める方針を発表しました』


「ギルドまで動くのか」


『また犯行の手口として、被害者は正面と背後から同じ箇所に刃物のようなもので刺されている可能性があると専門家は指摘しています』


「……同じ箇所に?」


不思議だよな、とイクトはガイに言うと彼から端末を回収し、ニュースで話題となっていた事件について話し始めた。


「三件目でその手口が発見されたんだけど、信じられないだろ?

解剖結果からもそれが立証されてるんだけど二度刺してるのが心臓っていうね」


「仕留め損ねて刺し直したのか?」


「オレが聞いた話だと犯行で使われたとされるのは鋭利かつ太い刀身の凶器。

遺体の傷からして前後どっちが先だったとしても心臓を貫かれてるからそれは無いみたいだな」


「じゃあ一体……」


「犯人の狙いが能力者ってことはハッキリしてるけどな」


イクトはガイから回収した携帯端末を操作しながら歩き始め、ガイも彼について行くように歩き始めた。


そして歩く中でイクトはガイにこの事件のこれまでの被害者について話していく。


「最初の被害者は「濁龍」田所宗一郎四十二歳。

能力は濁流を生み出して操る能力だけどこの人は一切抵抗した様子はない。

二番目は「華風」早智小夜二十四歳。

能力は花びらを風で自在に操る能力だけどこの人も抵抗した様子はない。

三番目が「砂蠍」サソリ。

この人の遺体解剖で犯人の手口が発見された。

でそこから「油爆」、「火岩」、「碧氷」、「雷來」、「万兵」、「邪陽」、「天藍」、「学天」、「血鬼」、「植祓」……で昨晩襲われたのが「百光」天津風だ」


「すでに十四人が……」


「しかもその中には凄腕の賞金稼ぎの「学天」ハワード・ワイズまでいるからな」


「……この事件の被害者、全員が異名持ちか」


「そう、そこなんだよ。

警察やギルドが実力認めないと与えない異名を持つ能力者だけが狙われてるんだよ」


それなのに、とイクトは急に足を止めるとガイの方を見て彼を睨みながら彼の行動について厳しく指摘していく。


「少し間違えれば犯罪者として送検されかねない状況で非合法な取り引きに手を出して犯罪者を始末しようとしてるとかどういうことなんだよ?」


「……悪い」


「で、この事件の話になったせいで話逸れたけど、強さが欲しいからこんなことしてたのか?」


「そうだな。

オレとしてはまだ未熟だからってことで手っ取り早い方法選んだんだよ」


「強くなりたいならオレかソラに頼めよ。

大将に頼んで精霊借りるとかすればいいし……」


「それじゃダメだ」


イクトの提案を一言で却下するとガイは歩きながらそれが出来ない理由について話していく。


「半年前のキキトの件でのあの戦い、オレはあの戦いで自分の実力不足を痛感した。

あの日から自分に出来るかぎりのことを何とかして試してはいくものの思うように成長出来ない自分に苛立って……そんな時にクランに再会したんだ」


「クラン?

あの「暗撃」のクラン?」


「そのクランだよ。

たまたまこの辺に来てたクランと会ったオレはアイツに相談した。

そのときに紹介されたのが今オレに仕事を与えてくれてる男だ」


「そいつは誰なんだ?」


「そこまではネクロから聞いてなかったのか?」


「初耳だよ。

ネクロは口からはクランの名前も出なかったしな」


「そうか」


「で、誰なんだよ。

ガイに非合法な取り引き持ちかけてるのは?」


「……「酷獣」って言えば分かるか?」


「なっ……!?」


ガイの口から出た「酷獣」の名を聞いたイクトは驚いてしまい、驚いた勢いで手に持っていた携帯端末を落としてしまう。


ガイは彼が落としてしまった携帯端末を拾うと手渡そうとするが、イクトはガイが手渡そうとする携帯端末を受け取らずにガイに対して確認するように聞き返してしまう。


「ま、まさかだけどあの「酷獣」なのか?

あの残忍で冷酷で狙った獲物は必ず抹殺する裏社会に君臨する貴公子のあの……!?」


「ああ、その闇の貴公子の「酷獣」だ」


「嘘だろ……。

あの「酷獣」と取り引きするなんて……」


「不満か?」


「不満しかないだろ!!

「酷獣」の評判知ってるから尚更だ!!

何でクランと会ったのにネクロに頼らなかったんだよ!!」


「ネクロは拠点にしてる関西圏を離れられなかったからだよ。

オレとしてはすぐに強くなりたかったからこそ「酷獣」に頼った」


「どうすんだよ……。

あの「酷獣」の取り引きなんて死ぬまで終わらねぇし断れねぇぞ?」


そうでもない、とガイはイクトの手に彼が落として受け取らなかった携帯端末を握らせると彼と共に歩きながら「酷獣」との取り引きについて話していく。


「報酬の金を受け取らない条件で依頼だけ受けるように伝えたら後始末と必要物資の無料支給、依頼の引き受けもオレが判断していいってことで取り引き成立したからな」


「嘘だろ?

あの冷酷で残忍なあの「酷獣」がそんな手厚い対偶するのか?」


「初対面の時のあの冷たい性格と態度からは想像できないくらいに手厚くもてなされたよ。

金を受け取らないならそれ相応の対応をしなきゃ気が済まないみたいだったしな」


「もしかしてそれ狙ってて金受け取らなかったのか?」


「まさか、たまたまだよ。

強くなりたいから仕事を受けるって言ったら気に入られてな。

その場に居合わせた闇医者は面白そうに笑ってたけど」


「闇医者……。

ごめん、そこからは聞きたくない」


そうか、とガイは話を終わらせてせっせと歩いていくが、そんな彼に向けてイクトはなぜ強さを求めるのか質問した、


「……早く強くなってどうする気だ?

今強くなっても過去には戻れないのにどうしてだ?」


「決まってるだろ。

ヒロムを守るためだよ」


イクトの質問に対して答えを返したガイはイクトに向けて微笑むと足早に歩いていき、そのガイの答えを聞いたイクトはため息をつくと少し走ってガイに追いつくと横に並んで歩き、ガイの隣を歩く中でイクトはガイの考えを確かめるかのように話し始めた。


「一応聞くけど「酷獣」がこの事件の話をしたらどうする気だ?」


「……引き受けるかもな。

異名持ちを狙う犯罪者なら「覇王」の名を持つヒロムも狙われかねないからな」


「そっか。

じゃあ、一つだけ教えておくよ。

噂で聞いた情報を」


「?」


「今情報屋の間でこの犯人のことはこう呼ばれてる。

異名を狩るもの、能力者の平穏を奪う者……「コード・プレデター」ってな」


「コード・プレデター……」


「情報屋の間ではそいつは他人の異名を奪おうとしてるんじゃないかって噂が流れててな。

まぁ実際は凶悪犯程度にしか知られてないから分からねぇけど」


「……イクト、少し頼みがある」


ガイがイクトに頼もうと真剣な顔で話し始めようとするが、イクトは詳しく聞くことも無く一言言った。


「分かった、分かってる。

どうせ口裏合わせてくれって頼みだろ?」


「……ああ、頼めるか?」


「今回に関してはオレ以外に知られたら終わりだと思ってろよ?」


分かってるさ、とガイはイクトの忠告に一言返事すると自分の携帯端末を取り出して誰かに連絡をする。


「……」


『連絡を待ってはいたがこうも早いとは思わなかった。

そんなに強くなりたいのか?』


「それもあるけど、別件だ。

ある事件について関与出来るか?」


『プレデター狩りでもする気か?』


「ご名答。

力を借りたい」


『……いいだろう。

こちらのテリトリーを荒らす愚か者を抹殺してくれるなら手を貸そう』


助かるよ、とガイは通話を切ると続けてイクトに一つ依頼をした。


「もう一つ頼みがあるんだけど……頼めるか?」


「……受けるって言うまでやめないだろ?」


「そのつもりだな。

実は……」

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