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パラレルラインの彼方の君へ  作者: 祭人
第四章 それぞれの告白
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第三十二話 二月は君の嘘

【みお】『ごめんなさい。わたし、ずっとみんなに嘘ついてた』


【みお】『みんなには、三年半前にジュンが交通事故で亡くなってから、ずっと引き篭もってるって言ってたけど。あれ嘘なの』


【みお】『もちろんジュンが死んだことはショックだった。でもね、もうとっくの昔に吹っ切って立ち直ってたの』


【みお】『実はね。今、付き合ってる彼氏がいるの』


【みお】『本当は大学にも行ってるの。彼とはそこで出会った。テニスサークルの先輩で、スポーツマンで優しくて、とても素敵な年上の人。だからもうとっくに昔のことは吹っ切って、それなりに楽しい学園生活を過ごしているのよ』


【みお】『夏の花火大会に一緒に付いて来て貰ったのもね、実はお姉ちゃんじゃなくて彼だったの。だから、ナンパされたとかバッテリが切れそうだったってのも全部嘘。ずっと彼が横でべったりだったから、だからなかなかLINEできなかったのよ』


【みお】『高校時代は落ち込んで、部活を辞めてみんなと離れ離れになったのは本当の話。だからちょっと同情を誘おうと思って・・・未だに立ち直れてないって嘘を付いたの。悲劇のヒロインを気取りたかっただけなの』


【みお】『それで久しぶりにジュンの三回忌の七夕の夜、LINEグループにメッセしたんだけど。それがまさか、ジュンが生きてる並行世界とつながるなんて、夢にも思わなかったけどね』


【みお】『なんにせよ・・・我ながら、タチの悪いかまってちゃんよね。本当にごめんなさい』


【みお】『あとね、ジュン』


【みお】『好きだと言ってくれてありがとう。「今でも僕の心の中には君だけしかいない」って言ってくれてありがとう。本当に嬉しかったよ』


【みお】『それからジュン。今までずっと言えなかった事があるの。あの時は本当にありがとうね。小六の秋、わたしがクラスでイラストや漫画を描いてて、みんなにオタクってからかわれて。その時に身代わりになって守ってくれたこと』


【みお】『あの時のジュン、本当にかっこよかったよ。助けてくれて本当に本当に感謝してる。なのにわたしはジュンを・・・あの時のことが、今でもずっと心にささっています』


【みお】『ジュン、わたしも君のことが好きだよ。大切に思ってる』


【みお】『だけどそれは幼馴染として、クラスや部活の友達として』


【みお】『ジュンとはそういう関係。昔からそれ以上でもそれ以下でもない』


【みお】『恋人だとか彼氏だとか。悪いけど、ジュンのことをそういう風には見れないよ』


【みお】『そちらの世界のミチル、あやちゃん、佐山くん。みんなもありがとうね、大好きだよ。わたし勇気を出してこっちの世界の三人に連絡して、これからは時々四人で集まってみようかと思います。そっちの世界のみんなみたいにね』


【みお】『ジュン、もう絵は描いてないの? 絵、続けなよ。わたしは昔からジュンの絵が大好きだった。君の絵には優しさや才能に満ち溢れてる。昔からわたしにはないものを、君は持ってる』


【みお】『夏祭りの花火大会、楽しかったよ。ジュンが死んだ七夕の日、短冊に「今年は部活のみんなと花火大会に行けますように」って書いた願いもようやく叶ったし』


【みお】『こっちの世界で付き合ってる男の人がいるのに、ジュンや佐山くんたちと内緒でLINEしてるのも彼に悪いと思ったから。もうここには来ないでおこうと思ってたんだけど・・・』


【みお】『つい、あやちゃんとジュンのやり取りを読んでしまって。どうしても最後に本当の事を伝えなきゃって思ったの』


【みお】『みんな、ごめんね今まで騙して嘘ついて』


【みお】『わたしはこっちの世界で幸せだから』


【みお】『ジュンもそっちの世界で幸せを見つけてね』


【みお】『ジュンとあやちゃん、高校の時からずっとお似合いだと思っていたよ』


【みお】『ジュンはあやちゃんとくっつけばいいのにって、ずっと思ってた』


【みお】『だけどジュンがあんなことになって。幼馴染として本当に悲しかった』


【みお】『でも、そっちの並行世界でジュンは生きている。あの頃みたいに、みんなとも仲良くしてる。それが分かっただけで、わたしはもう充分』


【みお】『幼馴染として、絵の弟子として、部活時代の仲間として、友達として。パラレルラインの彼方からジュンの幸せを祈ってるよ』


【みお】『さよならジュン。あやちゃんとお幸せにね』


 ◇


【通知】『「みお」がグループを退会しました』


 僕は泣いていた。

 寒い冬空の闇の中。思い出の公園の東屋のベンチでひとり、気が付けば僕は止めどなく涙を流していた。


 それが『みお』からの最後の書き込みとなった。そして永遠に、僕らの美術部LINEグループに彼女が姿を現すことはなかった。

 

(次章へ)

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