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5.ネコ彼女、電話で確認す

大学からの帰りの途中、携帯に電話がかかってきました。

『もしもし、だーりんですか?』

「違うと言われたらどうするんですか?」

『その弩S具合は間違いなくだーりん』

 何か凄い認識をされていますね。

「イハ、どうかしましたか? 何か買い忘れがあるのなら買って帰りますが」

『あ、それならダイヤの結婚指輪を買ってきて欲しいの』

「おいそこの同居人、買い忘れって言ってんだろ」

『だーりんがつれない……もう私に飽きちゃった?』

「僕は飽きた彼女に買い忘れを訊ねるほど人間ができていません。それで、そういう用事ではないのですか?」

『うん、違う』

 はて、それでは何の電話でしょう。

『だーりんは、何か用事がある?』

「今日はありませんね。このまま真っ直ぐ帰ります」

『友達とかオンナとか連れて来てない?』

「友達は連れて来ていませんし、オンナはあなただけで手一杯です」

『そこは『十分』と言って欲しい女心』

「諦めてください。僕は女心が理解できるほど人間ができていません」

『じゃあ、そのまま帰って来て』

「はい、いいですよ。……用件はそれだけですか?」

『ん』

 ぷち、つー、つー、つー……

 大したことではないのですが、いきなり電話を切るクセはどうにかしてもらいたいものです。

「大作料理でもしているのですかね」

 誕生日というわけでもなし。

 記念日というわけでもなし。

「忘れている可能性もありますからね、一応花束くらいは買って行きましょうか」

 彼女が好きなひまわりはさすがに時期はずれなので、適当に見繕ってもらって買って帰る。

 そうして、内心わくわくしながら玄関を開けると。

「じゃーん」

 無表情のまま、あまり抑揚のない効果音が聞こえた。

「……」

「だーりん、待って。戸を閉めないで。今の私はあなたを追いかけることもできないの」

「その格好で街中追いかけてきたら本気で別れることを検討しますよ」

 水着です。

 紺色のスクール水着です。

 ご丁寧にも『1ねん いは』と胸に書かれている。確かに一年生ですけれど。ひらがなだと違うでしょうに。

「だーりん、リアクション薄い」

「おいそこの同居人、こちとらリアクション芸人じゃねんだ、そんなの反応できっか阿呆」

「やっぱり白スクじゃないとダメ?」

「人の性癖を捏造しないでください。色の問題じゃありません」

「つまり、すけすけ」

 この花束と気持ちのやり場を教えてください。

「怒らせたのならごめんなさい」

 しょんぼりとした風にイハは謝った。

「いえ、そんなに怒ったわけではないですが……何なんですか、これは?」

「だーりんが、私に飽きないようがんばったの」

 あー……。

「すみません、これは僕の責任です」

「うにゅ?」

 彼女を不安にさせるつもりはなかったのですが、少々つれない態度を取り過ぎたかもしれません。いえ、取り過ぎてしまったのでしょう。

「僕はイハに飽きてなんかいませんよ。今だって、あなたを前にすると何が起きるのかとどきどきしている僕が居ます」

 ごめんなさい、と優しく抱き締めて、キスをひとつ。

 なし崩し的に『至る』ことなく自制した僕は褒めてもらえるはずです。

「やっぱりスク水は有能」

「違います」

電話は、さすがに友人を連れて来るタイミングではやらないようにしようという配慮です

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