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パラレルラインの彼方の君へ  作者: 祭人
第四章 それぞれの告白
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第二十四話 彩音

新章。後半戦へ突入です。

【あやね】『ジュンせんぱい。あたし、ずっと好きだったんです――』


 あたし川瀬彩音は今、ピンクのスマートフォンの画面を見つめている。


 夏の花火大会の時、あたしはそこで送信ボタンをタップしようと何度も思った。

 だけど随分と悩んで、結局『ひと目惚れだったんですよ、あのジュンせんぱいの絵に』と文字を書き足しメッセした。


 短大傍のカフェのテラスでひとり、ホットカフェラテの白いカップを口にする。

 空を見上げる。真っ青に澄み渡る空に、群れを成して浮かぶいわし雲。

 冷たい秋風が、あたしのライトブラウンのウェーブヘアを揺らす。


 せっかく「綺麗になったね」と言ってもらいたくて髪型も変えたのに。どうもそういう事には鈍いジュンせんぱいには、想いがうまく届かない。

 少しはフェミニストのサトシせんぱいを、見習ってくれればいいのに。


 だから昔も、そして今も。あたしには、気持ちを伝える勇気がなかった。


 あたしみたいなひよっこの後輩が、出る幕なんてどこにもない。

 だってジュンせんぱいの心には、ずっとみおせんぱいが――。

 

 そんな他愛もない悩みを、ミチルせんぱいには随分と聞いてもらった。

 あの時、西川緑道公園の交差点で。ミチルせんぱいは自分がトイレを捜すのを口実に、あたしの内緒話を聞くため連れ出してくれたのだ。


 順番待ちの行列で。すこし涙ぐみながら、秘めた想いを語ったあたし。

 そんなみのらぬ恋バナを、ミチルせんぱいはとても親身になって聞いてくれた。


「そっか。うん、わかった。あやちゃんの恋、アタシ全力で応援する」


 ミチルせんぱいは、あたしの背中を優しくさすりながらそう言ってくれた。


 京都で大学デビューをして、見た目も性格もとても変わったミチルせんぱい。

 ああやって無理して関西ノリで、おちゃらけてはいるけれど。本当はとても仲間想いの優しい人だ。


 この人が美術部の部長でよかった。あたしは心からそう思った。

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