表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GOD騎士(ゴッドナイト) 〜人間=俺=新米神様〜  作者: ミヤザキング
始まりの章『神様との出会い』
9/26

始まりの章8 フィアの叫び

『フフフッ! フハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハッ!』


地下全体に、ヘェルの笑い声が響き渡る。



『ハハハハハハッ! フハハハッ! 死んだ死んだ~! 死んだぞぉ~っ! 若僧は死んだ~~っ!』



いきなり喜び出すヘェル。ハデスもそのヘェルの突然の様子の急変にヘェルと距離を取った。そのヘェルの目線の先を見た。その瞬間、ハデスの喉は詰まった。



「ーーーーーーッ!」



ハデスは、ルミウスの"死"を知った。巨人が攻撃を止めることなく、赤く染まった棍棒を赤く染まった地面に向かって叩きつけている。ルミウスの体は原型を失い、もう人間には見えない。周りに散乱した血や粉砕され、粉々になっている臓器。ヘェルはまだそのルミウスの無惨な死体を見て笑っている。ハデスの頭の中は怒りで埋め尽くされていく。そして、ハデスはヘェルに向かって叫ぶ。



「ヘェルッ!!!! お前ッ!!!」



『怒らないでよ、ハデスっ! 若僧は死んだっ! 無惨にもね、滑稽っ! 滑稽っ! 実に無惨で無力な死に方だったっ! フフフッ! ハハハッ!』



ヘェルはハデスの方に振り返り、ルミウスの死を馬鹿にする。とっさにハデスは地面を蹴った。そして、跳んだハデスは未だに非情な攻撃をする巨人に向かって急スピードで距離を縮める。



ーーあの巨人めっ!ーー



ルミウスを殺した巨人。ハデスは自分の手で友の仇を打とうとする。


しかし、



『行かせないよっ!』



突如、跳んでいるハデスの目の前にヘェルが現れる。ハデスはいきなり現れたヘェルに反応が遅れる。そして、ヘェルがそう言った途端、ヘェルの鎌がハデスに向かって牙を剥く。その鎌はたちまち、ハデスに突き刺さる。そして、ハデスに鎌によって物凄い勢いで地下の壁に叩きつけられた。辛うじて胴体は繋がってはいるが腹からは少し血が染み出てきている。ハデスはその衝撃に立ち上がることが出来ないでいた。

ヘェルはそのハデスの様子を見届けてから、ゆっくりと歩きながら巨人とルミウスの死体の方へ近づいていく。



『ピシャ、ピシャッ! ピシャリッ!』



ルミウスに近づくにつれ、その散乱した血を踏みしめる音が響く。とっくに巨人は近いてくる主人に気付き、攻撃をやめている。そして、ヘェルはとうとうルミウスの死体がある場所に辿り着く。



ただただ、フィアはその受け止められない目の前の現実を見ていた。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ヘェルはそのルミウスの死体を右手で触る。ヘェルはその感触にニヤケながら、その死体の一部をを持ち上げた。はっきり言うとそれは原型を失っており、ルミウスの死体なのかも分からない。しかし、あの現実を見ていたならば、あれがルミウスの死体だと分かるのだろう。認めたくなくても分かってしまう。そして、ヘェルは静かに歩き出す。フィアに向かって......。


ヘェルとフィアとの距離は狭まっていく。フィアは依然、目の前の現実を受け止めれていない。初めて見てしまった"死"。しかも、自分の知り合いだ。そして、最後のあの表情。そんな現実をフィアは受け止めれる訳がない。だから、


「倒したねっ! ルミウス、強かったよ、おめでとうっ! ルミウス、ルミウス凄かったよ」


フィアには近づくヘェルがルミウスに見えている。幻覚だ。フィアの脳は強制的にヘェルを映さないようにしているんだ。だから、見たくない現実を避け、フィアはルミウスの勝利を讃えていた。ルミウスが死んだことを忘れ......いや、無かったように......。


そして、ついに近づくヘェルにフィアの目の前に辿り着く。そして、フィアの顔の前に持っていたルミウスの死体を見せつける。その潰れた体全身がフィアの目の中に嫌でも入ってくる。避けられない。いくら避けようとしても避けられない現実がそこにある。そして、ヘェルは追撃するように口が動かす。



『ルミウスは死んだよ』



顔に笑みを浮かべながらヘェルはフィアにそう教え込む。当然、とっさにフィアは言い返す。



「ルミウスはここにいるじゃん! ルミウスは強いのっ! ルミウスはヘェル達なんかに負けは負けはっ!」


今まで、フィアの目の中で見えていたルミウスがぼやける。そして、受け止めたくない現実が入り込もうとしてくる。


「ルミウスは死んでなんかいないのっ! 私は見たの、倒したとこを......」


フィアはそう言ったが、後半部分の声はだいぶ小さくなっていた。そこに追い討ちするようにヘェルは、



『フィア、見てみろっ! 僕の手を......そう、このルミウスをッ!!!』



当然、その手には叩き潰されたルミウス。フィアの脳はその情報をシャットダウンしていた。しかし、限界がある。そのぼやけていた視界がだんだん姿を表してくる。そして、その現実がフィアに見えるよう、またヘェルが追い打ちをかける。



『僕の名前は"魔王軍第4幹部ヘェル"だよ、ルミウスではないっ! ルミウスを殺したヘェルだよ』



「いやぁーーーッ! 違うっ! ル、ルミウスは死んでなんかっ!」



フィアは必死に否定を続ける。しかし、もう心の奥底では知っているのだ。しかし、認めたくない。受け止めたくないのだっ!


だが、ヘェルはルミウスの死体をフィアにさらに近づけ見せつける。そして、


衝撃(インパクト)ッ!』


ヘェルの持っていたルミウスの死体は内側から弾けていった。散らばる血。そして、残っていた臓器。フィアの体や顔、手に血がかかる。そして、フィアの綺麗な白銀の髪にも赤色が染まっていっていく。その現実を目の当たりにしフィアは、


「や、やめて、ルミウス? 返事してよっ! ルミウスッ!!!!」



だが、ヘェルは、


『もう一度言おうっ! 僕は"魔王軍第4幹部ヘェル"ですっ! 弱き神様よっ! よく聞けっ! そして、認めろっ! ルミウスは僕によってっ! 死んだっ! 死んだぁーーーーーーッ!!』



「ーーーーーーーッッッ!!!!!!!」



フィアの悲鳴がまた鳴り響く。あの現実が現実になっていく。ルミウスは死んだ。巨人によって。そして、ヘェルによって。ルミウスはもういない。人が死んだのだ。"死"だっ! フィアの髪の毛はルミウスの血で染まったフィア手で掻き乱れる。そこに、



ーー死んだんだよーー



ヘェルの声がフィアの脳内に響く。認めたくなかった"死"が、初めての"死"がフィアの中で蘇り現実となっていく。いや、もう現実となってしまった。発狂するフィア。だが、もうルミウスは死んでしまった。ルミウスは死んでしまったのだ。



『きゃぁーーーーーーーッ!!』



フィアの三度目の悲鳴が、今までで一番大きく悲しい悲鳴が地下に響く。フィアは"死"を強制的に受け止めさせられた。気付かされた。自覚させられた。自分の無力さを思い知らされた。"死"を知らされたのだ。


そして、次の瞬間、叫びながらフィアの体は光り出していく。魔力だ。フィアの中に眠る魔力が解放されていく。

ニヤついていくヘェル。そして、ヘェルは、そのフィアの様子を見て猛スピードで後退する。そして、巨人の目の前に行き、結界を張った。そして、


『フフフッ、予定通り』


そう呟いた。その様子を遠くから、ハデスも見ていた。ルミウスの無惨な"死"を知り、光り出すフィア。そして、笑みを浮かべるヘェル。とっさにハデスは叫んだ。



「フィアーーッ! や、やめるんじゃ! そんなことをしたら奴の思う壺じゃーーーッ!」



だが、光り叫ぶフィアにはその声は届かない。そして、次の瞬間、『光』が膨張する。それを見て、満面の笑みを浮かべるヘェル。そして、



『きゃぁーーーーーーッッッッ!!!!!!』



そのフィアの悲鳴と共に『光』が光が最高潮まで光り出す。そして、フィアの中から縦に『光』が勢いよく解き放たれた。吹き飛びながら消滅する床、そして、天井。落ちてくる死霊(アンデッド)と管理者たちもその『光』によって消滅していく。この"ヘルタワー"は一瞬にして、消滅していく。そして、フィアの解き放った『光』は天高く打ち上がっていく。そのフィアの悲鳴と共に。

さらに、その『光』の爆発は横にも広がり、冥界中を抉り、周りの建物を全て消滅させていく。外での死霊(アンデッド)たちと管理者たちの戦いも一瞬にして消滅していった。

そして、冥界は地表を『光』によって破壊されていった。

フィア、そして、辛うじて結界により生き残ったヘェルと巨人、ハデス。消滅した床の下から出てくる大量の霊たちを残して、この冥界は、半壊と言える程の被害を一瞬にして受けたのだった。フィアによって......。







その『光』が解き放たれたフィアの天高くに発動された巨大な"魔法陣"があったことはヘェル以外の誰も気づくことはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ