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白薔薇姫  作者: Blood orange
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運命の輪が回る(後)

「ジュリアだっけ? お前は自分の男の側で黙ってろよ!なあ〜あんたもそう思うだろ? あのマッケントッシュの娘は色々な男と噂になったんだぜ、俺だってそのくらいの女と寝たって良いとは思わないか?なあ、男を侍らすのが趣味な姫さん(ラプリンシェル)よ」

男の言葉に花は目を見開くと男のにやけた顔を見つめた。

花は男達が自分の事をラプリンシェルと呼んでいる事を知っていた。高い塔に閉じ込められた長い髪の少女。決してその塔から出て生活することなど許されない。

こ、コイツ…私が花=マッケントッシュだと知っててワザと…。

カァっとなったが男の力には勝てず、男を叩こうとした腕さえも掴まれひねられてしまった。

もうダメだ!!


目を強く閉じた花を横から抱きしめたのはレオンだった。

「何をやってるんだ? 彼女は俺の女神だ。お前ごときが気安く触ろうとするな。大丈夫か?」

花は目に涙を浮かべると怖かったと泣き出した。

「お、お前…そいつが誰か知ってんのかよ」

男が狼狽えたようにレオンを見て言って来る。

「ああ、だが、その前に俺が見つけたんだよ。彼女は俺のだ」

チッ!と盛大に舌打ちをした男は「憶えてろよ」と捨て台詞を吐いて友人達と家から出て行った。

まだレオンの腕の中で震えて泣いている花に、レオンは何度も大丈夫だと背中を撫でてくれた。




長い夏休みももうすぐ終わりを迎えようとしていた。

あれからレオンと花は毎日暇さえあれば会っている。

レオンがプロのサッカープレイヤーだと教えてもらった時には、花は驚いた。

彼女の友人でコンスタンチン=アルパチーノオレがフランスでプロのサッカーチームのオーナーをしている。

「ど、どこの国のチームなの?」

すでに心臓は爆発しそうなくらい。

なのに花の表情は至って普通。社交界に出るようになると鋼の心臓を持たないといつどこで足を引っ張られるかなんてわからない。

「フランス」

え…。じゃあもしコンスタンチンのチームならいつだって見に行けるかも…。

思わず頬が綻んでしまう。

「綺麗な黒髪だね」

髪を一房手に取ったレオンは口づける。

「レオン…大好きよ」

「花…僕もだ」

たまに見せるレオンの冷めた眼差しに花は気がつきながらも、彼の言葉を信じていた。

高校を卒業した後、花はイタリアへ渡った。

花自身、父親のレオナードが近々ヨーロッパに製薬会社を設立するのを知っていた。だったら私がそれを知ってイタリアでの土台を築けば良い。そして彼と一緒にヨーロッパで過ごせれば…。

そう考えた花は父親を説得してイタリアの大学へと進んだ。


イタリアでは普通に大学に真面目に行っていたが、レオンと一緒にいる所をパパラッチに撮られてしまい、それが雑誌に載った。

花は自分の容姿が人目を惹くと言う事を知っているせいか、普段からあまり派手な格好はしない。

パパラッチに追われるのはアメリカで十分だ。花はすぐに雑誌会社を買収したが、すでに写真も記事も世に出ていた。

《ラプリンシェルの奔放な性生活》

そう言った見出しで花が大学の学生達と話しているのをキャッチしたものや、ラグビーのゲームでみんなと騒いで抱き合っている写真ーしかも周りにも女の子達もいたのに、全て合成処理して私が男達を羽目を外していますって言う記事を捏ち上げていた。

大学内の写真も同じ学生からの提供だと言う事を知った花は以前にも増して臆病になった。

マッケントッシュ家の人間だと解れば、みんな線を引いてしまう。

ある人は媚びて来るし、ある人は高飛車に「お金持ちって良いわよね〜自分勝手できて〜、男も金で買ってるんでしょ?」など言われる。

イタリアに来てからと言うもの、花は実家からの資金援助など一度も受けた事などない。

地道に節約に励んでる。もちろん花自身モデルとして自分の生活費を稼いでいる。

そんな彼女の地道な努力も知らない人達はいつも好き勝手に花の事を探り、自分達の財布を潤すために花の写真やガセネタを大衆紙に売りつけている。

そんな人達とは関わらないようにしているのに、すぐに友達面をして花に近づいて来る。

だから、花は自分のトレードマークだった長い黒髪をバッサリと切った。

レオンも含めて周りは何であんな綺麗な長い黒髪を切ったのかと質問攻めにしてきたが、花は色々と邪魔だしとサバサバしている。

ジュリアは看護士資格を取得すると、ザカエルと結婚して今はイタリアに住んでいる。

だから、たまに彼女の家に遊びに行くと心からホッと出来る。

普段は碧眼を隠すためにわざと眼鏡をかけている花は大きく伸びをすると、眼鏡を外した。

「全く、花の変装もそこまでくれば、やり過ぎよ」

呆れたように言って来るジュリアに花は苦笑する。

ジュリアに言われるように今の花は野暮ったい衣服に身を包んでいる。

体の線を出す事はおろか、黒髪さえもイスラム教の女性のように、うす布で髪を覆っている。

「だって、私の写真を雑誌会社に売っている人達にとってみれば、私ってドル箱なのかしらね。これだけ私が迷惑しているって言っても、まだやっているんだものだから、徹底的にやろうって思ってね」

「あきれた。花も花だけど、そんな花をカメラ片手に追い回してる自称花の友人達にもすごいわ。花…彼には相談しないの?」

ジュリアの目を見れば、家の事を言っているのだとわかる。

彼女には自分がマッケントッシュ家の人間だと言う事を話した。

その時にジュリアからザカエル達が以前マッケントッシュ家の事を非難していた事を謝ってくれた。

彼らが言っていた事は紛れもない事実だから、私はそれを受け止めるしかないのと答えれば、ジュリアンからは花ってやっぱり名前の通り花だねなんてからかって来る。

「私は私の会社を作りたいの。どこまでやれるかわからないけど。今行動しないと私は絶対に後悔する」

名前は…そうローズ。

花はすぐに会社名のロゴになりそうな絵を描き始めた。

白い薔薇に十字架の紋章。

笑顔でジュリアに打ち明ければ、「それって良いんじゃない?だって今のNYに本社があるあれって長ったらしい名前だよね〜。あとこのロゴも綺麗だし、早くおじ様に相談してみれば?」

「うん…」

大学を卒業した花は一度アメリカに帰るとレオンに言って来た。

彼女の覚悟を決めた硬い表情を見れば、それは二人の別れの瞬間となる。

「レオン…私、アメリカに帰るわ。お父様にやっぱりここにいたいからって言ってみる。もしかして、家を追い出されちゃうかもしれないけど…頑張ってみる」

「花…俺は君と一緒に行ってはいけないかい?」

「え?」

「君のお父さんに挨拶をしたいんだ」

レオンの言葉に花は目を見開いた。

嬉しくって花の目から涙がこぼれて落ちて行く。

それが今は喜びの涙。

そしてその後悲しみの涙になろうとは花はまだ知らなかった。


「嬉しい!」

レオンに抱きつく花にレオンが歪んだ笑みを浮かべていた事も、自分への愛が歪んだ物だった事も。

レオンに恋をし、誰に何を言われても花の心にあるのはただレオンへの深い愛情だけ。



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