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 建物の中は明るく、部屋全体を不気味に照らしている。所々にある窓から見える、赤紫色の空と相まって、建物の中自体が不気味に見えてしまう。暗いだけのお化け屋敷と違い、見えるからこそ不気味に感じてしまう、という表現が正しいだろう。

 そんな中を並んで歩く新次郎とロリ子。ロリ子はいつでも迎撃体制に入れるように、ロリポップサイスを強く握り締めている。

「見れば見るほど不気味な所だな……こんな場所にお前の父さんが?」

 「間違いないのです。お父さんは嘘をつくような人じゃないですから」

 きっぱりと言い張るロリ子。

 「……そうか」

 新次郎はそれだけ言って、それ以上聞かなかった。

 ロリ子は、何故だかそれにとても大きな違和感を感じた。まるで、父の言葉を信じているロリ子に向かって、皮肉を言っているようだ。

 「……新次郎」

 その違和感に耐え切れず、ロリ子は歩いていた足を止め、思い切って新次郎に聞いてみた。


 「新次郎のお父さんとお母さんは……どんな人なのですか?」


 「?」

 ロリ子の突然の質問に、新次郎も歩みを止めて首をかしげる。

 「どんな人……か」

 ロリ子からの質問に、新次郎は腕組みをしながら自分の両親についてを考える。

 「俺の父さんと母さんか……」

 頭の中に両親の姿を思い浮かべる新次郎。ボランティアをしている両親の姿、現地でインタビューを受けている父の姿、炊き出しを行っている母の姿。色んな両親の姿が浮かぶ。

 しかし、新次郎の頭の中には絶対浮かんでこない姿があった。

 それは、両親が新次郎をあやしている姿、両親が新次郎にかまっている姿だった。

 その原因はもちろんわかってる。別に父と母が今でも愛し合っているから自分はほっとかれてる、とかそういう理由ではない、もっと大きな理由がそこにはあった。

 「俺の父さんと母さんは優しい人さ、だって……」

 しばしの沈黙の後、新次郎ははっきりとした口調で言った。


 「孤児だった俺を引き取ってくれたんだからな」


 「え……孤児……ですか?」

 突然の言葉に驚きを隠せないロリ子。

 そんなロリ子にかまわず、新次郎は話を続ける。

 「俺、赤ん坊の時に父さんの会社の近くに捨てられて、それを父さんが拾ってきて育てようって事になったらしい。」

 昔を思い出すように言う新次郎だったが、その表情はどこか憂いを帯びているようにも見える。

 「あの……ごめんなさいです……変なこと聞いちゃって」

 咄嗟にロリ子は頭を下げて謝る。新次郎の今まで見たことの無い憂いの表情を見たロリ子は、何故か謝らなければいけないと思ってしまった。

 一方新次郎は、急に謝られたことで面食らっていたが、すぐにロリ子が自分の顔色を伺っていたのだと気づいた。

 「いや、いいんだ。別に元の親に未練があったわけじゃないし、そもそも前の両親のことなんか何も覚えていないんだ」

 新次郎は、今自分が出来る最高の笑顔をロリ子に見せた。

 自分が孤児であることを知ったのは中学三年生の時だ。その時から、新次郎は自分の本当の両親がどこにいるのか、どんな人なのかをずっと考えていた。両親に聞いても首を横に振るだけで、手がかりらしきものも一切無い。

 気づけば、新次郎の頭の中から、本当の両親についての疑問が完全に無くなってしまっていた。それは、血が繋がってなくても自分を心配してくれている両親のおかげでもある。血が繋がってないことを無理に気を使われるよりかは、こっちの方が新次郎にとってはありがたいことだ。

 「何か辛気臭い話になっちまったな。それより、さっさと先に進むぞ」

 「は……はいです」

 無理やり話の腰を折り、新次郎とロリ子は再び歩き出した。


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