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GOD騎士(ゴッドナイト) 〜人間=俺=新米神様〜  作者: ミヤザキング
第1章 『一匹狼の戦姫』
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第1章5 能力の苦しみ

ルイが能力結晶(アビリティークリスタル)に手をかざして力を手に集めるように込めた瞬間、結晶から青い光が溢れ出てきた。その光はルイを包み込む。転移などで味わった『光』とはまた違う。そんな光がルイを取り巻いていく。



ーーやべぇ、気持ち悪いーー



ルイは心の中で呟く。この光は気持ち悪いのだ。自分自身の中へ中へと入り込み、出ていく光。これを例えるなら、まるで連続で嘔吐でもしている気分になる。その感覚は当然、フィアにも通じるはずだ。交信などは切ることが出来ても感覚は消えない。一心同体の欠点でもある。だからこそ、フィアは、まあ、置いておこう。あの女の子が耐えれるはずではないからな。


そんな中ーー、


『徐々に情報が文字となって出てくるだろう』


フレア王女は腕を組みながらルイに向かって言った。


「フレア様の言う通りです、まずは名前などの情報から現れてーーッ! そうも言っているうちに、転生者様、見てみてくださいっ!」


レイテーゼはそう言ってルイの頭上から放たれた光に向かって指を差した。ルイはゆっくりと頭を上に向ける。

そこには、次々とルイの中から溢れるように光が出て上へと昇っていっていた。


「あ、あれはッ?」


ルイは気持ち悪い状況だが、その言葉に目の前にいるレイテーゼに聞く。


「だから、あれはあなたの情報なのです」


そう言ってレイテーゼもまた上を再び見上げる。


そして、ルイはゆっくりと再び見上げる。すると、その光は止まっていく。ルイの連続嘔吐のような気分も和らいでいく。

そして、ルイを取り巻いていた光は全て上へと昇っていった。


『ふむ、では、どうなるか、楽しみであるなっ! 皆の者っ! 最後の転生者だっ! 目に焼き付けて置くんだぞッ!』


フレア王女は立ち上がり、この広間にいる騎士団、神官たち、親族、貴族たちにそう言った。


ーー過大評価し過ぎだってーー


ルイには重すぎる期待だ。こんなのはルイには似合わないとルイ自身が一番知っている。それもそのはず、ルイはただのそこら辺にいる『引きこもり』なのだから。だが、正直のところ、ルイは自分自身の能力は気になる。気にならない人間はまずいないだろう。


「いるなら、俺に教えてくれ」


ルイは誰にも聞こえないくらい小さく呟き、その自分から出てきた光を再び見つめた。光は上空で荒れ狂いながら形を整えていっている。その光景は、この場にいる誰もが見た事のある能力を知る上での過程の一つだ。しかし、これが今から彼に牙を剥くとは誰も思ってもみなかっただろう。


そして、整え終わる寸前、光は乱れ始める。そして、青色だった光が赤へと変色していく。



『ーーーーーーッ!』



その光の様子の変化にこの場にいる誰もが驚く。しかし、そんなことを考える暇もなく、その赤く乱れ暴れる光は降下していく。


そして、牙を剥いた。


「えっ! う、うわあああぁぁぁっ!!!」


光はルイの中に再び戻り、入り込んでいく。



ーーヤバイヤバイヤバイッ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬっ! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ! 焼け死ぬってッ!!ーー



その光はルイの体を焼くように熱い。そして、痛く死ぬくらいの苦痛だ。ルイは必死にそれを耐える。耐えるしかない。ここで倒れたらいけないような気がしたのだ。そして、ルイは歯を食いしばった。口の中では物凄い歯の食いしばりに血が出てきている。そして、ルイは地面に手をつく。流石に立ちながらは耐えられない。今のルイには考える余裕はない。死を感じるのだ。全身が火で包まれているような感覚が常時続いている。焼き魚の気持ちが分かるくらいだ。


そんなルイの様子を周りが気にしないわけではなかった。当然ながら、フレア王女、レイテーゼ、セミミウスはもちろんその他大勢の人たちもそのルイの予想外の行動に戸惑っているそう、この状況は予想外なのだ。今までに前例はない。能力結晶によって人が苦しむなどはこの場にいる誰もが見たことも聞いたこともない。

その混乱の中で一番最初に行動に移したのはフレア王女だ。フレア王女は壇上を降り、ルイの元へと走っていこうとする。


「お姉様ッ! やめてくださいっ! あんな者の所へ行くなどッ!」


その壇上を降りようとするフレア王女をあの謎の少女がフレア王女の前に立ち、両手を広げ、止めようとする。あんな者、それはルイのことだろう。もう荒れ狂い常人ではなくなっている彼のことだろう。その少女の様子にフレア王女は首を横に振り、


『セレナ、私はこんなことをしている暇はっ! あの者は苦しんでいるのだぞっ! 私は私は』


「だからこそですっ!」


その少女は、そう言ってフレア王女を真剣な目で見つめる。


『だからこそだ』


そう静かに少女に向かって言い、フレア王女は少女を横に突き飛ばし、壇上を降りた。

少女は無力にも突き飛ばされた。当然、少女はやろうと思えば反抗も出来ただろう。だが、突き飛ばされたのだったーー。




「お姉ちゃん、もうこれ以上はや、めぇ......」



少女の嘆きは誰にも聞こえることはなかった。姉に向かって手を伸ばすが届かない。少女は複雑な気持ちだ。まあ、この気持ちは神のみぞ知るのだろう。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ルイはまだ苦しんでいる。そこに、フレア王女は走ってくる。そして、ルイの元に辿り着き、地面に手をつきながら悶えるルイに向かってーー、


『大丈夫かっ! 何があったんだっ!?』


フレア王女はルイの体を揺すりながら問いかける。少しばかり声を乱しながら問いかけたのだった。しかし、ルイはその言葉が聞こえていても反応や応答する程の余裕はないのだ。


そしてーー、


「ゴホゴホッ! オェェェェェ!! ゴホゴホッ!」


『ーーーッ! だ、だめぇ、そんな、そんなッ!』


ルイは口から多量の血を吐いた。歯を食いしばっているだけでも出てくる血は止まらない。そのルイの血にフレア王女は動揺する。そのルイとフレア王女の様子にレイテーゼは、


「私が自制の魔法をかけましょう」


レイテーゼがそう言った。彼は冷静にレイテーゼは荒れ狂うルイに向かって手のひらを向けた。そして、レイテーゼの手が光だし、ルイへとその光は向かっていく。これは能力結晶の光とは違う。転移などに似ているのだろう。


「レイテーゼさん、我らも加勢しますっ!」


そう言ってレイテーゼの後ろからは続々と神官たちがルイの元へと来る。そして、レイテーゼと同様に"自制の魔法"をかけ始める。

"自制の魔法"は術者自身にも使えるが、他の人にも使えることが出来る『光属性』の低位魔法の一つである。



そして、神官たちは無我無心に魔法をかけ続けた。その様子に騎士や貴族たちもルイを囲むように寄ってきたのだった。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

しばらくして、ルイの様子は良い方向へと変わっていく。血は止まり、表情も良くはなってきている。そう、神官たちの力によりその苦しみは抑えることが出来たのだ。


「ーーーッ! はぁはぁはぁ」


ルイの息はまだ荒いがだいぶ良くなった。少なからず先程よりかは全然良くなったのだった。


『よかったぁ』


苦しさの中を耐え抜いたルイの耳の中に一つの声が聞こえた。ルイにはそれが誰の声なのかは分からなかった。

そして、ふらつきながら立ち上がった。


そして、ルイを囲むように三百六十度に人がいた。その中には当然、フレア王女やレイテーゼ、セミミウス、バロン団長など、名前も知らない人たちも沢山いる。


「はぁはぁはぁ、た、助けられたみたいだな、あ、ありがとう」


ルイは荒々しい息の中、そう言った。

そのルイの様子にフレア王女はーー、


『そ、そんなことないよっ! ほんとっ! 焦っちゃた、無事で本当に良かった、みんなのおかげだよっ!』


「王女様っ、口調が」


『あっ!』


フレア王女は我を忘れてルイの無事を少なからず喜んでいた。口調も変わっていて、女の子らしい可愛さが出ている。顔は少しばかり涙目だ。その王女の様子に、近くにいた一人の緑髪の騎士が耳打ちする。その騎士の声を聞き、フレア王女は我に返る。そして、頬を赤らめながら、ルイの方から向きかえり壇上へと歩いていく。


『皆の者っ! 元の場所へと戻れっ! 良くやってくれたっ! 本当にっ! 王として感謝するっ!』


フレア王女は歩きながら堂々とそう言った。口調も戻り、通常のフレア・アレクサンダーに戻ったのだった。そのフレア王女の言葉に騎士や神官たちは元の場所へと戻っていく。



そしてーー、


『では、全員、能力画面を開いてくれ』


壇上に戻ったフレア王女はルイに向かってそう言い放った。ルイはもうだいぶ落ち着いていた。先程のことは何も無かったかのような気もするくらいだ。ルイの視界の中には、レイテーゼがいる。セミミウスも近くにいる。そして、あの少女からは強い視線を感じる。当然ながら、ルイの苦しみの中での記憶は曖昧だ。しかし、何となくみんなが助けてくれたのが分かる。確証も何もないのだが。


ルイは大きく深呼吸する。そしてーー、


ーーいよいよ、能力が分かるのかーー


不安と希望を胸にルイはスライドする。その様子に周りの人たちもスライドする。






そして、ルイの能力が分かる時が来たのだった。

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