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転生した事を後悔する世界  作者: 寒月 シバレ
第一章『終わりが救いに変わる時』
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空気の様な宝物

 覚悟を決めた私は立ち上がり背伸びをして消える準備を始めたのだが、神様は気まずそうにもじもじとしている。


「何かあるのなら遠慮しないで話して下さい。こうしてあり得ない事が実際に起きてて、もう驚く事も無いと思うし。私は何でも受け入れる覚悟は出来ましたから」


 口では言えるが本当に受け入れる事が出来るだろうか。……自殺をしてしまった罪滅ぼしにはならないが、しっかりと受け入れてから消えよう。


「私が貴女をここにお連れしたのは、幸せになって欲しいからなんです」


「ん? 私は死んだんですよね? 死んだのに幸せになって欲しいっていうのはおかしく無いですか? まぁ、神様なら無かった事に出来るかもしれないけど」


「貴女はあの世界に戻りたいのですか?」


 父を殺した山下グループの居る世界に戻る選択肢があるらしい。バラバラになった子供達は心配ではあるが、戻った所で私に出来る事なんてあるのだろうか。


(私はどうしたら良いんだろう……)


 なかなか答えを返せないで居ると、神様が先に口を開いた。


「私は、貴女にあの世界に戻って欲しくはありません」


 初めて神様は力強く言い放った。今までの私の人生を見たのなら、戻って欲しくは無いと誰だって思うのかもしれない。寧ろあれだけの仕打ちを受けたのにも関わらず、戻りたくは無いと言わない私が変なのだろう。


 神様は立ち上がり、私と向かい合った。


「貴女には、別世界で第二の人生を送って頂きます」


「……え?」


「いわゆる、転生です」


 別世界、転生、第二の人生。予想だにしなかった事を言われ頭が追い付いて行けない。輪廻転生、そのままの意味で捉えて良いのだろうか。考え込む為に黙ると、神様は不安そうにしながら私の言葉を待った。


「生まれ変わるって事ですよね。それは、決定事項?」


「はい。勝手に決めてしまい申し訳御座いません……」


「んー……」


 決定事項ならば仕方無い。何より、神様が言うのだから。


「嫌、ですか?」


「嫌では無いです。神様が言うんだし、それに決定事項なら従うしか選択肢は無いよ」


「すみません……」


「何ですぐ謝るんですか? 神様は私の為に色々やってくれてるんだから謝らないで。ね?」


「はい、すみ……あ」


「ほらまた」


「……癖、ですかね」


 イメージしていた神様とのギャップがあり過ぎて、私はおかしくて思わず声をあげて笑った。


「そんなに笑わないで下さいよ……」


「だってさぁ、神様なのに威厳が無さ過ぎなんだもん」


「怒りますよ!」


「ごめ……ふふっ……」


 これ以上笑うと本当に怒られそうなので、気を静める為に深呼吸をした。


「はぁ……笑い死ぬ所だった」


「……泣きますよ?」


「ごめんなさい、神様。でも少なくとも私には好印象だよ」


「……まぁそれなら良しとします」


 何故許してくれたのか解らないが、この話はここで終わらせよう。今後の事について聞いて置かなければいけない。


「それで、私が転生する世界ってどんな所ですか?」


「そうですねぇ、貴女の世界には存在しない、魔法という物が日常的に使われてますよ」


「魔法!?」


「そんなに驚かなくても」


 驚いて声を上げてしまい神様に笑われた。魔法というと、呪文を唱えて変身したり、ほうきに跨って空を飛んだり、火や水の玉を飛ばしたりするあの魔法だろうか。


「す、凄いね」


「おや? あまり嬉しそうじゃ無いですね」


 急にテンションが下がった私を見て、神様は何故なのかと首を傾げた。


「魔法を使った事なんて当然無いし、自分が使う所をあまり想像出来ないっていうか」


「ああそうですよね。では1つお見せしましょう」


 笑顔を浮かべた神様が指を弾くと、何も無い所から突然雪が降り始めた。


「うわぁ……綺麗……」


「小さい頃、貴女は雪が降るのをまだかまだかと空に手を伸ばし、見上げて待っていましたね」


「見てたの!?」


「ええ。それが可愛くてつい……」


 神様はしまった、という表情を浮かべるとゆっくり視線を逸らし言葉を途中で遮った。


「つい、何?」


「い、いえ……」


「……」


「……すみません、つい意地悪したくなりわざと雪を降らすのを遅らせてました」


「ああ……だから天気予報当たらなかったんだ。まぁ過ぎた事だから良いんだけどさ」


 口ではそう言うが内心腹立たしかった。私がどれだけ雪を楽しみにしていたと思ってるんだろう。場の空気を変える為か、神様は咳払いを一つした。


「……と、とりあえず魔法は色々出来るんです。私は神ですから何でも出来ますが、転生する世界では何でも出来る人は居ません」


「何で?」


「貴女はアニメとか……」


「子供達が見る様なアニメしか観てないです」


「なるほど。では一から説明しますね。魔法には属性という物があるんです。属性という意味は分かりますか?」


「なんとなく……」


 今まで何故漫画やアニメを沢山観なかったのだろう。それがとても悔やまれる。


「属性は主に火、水、雷、風、地、光、闇の七つがあります。他に+αで珍しい属性を持つ人も居ますが、それは今は省きますね」


 一度に言わても理解が出来ないだろうから、神様の配慮はとても助かる。頷く私を見て言葉を続けた。


「属性は産まれた時に決まるのですが大体は遺伝するんです。例えば火属性。両親が火属性ならば産まれる子供は当然火属性です。では、両親が火属性と雷属性の場合、産まれて来る子供は何属性になると思いますか?」


「え!? えっと……」


 油断していた所に問題を投げ掛けられ、思わずしどろもどろになる。血液型の様な感じで考えれば……。


「まぁ普通に考えると、火と雷両方の属性になりますよね?」


「正解です! 両方の属性を持った場合はどちらか一方を極めるか、両方を学ぶかの二つに別れます。では……」


 また問題を出されるのだろうか? 心なしか神様が楽しんで居る様に見える。


「火属性と水属性の場合はどうなりますか?」


「それも両方の属性じゃないんですか?」


「これは相性が関わって来るのですが、火と水なら水が勝ちますよね? ですから火属性と水属性の場合、産まれて来る子供は水属性の確率が高いんです。でも稀に両方だったり火属性だったりするので一概には言えません」


「なるほど……神様は教えるのが上手ですね」


「いえ、貴女の理解力が高いんですよ」


 否定しようかと思ったが、言い合いになってきりが無さそうなので止めておこう。


「私にも属性はあるんですか?」


「ありますよ」


「何の属性になるのかなー」


 自分に何の属性が有るのか、考えるだけで心が踊る。属性の中でも便利なのは火か水だろう。でも雷も意外と色々な使い道がありそうだ。


「全てですよ」


「なんだ全てかぁ。それならやっぱり雷が……今なんて?」


「全てです。全属性です」


 開いた口が閉じないって正にこの事を言うのだろう。予想外過ぎてか本当に口が閉じない。


「ああ、ちなみに貴女は全属性以外にも色々出来ますよ? 想像した物を実際に作り出したりも出来ます。想像して創造する事が出来るのですから、属性はあって無い様な物ですね」


「でも何か神様みたいだけど……良いんですか?」


「ええ。私が関わったせいで貴女には最大級の不幸が訪れました。もしかしたらこれから先にも待ち構えているのかもしれません。ですので、私が出来る限りの事をしてあげたいのです。ただ、時間を止める事や生物を造る事は出来ません」


 私が神様とほぼ同じっていう事が衝撃的過ぎて、頭がパンクしそう。そもそも使いこなせる気が全くしない。


「身体能力も上げ下げ可能ですから、それは時と場合によって使い分けて下さい」


「はあ」


「とりあえず、想像さえすれば何でも出来ますから」


「はあ」


「さっきみたいに雪を降らす事も可能ですよ」


「本当に!?」


「ええ。やっぱり雪が好きなのは変わりませんね」


 目を輝かせた私の頭を神様は微笑みながら撫でた。父が死んでから初めて頭を撫でられた気がする。無言で見詰めていると、神様は慌てて手を避けた。


「ああ!! すみません、私ったらつい……」


「良いよ。嬉しかったから」


 笑顔で答えると安心したのか、神様はふうっと一息吐き話を進めた。


「転生をする世界には、今の年齢のまま転生します。姿等も変えれますから年齢はあまり関係無いかもしれませんが」


 見た目も変えられるとなると、自分の本来の姿が解らなくなる可能性が高い。自分と掛け離れた姿に変身する事は、なるべく避けた方が良いのかもしれない。


「それでは、魔物についてお話します。別世界には魔物が居て、それらは人々に危害を加えたりします。姿や大きさ強さ等はピンキリです。でも私と同じ位の力を持つ貴女ならどんな相手でも心配要りません」


「何だか反則な気がするんですけど。それに化物とか怪物とか言われそう」


 強さは時として脅威となる。神様と同じ様な私が存在したら絶対に迫害されてしまう。また一人ぼっちになる気がする。


「そうですね……普段は力を抑えて、力をフル活用する場合は本来の姿を隠すっていうのはどうでしょう?」


「隠す?」


「お面を付けるとかですかねぇ。後は別人に姿を変えるとか。老婆だったり男性だったり」


「んー……お面で良いかな。他人の姿になったとして、もし同じ顔の人が居たらややこしい事になりそうだし」


 要は仮装をすれば良いという事だろう。余り派手では無くシンプルな目立たない程度の仮装が良い。とはいえハロウィンに皆で簡易的な仮装しかした事無い私にはかなり難題だ。


 眉間にシワを寄せて何が良いかと思考を巡らせていると、神様が「良かったら」と言いつつ指を弾いた。すると、一瞬私の身体が光りそれはすぐに消えて行った。何が起こったのかと身体を見ると、服装が変わっていた。


 身体を覆う白くキラキラと輝くローブ。こんなに綺麗な服を見た事もだが、勿論着た事等一度も無い。


「これ、神様とお揃い……?」


「ええ、良ければそれを着て下さい」


「でも……幾ら神様に近いからって同じ服装は……」


「そのローブを着ている時に念じれば、私に必ず思いが届きます。本当は会話が出来る様にしようかと思ったのですが、過保護過ぎるのも良くありませんからね。……かと言ってそのまま放り出すのは心配なので、この形を取らさせて頂きました」


 それも充分過保護な気がするが、私は自分で自分を殺す様な人間なのだから、そこまでしないとまた何をするか自分でも解らない。


「……心配させてごめんなさい」


「これだけは覚えて居て下さい。貴女の事を心配する者がここに居るという事を」


「……はい」


 仮に新しい世界で迫害されようとも、私は1人では無い。神様が私の傍に居て声を聞いてくれる。それだけで凄く安心が出来る。お揃いのローブをまじまじと見て気が付いたのだが、重さを一切感じない。まるで空気の様だ。


(無くさない様にしなきゃ……罰が当たっちゃう)


 保管場所をどうするかと考えると、神様が魔法で出し入れが可能だから心配は無用だと教えてくれた。それなら色々と買ってしまったとしても、収納場所に困る事は無いだろう。私は改めて思う。魔法は狡い存在だと。

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