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 建物の中は一方通行であり、新次郎とロリ子は迷うことなく先に進めた。途中に障害が何も無かったのが、変に不気味に感じてしまう。

 「本当にお前の父さん、ここにいるのか?」

 あまりに怪しすぎるのか、新次郎はロリ子の父親が言ったことを疑い始めていた。それもそうだ。普通なら、道中に刺客の一人や二人が現れて「この先に行きたくば私を倒してからにするがよい!」的な台詞の一つや二つはあってもいいものだ。しかし、建物の中は不気味なまでに何も無く、二人の歩く足音さえもはっきり聞こえるぐらいの静けさを保っている。

 「この先に広い空間があるのです。いるとしたらそお父さんはそこにいるのです」

 この先の道を真っ直ぐ見ながら、ロリ子は言った。

 一度ここに来たことがあるロリ子の言葉を信じ、新次郎は何も言わずにそのまま歩くのを再開した。

 そしてしばらく歩いた二人は、大きな扉の前にたどり着いた。

 「この先にワープホールがあるのです。人間界に来る狩猟神は必ずこの先にあるワープホールを通らなければならないのです」

 「いかにもって感じの扉だな」

 新次郎がボソッと呟いた。

 しかし、新次郎がそう思うのも無理はないだろう。自分の身長の何倍もある巨大な扉を目の前にすると、自然とその先にある何かに未知の恐怖を感じるものだ。RPGのラスボス手前の扉みたいなものだ。ゲームだったらここでセーブでもするところだが、そんなものがないのだから現実は辛いものだ。

 「この先にお父さんがいるのです」

 「あぁ、そんな気がしてきたよ」

 さしずめロリ子の父親はRPGでいうラスボスといったところであろうか。目の前にある巨大な扉から、何となくその様なイメージが湧いてくる。

 「心の準備は出来てるですか?」

 この先に見えるイメージに圧倒されている新次郎の顔を覗き込み、意思を確認するロリ子。どうやら、ロリ子の方は準備万端のようだ。

 「あ? あぁ、出来てるぜ」

 ロリ子の表情に後押しされたのか、新次郎は浮かんでいた巨大なイメージを吹き飛ばして頷いた。

 「じゃあ、開けるですよ」

 新次郎の意思を確認したロリ子は、目の前の巨大な扉を思いっきり押した。その瞬間、扉がゆっくりと開き始める。か弱そうに見えるロリ子の手でも開けられるとなると、この扉は誰の手でも開けられるようだ。

 やがて扉は、新次郎とロリ子が通れる程にまで開いた。

 「さぁ、行くですよ」

 「おう」

 二人は小さくやり取りを交わし、ロリ子を先頭にゆっくりと扉の向こうに入っていった。

 扉の向こうには窓も明かりも無い。一歩踏み入れば、何も見えない真っ暗な空間しか広がっていない。

 「おいおい、何も見えないぞ?」

 「油断するなですよ?」

 ロリ子に先導されながら、見えない空間をゆっくりと進んでいく新次郎。一歩、また一歩と進んでいくにつれて、見えないことに対する恐怖が増していく。

 そして二人の体が完全に扉を通り抜けた瞬間、

 「!」

 「!」

 二人の後ろから激しい音が聞こえた。そしてその音が響いた瞬間に、開いていた扉から漏れていた光が完全に無くなり、視界の全てが暗闇に染まってしまった。

 「おいおい! 扉閉まっちまったぞ!」

 二人が完全に扉を抜けた瞬間、扉はそのまま勢いよく閉まってしまった。もちろん、新次郎とロリ子が自分達で扉を閉めたわけではない。

 一気に不安感が高まる新次郎とロリ子。真っ暗な空間の中で身構え、何が起きてもいいように準備をする。


 「ふふふふふ……」


 その時、暗闇の中から声が響いた。

 その声が響いた瞬間、真っ暗だった部屋の中がその声を合図にしたかのように急に強い明かりで照らされた。

 明るく照らされた部屋の中は広く、中央には巨大な円型の機械のようなものが設置されていて、そこから何本ものコードが周りの機械と繋がっている。どうやら、ロリ子が言っていたワープホールはあれのことのようだ。

 そしてそのワープホールを背に立っている黒く巨大な男。間違いなくそれは、デパートで麻穂をその手に持ってさらっていったロリ子の父親だった。

 「よくきたな、ロリ子」

 ロリ子の父親の低い声が響くと、その威圧感に自然と二人の身が硬直する。ロリ子は威圧感に耐えるために、ロリポップサイスを力強く握り締めている。

 「ご、御託はいいのです! 麻穂さんを返すです!」

 威圧感に負けないように、ロリポップサイスを強く握り締めながら叫ぶロリ子。しかし、それでも恐怖感は拭いきれておらず、声も体も小さく震えている。

 「麻穂……そこの娘のことかな?」

 ロリ子の父親が隅を指差すと、そこにはカプセルのような機械の中で目を閉じて寝ている麻穂の姿があった。

 「麻穂さん!」

 二人は麻穂の所に向かって同時に走り出した。

 しかし、それはロリ子の父親の手が間に入ったことによって急に止まった。

 「お父さん! その手をどけるです!」

 ロリ子が叫ぶが、ロリ子の父親は手を動かさず、道を塞ぎ続ける。

 「こうなったら、強行突破するのです!」

 痺れを切らしたロリ子は、ロリオプサイスを構えてロリ子の父親の手に切りかかる。しかし、ロリ子の一撃はロリ子の父親の指の動きで簡単に弾き飛ばされてしまった。

 「きゃあ!」

 「ロリ子!」

 弾き飛ばされたロリ子に駆け寄る新次郎。外傷は無いようだが、弾かれたことによるダメージは少なからず受けたようだ。

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