クママーン討伐
一話だった物を分割しています!
クママーンが入っている檻は動きを封じる意味では使えるだろうが、いつ壊されるかも分からない為このまま置いておく訳にもいかない。檻を解除するとクママーンは体を大きく震わせ雄叫びを上げた。
「クママーン、さっきは良くもやってくれたな。……でも、気付かせてくれてありがとう。今度こそ狩ってやる」
身構えたクママーンへとナイルは再び向かって行った。狙いを定めて雷が放たれる中、ナイルはそれをかわしながら何やら口を動かした。遠くて聞こえないが、地属性の魔力がナイルの持つ剣に集まるのが分かった。
魔力をまとった剣は白いもやが掛かっている。武器に魔力を流す事で、その武器自体が魔法が掛けられた武器として使えるらしい。今度自分も試してみよう。
「行くぞ!」
ナイルは気合いを入れ直し、放電し続けるクママーンに斬りかかった。クママーンの攻撃をかわしながら確実に斬りつけて行く。良く見ると、斬られた痕にそって木の根の様な物が出来上がっていた。マスクメロンさながらのグロテスクな姿に身の毛がよだつ。
(……あれ? 熊とマスクメロンの組み合わせってどこかで見た様な……まぁ良いか)
私が気をそらしている間にクママーンの身体には傷が増え、動きが鈍くなっていた。傷口に出来上がる木の根の様な物は、固くストッパーの役割をしているのだろう。見た目は気持ち悪いが、相手にダメージを与えながら動きを封じるというのは凄い魔法だ。
「どうした? もう降参か?」
剣を構えたままナイルはある程度距離を取った所で様子を伺って居た。暴れ過ぎて力を使い果たしたのかクママーンは大人しくなり、魔力も大幅に減っていた。ナイルはゆっくり近付き、クママーンの頭の前で立ち止まった。
「クママーン。俺はお前のおかげで一つ成長した。お前の分も俺は生きてもっと強くなる。だから、安らかに眠れ」
クママーンの額に突き立てた剣を一気に刺し込んだ。再び暴れるかと思ったが、眠る様に目を閉じ動かなくなった。ゆっくりと剣を抜き取るナイルの元へ近付いた。
「お疲れ様。凄い魔法だね」
「ああ、なかなか使い勝手が良いんだよ。これのおかげで狩りが上手い事いって生活出来てたんだ」
「そうなんだ。……でもこれだけ付いてたら処理とか大変じゃない?」
「対象の生物が死んだら消えるから大丈夫」
暫く眺めて居るとナイルの言っていた通り、木の根の様な物は粒子となって消えていった。手をかざしクママーンを空間へと送る。最初に感じた複数の魔力は今は無く、既に逃げて居る様だ。
「あのさ、剣に魔力流したら土属性の魔武器になってたけど、あれって魔力流すだけで出来るの?」
「魔石が埋め込まれている物なら何でも出来る。ほら」
ナイルは剣を腰から取り外し、持ち手部分を指した。そこには無色透明な石がはめてある。石と言うよりかはガラス玉とか、ダイヤモンドまではいかないがキラキラと輝いていた。
「これが魔石。天然の魔石は凄い値の張る物なんだけど半永久的に使える。人口魔石もあって、天然に比べれば安価だが壊れやすい」
「なるほど……。ナイルのは天然物?」
「ああ。でも俺は金なんて無かったから自分で採掘しに行ったけどな」
「へぇ、自分で採れるんだ」
それなら高額なお金を払わずに、自分で採りに行った方が良いに決まってる。
「ただ魔森の奥深くに行かなきゃならないから、あまり好き好んで行く人は居ないだろうな」
「私、行ってみようかな!」
「はあ!? 聞いて無かったのか? 魔森だぞ?」
だから何? という目を向けると、ナイルは溜め息を一つ吐いた。
「魔森に行くなら俺が案内する。だから行く時は言えよ? 結構複雑で一人だと迷子になるからさ」
「分かった」
「じゃあ村長に挨拶して帰ろうか」
クママーンがなぎ倒した草木をどうするか考えていると、そのままにして置いて大丈夫だとナイルが言った。森に住む生物の住処等色々なるらしい。それから私達は村長へ会いに村役場へ向かった。
「あのクママーンどうするの? 村長に渡すの?」
「討伐だけだからクママーンはどうしようが俺らの勝手だよ。だから売るなり煮るなり焼くなり食うなり何しても良いんだ」
「ナイルは食べたい?」
「えっ、何で?」
「煮るなり焼くなり食うなりって言うから食べたいのかと思って」
ナイルは腕を組み唸りながら何やら葛藤していた。
「まぁ……食いたいって言えば食いたいけど……でも売った方が金になるからなぁ。今は我慢する!」
「そっか」
なんだかナイルの年相応な姿が見れた気がして少し嬉しかった。村役場に到着した私達は、さっそく受付の女性に村長を呼んで貰う様に頼んだ。
「申し訳ございません。プライダは只今席を外しております」
「すみませんがどちらに行かれたかは分かりませんか? 依頼を完了したと、依頼主である村長に直接伝えたいのですが」
「その……申し訳ございません……実は知らない間に出掛けてしまったみたいで……私共も行き先が分からないんです」
「そうですか……」
入口で待つナイルに目を向けると、眉間にしわを寄せて苛立っていた。
「分かりました。また後で来ます」
村役場を出たが、村長が戻る時間が不明なので帰る事も出来ない。仕方無く、最初に立ち寄ったお店で休む事にした。
「あの野郎……どこに居ったんだよ」
「まぁまぁ。村長なんだし、仕事が忙しいんだよ……ってどうしたの?」
「……たしかに、忙しそうだ」
店の入口で立ち止まったナイルの横から店内を覗いた。
「ええ……」
仕事で出掛けたと思っていた村長が、目の前で豪快にお酒を飲んでいる。
「仕事じゃねぇのかよ……」
「さすがに村長は昼間からお酒飲んだらダメでしょ……」
開いた口が塞がらない私達に気が付いた店主が声を掛けた。
「おお! いらっしゃい! ギルクエ終わったのかい?」
「ギルクエ……?」
聞いた事の無い言葉に困っているとナイルが口を開いた。
「ギルドに依頼された任務の事を別名ギルドクエストって言うんだ。それの略だよ」
「ドラクエみたい」
「ドラクエ知ってて何でギルクエ知らないんだよ」
「え、ドラクエあるの?」
「ドラクエってあれだろ? ドラゴンの討伐依頼の事だろ」
「……ああ、そうだよね。それの事だよね、うん。それよりナイル。気持ちは分かるんだけど、落ち着こ?」
「はぁ……」
ナイルから出ていた殺気が徐々に消えていく。殺気は気持ちの良いものでは無い。それにいつからなのか分からないが、何かに追い掛けられている様な視線を感じている。人が多いと魔力の塊がそれだけに有る為、誰がその正体なのか分からない。ただ、ミールやキリアなど知っている人では無い様だ。今はまず村長であるプライダに報告をしよう。
「プライダさん」
「んー?」
私達に顔を向けたプライダは顔がほんのり色付いている。
「おお! 君達か! もう終わったのか?」
「はい。討伐したクママーンを持って来たのですが……」
「素晴らしい! それでは役場に戻ろうか!」
プライダが勢い良く立ち上がった為、椅子が倒れてしまった。
「ちょっと村長、また壊す気か?」
そう言って店主が椅子を立たせた。
「おおすまん! あとで来るからな!」
「はいはい。お代はいつも通りつけておくよ」
プライダは笑いながら私達を置いて店から出て行った。店主に挨拶をしてからプライダを追って店を出た。役場に入り受付けの女性に案内をされた階段を降りて行くと、広い空間に辿り着いた。
「ここにクママーンを出してくれ」
「分かりました」
広い空間の中央にクママーンを出現させる前に、今回は飾りだけの魔方円も付けてみよう。プライダの反応を見て、付ける付けないを変えよう。
「ああ、まだ若いクママーンだな。よし、確認した。お二方、お疲れ様」
魔法円について何も言わない所を見ると、違和感は無いようだ。今度から出し入れの際には魔方円付きにしよう。
「所でアイさん」
クママーンを再び空間へ送った私の隣にプライダが近付いた。酒臭くかなりの至近距離に思わず眉間にシワを寄せる。
「何ですか。早く帰りたいんですけど」
「今日はこの村に泊まって行って下さい。宿も準備しますから」
「いえ私達は……っ」
あり得ない事にプライダが私のお尻を撫で始めた。一瞬にして鳥肌が立ち、気持ちを抑え切れずに殺気を放ってしまった。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
広告の下部辺りにポイント評価欄【☆☆☆☆☆】が有りますので、タップして【★★★★★】として頂けると嬉しいです!
また、ブックマークに追加して頂けると最新話を追いやすくなりますのでよろしくお願いします!
感想やいいね等もお待ちしております!




