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「な、何!?」

異変に真っ先に気づいたのは、ロリ子の父親だった。

確実に限界を超えて、もはや立っていることすらやっとのはずのロリ子が、自分の拳をゆっくりと押し返してきた。自分の拳が押し返されていく感覚に、未知の恐怖が増すロリ子の父親。

「ば、馬鹿な!? どこにそんな力が!」

信じられないといった表情を浮かべた瞬間、ロリ子は父親の拳を完全に捉えた。

「えぇぇいやぁぁぁ!」

ありったけの声で叫ぶと共に、ありったけの力でキャンディハンマーを右に振るう。その瞬間、父親の右の拳が左に逸れた。

左に逸れて勢いを無くした拳が、左側にあった壁にぶつかる。

「くぅ! 娘よ、イタチの最後っ屁とは見事なものだ! だがこれで正真正銘!」

言葉と共に右手を動かそうとした瞬間、父親は異変に気づいた。

「!」

壁にぶつかったままの自分の拳を見るが、見た目は何も変わったことは無い。しかし、異変は確かにあった。

拳が壁に当たった瞬間、動かなくなったのだ。

「な……これは……!」

いくら力を込めても、まるで壁と一体化してしまったかのように壁から離れない拳。

「……計画通りだ」

異変に気づき、意味がわからずに固まっているロリ子の父親を見ながら、新次郎が言った。事態を飲み込めていないロリ子の父親に対して、新次郎の表情はさっきのロリ子の父親のような、勝利を確信した余裕の表情だった。

その言葉と表情に反応し、すぐさまロリ子の父親は新次郎に向かって叫ぶ。

「貴様……! 一体何をした!?」

空気を急激に震わす激しい怒号を受ける新次郎。

怒号を受けた新次郎は、後ろ手に持っていた何かをスッとロリ子の父親に見せ付けた。

それは、水飴トラップの入ったビンだった。

「こいつをお前の右拳につけさせてもらった。その右手は壁にくっついて離れなくなったって訳さ」

新次郎が投げた水飴ボールは、真っ直ぐ飛んでいき父親の右拳に付着した。その付着した水飴ボールが、壁と拳をくっつけたのだ。

「ふふ……ははははは!」

それを聞いた瞬間、父親は大きく笑い出した。何が飛び出すのかとひやひやしていたロリ子の父親にとっては、可愛らしく、そして滑稽な作戦だ。

「なるほど、私の動きを封じるとは見事なものだ。しかし、この程度では数分とかからずに剥がれてしまうぞ?」

高笑いするロリ子の父親。

ロリ子の父親の言葉は正しかった。人間相手ではその威力はすさまじいものだろうが、ロリ子より遥かに格上の人物にそれが通用するかといえば別問題だ。

しかし、新次郎はそれでも表情を緩めない。もちろん、ロリ子の父親に水飴トラップがさほど威力を発揮しないのは、承知の上だ。

「あぁ、わかってるさ。だが、止めるのは数分とかからなくていい」

揺るがない新次郎。何を言われても揺るがない、芯の通った真っ直ぐな声。

そして、一拍置いてから新次郎はハッキリと言った。


「あんたは右手でしか、その力を発揮できないんだからな!」


「!」

ロリ子の父親の表情が、激しく歪み始める。

「貴様……! 何故それを!?」

ロリ子の父親が激しく動揺する。

そんなロリ子の父親に向かって、新次郎はさらに続けた。

「今までの戦い方を見てピンと来たぜ。お前は今まで右手でしか攻撃していない」

ロリ子の体を貫いた光を放った時から、ロリ子の父親は全ての攻撃を全て右手でしか放っていない。それを、新次郎は何度も思い出していた映像の中から見つけ出した。

そしてそれに気づいた時、新次郎はそれを決定付けるための確認を行った。

「まさか……最初の特攻は……!」

「あぁ、左側に回られた時、お前はわざわざ逆の右手を使った。それが決定打になったのさ」

新次郎は勝利を確信し、ロリ子の父親に向かって指を差した。

「そして、右手を封じた今なら攻撃のチャンスって訳だ、ロリ子!」

指を差しながら、新次郎はロリ子の父親の上に向かって叫んだ。

「!!!」

 ロリ子の父親は、急いで新次郎の目線を追う。

 その先には、キャンディハンマーを構えながらロリ子の父親に向かって落ちてくるロリ子の姿があった。

 「これで……終わりです!」

 勢いよく落下してくるロリ子。その勢いは、ロリ子の父親の頭を叩き砕かんとする勢いだ。

 その勢いから来る強さがすさまじいことを感じ取ったロリ子の父親は、慌てたように左手で何かを取り出す。

 握られていたのは、赤いスイッチだった。

 「貴様ら! 私をこのまま倒そうとするならば、私はこのボタンを押す! このボタンを押すことで、貴様らの大事なお友達は木っ端微塵だ!」

 瞬間、ロリ子と新次郎の表情が凍りついた。

 「まさか……麻穂さんを盾にするつもりか!」

 「ひ、卑怯です! そんなのないです!」

 突然のロリ子の父親の言葉に動揺する二人。まさか、こんな隠し球を持っているとは夢にも思っていなかった。

 対してロリ子の父親は、二人の動揺を確認してほくそ笑んでいる。

 「ふ、ははははは!」

 左手のボタンを見せるロリ子の父親の表情は、完全に光明を見出している表情だ。

 「くっ……この卑怯者めが……!」

 「何とでも言うがいい! 狩猟神一族はどんな手を使ってでも任務を遂行せねば!」

 次の瞬間、ロリ子の父親の言葉を遮るように派手な爆発音が鳴り響いた。

 「!」

 「!」

 この爆発は、新次郎はもちろんロリ子の父親ですら予想外の出来事だった。

 「何だ! 何が起こったのだ!」

 慌ててロリ子の父親、そして新次郎が周りをキョロキョロと見回すと、二人の視線が一つに集まった。

 その視線の先では、カプセルのような機械が黒煙を上げている。

 それを見た瞬間、新次郎は青ざめた。

 「ま……麻穂さん!!!」

 ありたっけの力で叫ぶ新次郎。

 黒煙を上げているのは、麻穂が寝ていたカプセルだった。すぐさま安否を確認しようとするが、黒煙が濃くて中の様子を確認できない。

 「そ……そんな……!」

 わなわなと震えながら絶望を写した顔になる新次郎。原因はわからないが、あの黒煙からして中の麻穂が無傷には到底思えない。

 詰んだ、と新次郎は悟った。

 「……?」

 その時、黒煙の奥で何かが動いたように見えた。


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