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転生した事を後悔する世界  作者: 寒月 シバレ
第二章『新たな人生』
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逆恨みとレッドドラゴンの掟

 立ちはだかるゴーエンをザンダスは噛み付いて力でねじ伏せ、噛み付いたままゴーエンを投げ飛ばす。同じドラゴンでもやはり大人と子供では力に差があった。


 我が子を傷付けられたレグラムが怒り、ザンダスに向かって来るが見えない壁にぶつかり止まった。その様子にはザンダスも驚いた様で動きが止まった。


「結界を張りました」


 手足に残る痛みに耐えながら立ち上がりローブに付いた土を払う。周りに被害が出ない様に結界を張るタイミングを伺っていた時、ザンダスがゴーエンを遠ざけてくれた。怪我をしてしまったが多分致命傷にはなっていないはずだ。子供と言ってもドラゴンなのだから。レグラムが叫んでいるが無視をして話を進める。


「ザンダスさん。貴方は私がゴーエンをフェルシア……でしたっけ? それにさせたと考えている様ですけど、お門違いも良いところですね」

「なに……?」

「良いですか? ザンダスさんがゴーエンを亡き者にしようと企み、この谷から連れ出した。そこでゴーエンと私が出会い、この谷へ戻った。そして色々あってゴーエンが怒り、フェルシアになった」

「何が言いたい!」


 ここまで言っても解らないのかと内心呆れつつ、核心に触れる。


「つまり。ザンダスさんが企みを実行させなければ、ゴーエンがフェルシアになるきっかけは無かった。という事です。……まぁ、きっかけが無くなったとしても、ゴーエンがフェルシアになる事は変わらないと思いますけどね」


 ここまで言えばいくらなんでも理解するだろう。そう思った次の瞬間、私は炎に包まれていた。


「アイ!!」


 結界を張っていたので周りのレッドドラゴンにザンダスの炎が当たる事は無い。ただその結界により、行き場の失った炎は一ヶ所に集中し凄まじい威力になっている。土埃が消えた後には、大きなクレーターと黒い物体が残っていた。


「そんな……アイが……アイが!!」

「人間風情がドラゴンと対等に話そうなんて愚かな事をしたな。あの世で悔やむが良い」


 そう言って高笑いをするザンダスを、私はザンダスの背中に乗って見ていた。図星だからっていきなり攻撃するのは酷いと思う。背中に乗っている私に気が付いていない本人を他所に、周りで見ているレッドドラゴンは私が無事な事に驚いている。


「防火布が丸焦げだ」

「……は?」


 ザンダスは辺りを見回し、そして漸く自分の背中に乗っている私に気が付いた。


「私はまだあの世に行くつもりはありません」

「どうして生きている!? お前じゃないのならあれは何だ!?」

「防火布です」


 見るも無惨な姿の防火布だ。


「ぼう……か?」


 炎に包まれた私は咄嗟に防火布を作り出し覆い被った。シールドを張っていたので直に炎が触れる事は無いが、遮り切れなかった熱を防火布で防ぐ事が出来た。それでも熱かったが。


「お前達いい加減にしないか」


 声が聞こえた頭上に顔を向けると、一頭のレッドドラゴンが降りて来る所だった。ザンダスの背後に降り立ったレッドドラゴンは、左目に痛々しい切傷と、ゴーエンと同じ炎の翼を持っていた。結界を無視して入ってくるとはこのドラゴン、ただ者では無い。


「全て聞かせて貰ったぞ」

「メーゼン族長……」

「ザンダスよ、言い訳をしても無駄だと解っているな? この落とし前はどう付けるつもりだ」

「……出て行きます」

「そうか。ザンダスの妻子は我々が責任を持って守ろう。掟により、今日から一週間以内にエゼルガン谷から立ち去れ」

「はい」


 力無く頷くザンダス。一段落付いた所で、私はそろりと背中から降りた。


「アイとやら、この結界を解いてくれるかな?」

「分かりました……解除」


 結界を解いてすぐにザンダスは飛び去り、レッドドラゴン二頭が後を追った。


「アイー!」


 ゴーエンが顔を私の身体に擦り付ける。頭を撫でながら治癒魔法を掛けると、ザンダスに噛まれた首の傷が徐々に消えて行った。


「ほう……治癒魔法が使えるとはな」

「オリジナルですけどね」

「どうやらただの人間では無いらしいな」

「ええ。貴方もただのレッドドラゴンでは無いですよね」

「まぁただ者ではないのが増えたがな」


 そう言って笑い合った。何故かメーゼンと話していると落ち着く。


「ゴーエン、こちらへ来なさい」


 名残惜しそうに私から離れたゴーエンはメーゼンの前に座った。


「まさかゴーエンがフェルシアになるとはなぁ。覚悟は出来てるか?」

「うん! あ……はい!」

「立派なフェルシアになる為に日々精進しなさい。私も出来る限り力になろう」

「はい! 僕、頑張ります! お祖父ちゃんみたいに強くなる!」


 メーゼンはゴーエンの祖父だったのか。集まっているレッドドラゴンに、私が少しでも妙な真似をすれば即処分するとメーゼンが言って解散させた。試しにほんの少し殺気を放ってみる。


「これ。遊ぶでない」

「すみません」


 大人の対応をするメーゼンは一枚も二枚も上手だった。


「メーゼン族長さん」

「メーゼンで良い」

「じゃあメーゼンさん。さっきから言ってるフェルシアって何ですか? 話を聞いた限りでは特別な存在みたいですけど」


 撫でてと頭を押し付けてくるゴーエンを撫でながら疑問を投げ掛ける。するとレグラムが驚いて声をあげた。


「お前本当に知らないのか?」

「恥ずかしながら……」

「何やら事情があるらしいな。まぁここではあれだ。私の部屋で茶を飲みながら話そうではないか」


 そう言ってメーゼンとレグラムが飛び立ち、私はゴーエンの背中に乗って部屋に向かった。長いトンネルの先に広間があり、そこにキッチンやテーブル食器棚が配置されていた。驚いた事はそれだけでは無く、部屋はドラゴンが三頭も入れる広さなのだが、それら以外は全て人間が使用するサイズと同じだった。

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