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転生した事を後悔する世界  作者: 寒月 シバレ
第二章『新たな人生』
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初めての依頼

一話だった物を分割しています!

 役場へ到着した私達はギルドから来た事を伝えると、村長の居る部屋に案内された。


「失礼致します。お客様をお連れ致しました」


「ありがとう」


 案内をしてくれた受け付けの女性は、そそくさと持ち場へ戻って行った。


「どうぞお座りになって下さい」


 村長と向かい合う形で私達はソファーへと腰を下ろす。白髪頭の老人を想像していたが、白髪では無く思っていたよりも村長は若い様だ。


「お話をする前にまず自己紹介を。私はオレンの村長をやっております、プライダと申します」


 確か酒場のマスターは村長がプライドの高い人だと言っていた。そのプライドの高い人の名がプライダとは、座布団をあげたくなる。


(あ……これ、考えない様にしないと笑っちゃいそう)


「ナイル・ドーエンだ」


「アイ・ドーエンです。宜しくお願い致します」


「早速だが、君達には最近川に現れるクママーンを討伐して頂きたい。完了した証としてクママーンを持って、私の所へ来てくれ」


「分かった。クママーンは一頭か?」


「もしかしたら複数いるかもしれない。川に続く道は一本だから、出没する場所にはすぐ辿り着く。せいぜい死なぬよう頑張ってくれ」


 村長らしいと言えばその一言なのだが、大体の数も把握せず今まで何をしていたのか疑問だ。クママーンが一頭ならばナイルに任せ私はサポートに回ろうとしようと思ったのだが、複数いるのであれば私も前に出なければならない。クママーンが可愛く無い事を願う。


「それじゃあ俺達は行きます」


「失礼します」


 部屋を出て行くナイルに次いで私も部屋を出た。村長の言っていた通り、川に続く道は一本ですぐに辿り着いた。村長と会ってから一言も発しないナイルをそっと見てみると眉間にシワを寄せていた。


「ナイル、怒ってる?」


「俺ああいう肩書きがあるだけで上から目線な奴嫌いなんだよ」


「わかる。私も好きじゃないや。自分一人で倒すとか言ってたくせに、クママーンの数も調べないで何やってたんだって感じ」


「さくっと終わらせて早く帰ろうぜ」


「そうだね」


 クママーンが可愛い姿をしていない事を祈りながら待っていると、こちらへ向かって来る魔力を感じた。


「何か近付いて来てる。それも複数」


「この感じ、クママーンだろ。出て来るのが早くて助かったな」


 準備体操を始めたナイルに対し、私は初めて見るクママーンという生物に緊張していた。


「何か、怖くなって来た」


「金ドラを相手にしたくせに、何言ってんだよ」


「あれは緊急事態だったし」


「俺、死に掛けてたもんなー」


 笑いながらナイルの言う事はもっともだが、ドラゴンはテレビや本等の架空の生物として知っていた事も有り、ゲームの世界の様な感覚だった。ビギナーズラックでは無いが、次に対峙する時は恐怖心が勝るだろう。茂みが大きく揺れたので、そこへと意識を集中させる。


「おお、立派なクママーンだな。久しぶりだ」


 ゆっくりと姿を現したクママーンを見上げる。紫色の体毛に覆われた以外クママーンの見た目は普通の熊と変わらない。ただ、立ち上がった時ビルの二、三階程に達するだろう大きさに衝撃を受けていた。


「大きい……そして可愛く無い」


「いやー立派立派! でもまだお前より大きいクママーンは居るけど、な!」


 衝撃の事実に思わずナイルをじっと見詰めてしまったが、当の本人は気にも止めず地面を蹴り勢い良く巨体なクママーンへと飛び込んで行った。真正面から突っ込んで行くナイルに対し、クママーンは動じる事無く立ち上がって構えた。


「やっぱり大きいわ……」


 クママーンは大きく手を振りかぶったが、ナイルはそれをローリングしてかわした。そして背後に回り込み、尻尾に向けて剣を振るう。尻尾に傷を負ったクママーンは倒れ込み苦しそうにもがいている。


「悪いな。お前の攻撃パターンは全て把握してんだよ。弱点もな……大人しく俺に狩られてくれ」


 止めをさす為、ナイルは警戒もせずにクママーンへ近付く。いくら弱点の尻尾を攻撃したからと言っても、不用意に近付くのは如何なものかと思う。


「ねぇ、危ないから様子みたら?」


「大丈夫だって! 魔森で何度もお世話になったし」


 こちらへ振り向いたナイルの後ろで、クママーンが突然小刻みに震え出した。徐々に魔力の濃度が増している。


「ナイル……クママーンの様子が……」


「ん?」


 ナイルが顔を戻すと同時にクママーンが雄叫びをあげ、身体から雷を四方八方に放った。


「あああああ!!」


「ナイル!!」


 クママーンから放たれた雷をもろに受けたナイルはその場に崩れる様に倒れた。慌てて駆け寄り身を案じたが体が痺れて居るだけで大丈夫だとへらへら笑って居た。


「……何笑ってんの」


「へ?」


 私は動物園の熊が檻に入って居る様子を思い浮かべ、クママーンへ掌を向けると魔法を発動させる。音も無くクママーンを囲う巨大な檻が出来上がり動きを封じた。それから麻痺して動けないナイルを回収し、離れた所へと避難し木へナイルを凭れ掛けた。


「……アイ?」


「最悪の場合、ナイルは死んでたよね。何でそんな笑って居られるの?」


「いや、ただの放雷だったし大袈裟だろ」


「は? 今回はただの放雷だったかもしれないけど、ただの雷じゃなかったらどうなってた? ナイルが再起不能になったら私はどうなるの? 右も左も分からない土地で知識も無いただ魔力が高いだけの何も出来ない無能な私が一人でこの巨大な生き物に勝てると思う? 私はまだ死ねないし生きたい。ナイルに頼ってばかりの私が悪いよ。でも私にはナイルに頼るしか出来ないの。だから、ナイルが怪我をしたり動けなくなったら困るんだけど」


 早口な私の言葉を無言で聞いていたナイルは、体の痺れが徐々に解け出したのかゆっくりと立ち上がるとストレッチを始めた。


「……ごめんなさい。言い過ぎたし自分の事しか考えて無いし最低だ」


「何辛気臭い顔してんだよ。アイが言った事は間違って無いだろ。……正直慢心してたわ。何度も戦って弱点や攻撃パターンは把握してるってさ。……二度と同じ過ちは犯さない。こんな俺を頼ってくれる妹が居るんだからな」


「ナイル……」


「ってかまだ痺れてやがる。くそ! あの時の俺本当に馬鹿!」


 ナイルは太股をマッサージする様に揉んでいる。痛みを取る呪文が魔法となって使えたのなら、痺れを消す魔法も出来るのではなかろうか。私はナイルの前に膝を付き、両脚の太股へと手を添えた。何をするのかと狼狽えるナイルに大丈夫と一言述べ、瞼を閉じてイメージを固める。


「痺れが取れる……痺れが取れる……痺れが取れる……」


 言葉を発すると同時に魔力を流して行く。数10秒継続した後、手を離しナイルを見上げた。


「どう……? 痺れ、取れた?」


 不安気に問い掛けるとナイルは屈伸し足の具合を確認した。


「おお! 痺れ無くなってる! しかも足が軽い…アイはやっぱすげーよ! ありがとうな!」


「どういたしまして」


「じゃあ改めて行きますか。……なぁアイ。もうあれで良いんじゃね?」


「だめ」


 檻に閉じ込められて居るクママーンを指差したナイルは笑顔で提案したが、却下した事で力無く腕を下げた。

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