表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラレルラインの彼方の君へ  作者: 祭人
第一章 平行線の彼女
8/57

第八話 僕も来てるんだけど

 だが、美緒らしき人物は見当たらない。


「どこだよ美緒、どこなんだよっ?」


 僕に続けて、聡史と彩音がテーブル席から立ち上がる。

 店内奥の窓際席で、血相を変えて周囲を見渡す三人。 


 そんな怪しげな挙動を取る三人のスマホに、再び着信が。

 

【みお】『だから、わたし。さっきからずっとひとりで待ってるんだけど』


「「「「……へ?」」」


【みお】『もちろん佐山くんの指定したファミレスでね。開店と同時に来たから、もう三十分以上も前からだよ』


 聡史、彩音、僕。三人が顔を見合わせる。


【ミチル】『???』


 次はミチルからの着信。クエスチョン・スタンプの連打だ。

 そして聡史も彩音も、頭上に疑問符を浮かべている。

 もちろん僕もである。


【みお】『実は、本音を言うとね』


『みお』のメッセは続く。


【みお】『わたしついさっきまで。「もしかして、みんなに担がれた?」って怪しんでた。みんな全然来ないしね。わたしを騙そうとしていたんじゃないかって。それで、じっと書き込みせずに黙って待ってたんだけど』


「けど?」と、おもわず口に出る僕。


【みお】『ミチルの「ねえ、サトシ。ていうか結局、みおって・・・来た?」ってLINEグループの書き込みと、佐山くんたちの「来てない」って返信を読んで。居ても立ってもいられなくなって・・・それでメッセを送ったの』


 相変わらず、話が全然噛み合わない。彼女とは平行線にも程がある。

 これは、どういうことなのだろうか。疑問は積もる。


【みお】『ねえ、佐山くん。わたし待ち合わせ場所を間違えたのかな。K駅前のJennyジェニーだよね?』

【サトシ】『ああ、「そこ」で間違いない。いや、「ここ」で間違いない筈なんだ』


【みお】『やっぱり、合ってるんだ。なのに・・・おかしいな、誰も居ないなんて』


 ミチルが青ざめた顔のスタンプを送信してくる。

 横の彩音も、小刻みに震えながら困惑顔で僕を見る。


【みお】『とにかく佐山くん。あなたは今現在、あやちゃんとファミレス「Jenny」K駅前店に居ることに間違いはないんだよね?』

【サトシ】『ああ、そうだよ』

【あやね】『あ、はい・・・ええ、そうですよ』


【みお】『そっか、そうなんだ。みんな、ちゃんと集まってるんだ。京都のミチルや、三年前に死んじゃったジュンはともかく・・・』


 三年前に死んじゃったって……それはこっちの台詞である。

 ていうか勝手に人を殺さないでくれないだろうか。

 

 先日に引き続き不可解なことを言う『みお』。

 僕はおもわずLINEグループに速攻リアクションをした。


【ジュン】『僕も来てるんだけど』


 しばし沈黙するグループ画面。

 もしかしたら、彼女は絶句していたのだろうか。

 しばらくしてから返事があった。

 

【みお】『ねえ佐山くん、あやちゃん。それって本当なの? 本当にジュンがそこに?』


 スタンプで速攻返すふたり。


【サトシ】『YES』

【あやね】『YES』


【みお】『まさか・・・ジュンが・・・生きてるなんて・・・』


 LINEの彼方の『みお』は、どうやら困惑している模様だ。

 

【みお】『・・・・そんなまさか・・・わたし絶対、タチの悪い成りすましだと思っていたのに』


「……ったく。それは、こっちの台詞だっていうの!」


 僕にしては珍しく、感情を声に出して露にした。

 そんな僕を見て、隣の彩音が目を丸くする。


 常識では考え難いが、これってもしかしたら。

 死んだ美緒が、幽霊となってこのファミレスに現れているのだろうか。

 だから僕らには、彼女の姿が見えないのだろう。


 おそらく当の美緒本人は、自分が幽霊であることに気が付いていない。

 そういう設定の映画やアニメなら、幾つか観た覚えがある。

 たしか『ナントカ・センス』とか『冥土の土産屋カントカ堂』とか。

 密かに、そういうオチなのだろうか。


 そして同じ空間に居る筈の美緒からも、僕らの姿が見えないということは。

 まさか、それって……そこって……。

 美緒が今、居る世界というのは。現実世界と重なり合った冥界、つまり『あの世』とか?

 

 ゾクリと震える僕。世にも奇妙で不可思議な展開に困惑する。

 何が真実で、何が嘘なのか。僕にはさっぱり見当が付かない。


 だけど、ひとつだけ。

 そんな僕にも『みお』からの一連のメッセを通じて理解できたことがある。


 それは、聡史のことだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ