御縁比べ その一
私の腕をつかむ手の感触は人のものとは思えないほど毛深くごわごわとしてて、気持ち悪かった。
御前を蒐集する。そう言うのはお坊さんが着る袈裟に、お祭りの屋台によく並んでいる、狐の仮面をかぶった変な人。
私たちが今いるのは、文字通り、祭りで賑わう通りの真ん中。狐のお面をかぶったお坊さんが女子高生の首に手をかけている、という異常な状況なのに、行き交う人々は騒ぐどころか気づく様子さえない。
そのまま持ち上げられても、私は苦しそうにするだけ。
頑張れば助けてと叫べるかもしれない。もっと頑張れば、腕に爪を突き立てて逃げるチャンスを作れるかもしれない。
でも、しない。
何も出来ないんじゃない。
何もしないだけ。
やっと“私の番”がきただけだから。
「…………」
持ち上げられて視点が上がったことで、近くの家の屋根の上に立つ人影が目に入る。
ああ、あれは。
男の子にしては背が低くて、あまり学校に来なくて、たまに来てもつまらなさそうに席に座ってるだけの同級生。
彼は私と目が合っているのに、助けに来るでも騒ぐでもなく、ただじっと私を見ていた。
だから私は力を振り絞って、彼に手を――