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第二十六話 ミチル
秋の紅葉に染まる京都。
K造形芸術大学情報デザインコースのPCルームでの実習中、天野ミチルは液晶画面に映る画像処理アプリケーション『PhotoShop』の操作をしていた。だけど先日から、講義や製作実習にまるで実が入らない模様だ。
PCの液晶画面から目を反らす。
ペンタブレットの左横に置いた紅いスマートフォンをじっと見つめ、ため息混じりに想いに耽る。
高校の卒業式、校舎の屋上で聡史に抱きしめられた時のこと。
夏の花火大会で、彩音に恋の悩みの相談をされた時のこと。
その日以降、ずっと美緒からの書き込みがないLINEグループのこと。
そして――淳のこと。
みんなの為に、自分にできることはなんだろう。彼女は、そればかりを考えていた。





