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 「……もう大丈夫、しばらくすれば目を覚ますわ」

 「ありがとうございます! 智野先生!」

 新次郎は、ロリ子の治療を引き受けてくれた智野先生に頭を下げた。

 デパートでの一件があった直後、新次郎はすぐさま智野先生の所に向かった。他に当てが無いわけではなかったのだが、智野先生の所に行くのが一番いいと思ったからだ。

 結果、その判断は正しかった。知能神一族の開発した医療マシーンによって、ロリ子の傷は見る見るうちに癒えていっている。さすが知能神一族だ、と新次郎は改めて思った。

 「事情は大体わかったわ。ずいぶんと大変だったみたいね」

 「はい……」

 ロリ子が治療を受けている間、新次郎はデパートで起きたこと、突如ロリ子の父親が現れたこと、ロリ子の父親によって麻穂がさらわれてしまったこと、自分が知っていることを全て話した。

 「ロリ子ちゃんのお父さん、そして狩猟島ね……」

 「何か、知ってるんですか?」

 腕組みしながら呟く智野先生に、新次郎は詰め寄って聞いてみた。

 智野先生は新次郎に問いに、少し唸ってから口を開いた。

 「……ロリ子のお父さんはね、狩猟神一族のトップなの」

 「トップ……族長ってことですか?」

 智野先生は小さく頷いて続けた。

 「狩猟神一族の族長、ロリ子のお父さんは他の種族からも一目置かれてる凄腕のヒットマンなの。ロリ子のお父さんに狙われたターゲットの生存率は0パーセント、依頼達成率は異例の100パーセントの記録保持者」

 新次郎は、自分はそんなにも強大な相手を前にしていたのだと理解した瞬間、自然と全身から汗が吹き出てきた。

 「もっとヤバイのは、ロリ子のお父さんが引き受ける依頼っていうのが、全部難易度S級のとても危険なものばかり。そんな中でも依頼達成率100パーセントを保っているってことは、それだけロリ子のお父さんがすごいってこと」

 「……」

 もはや声すらも出ず、ただ聞くことしか出来ない新次郎。

 そんな新次郎に構わず、智野先生はさらに話を続ける。

 「そして狩猟島っていうのは、狩猟神一族が人間の世界に来る時の架け橋となる場所。狩猟神一族は狩猟島を通らないと人間の世界にも、そして自分達の故郷にも帰れない」

 「それって、どこにあるんですか?」

 新次郎が固まっていた口を開けて聞いてみると、智野先生は何も言わずに黙り込んでしまった。明らかに、智野先生は狩猟島の位置を隠している。

 「先生! 麻穂さんが攫われたんです! 助けに行かなきゃ!」

 「……」

 それでもなお、口を割ろうとしない智野先生。

 「先生!」


 「私が場所を知ってるです!」


 突如、二人の間に声が割り込んできた。それは、医療マシーンに入っているロリ子が発した声だった。

 「ロリ子ちゃん! まだ喋っちゃダメよ! 安静にしてなさい!」

 智野先生が叫ぶと、ロリ子はそんなことお構いなしに医療マシーンに張り付く。

 「安静になんかしていられないのです! 麻穂さんが攫われたのにこんな所でじっとなんかしていられないのです!」

 そう言って、ロリ子は医療マシーンの入り口を内側から開けようとした。それを見て、智野先生は慌てて医療マシーンに駆け寄って横のボタンを押す。

 すると、医療マシーンの中の緑色の液体がゆっくりと引いていき、扉が開いた。

 すぐさま、智野先生は近くのタオルでロリ子の体を拭く。

 「まったく、無茶ばっかりするんだから」

 そう言いながらロリ子の体を拭く智野先生。

 その智野先生に向かって、ロリ子は揺るぎの無い声で言った。

 「智野先生、私はお父さんが相手でも行くのです! 麻穂さんを助けに行かなきゃなのです!」

 体を拭き終え、大き目のタオルをロリ子の体に巻く智野先生。そのまま、智野先生は真剣で重い表情をロリ子に見せる。

 「……わかってると思うけど、あなたのお父さんはあなたが敵うような相手じゃない。下手すれば……死ぬわよ?」

 智野先生が真剣な表情で言う。

 しかし、新次郎もロリ子も表情を何一つ変えなかった。それだけの強い意志が、二人の表情に込められていた。

 「そんなの関係ないのです!」

 「俺達はどんな相手だろうとも、麻穂さんを助けに行きます!」

 二人は決意を前面に押し出した表情で智野先生に言う。

 それを見た智野先生は、小さくため息を一つついて、まるで子供のお願いを聞いてあげる親のような、とても柔らかい表情で微笑んだ。

 「まったく、しょうがないわね」

 そう言って、智野先生は近くのクローゼットから何かを取り出した。その何かは、大きめのハンガーにかけられた服のようだった。

 「あ! それ!」

 その服を見た瞬間、ロリ子は指をさしてビックリした表情で叫ぶ。

 智野先生がクローゼットから出したのは、ロリ子がいつも着ている、鮮やかなピンク色のドレスだった。汚れや傷が一切見当たらない、新品で綺麗なドレスだ。

 「こっちの方が気合入るんじゃないかしら?」

 「もちろんなのです!」

 ドレスを受け取ると、ロリ子はとても嬉しそうな表情でドレスを着る。

 「それと、新次郎君」

 「は、はい!」

 急に視線を新次郎に向ける智野先生。真っ直ぐ新次郎を見つめながら、智野先生はしっかりとした声で言った。

 「ロリ子ちゃんを……よろしくね」

 「……はい!」

 それを聞いて、ドレスを着終わったロリ子が偉そうに笑う。

 「新次郎! くれぐれも足を引っ張るなで、ぶふっ!」

 偉そうに言っているロリ子の口元を、すぐさまいつものように力いっぱい締め上げる新次郎。

 しかし、いつもと違う点を挙げるならば、いつもの笑っているようで笑っていない表情が、少しだけ柔らかくなっていることだった。

 「ごべんばばいごべんばばい! ばばびべぶばばばび!」

 これは「ごめんなさいごめんなさい! 離してください!」と言っているようだ。

 仕方なく、新次郎は締め上げていた力を緩めてロリ子の口元から手を離す。

 それを見ていた智野先生が、小さくため息をつきながら何かの準備を始めた。

 「もう、緊張感の無い二人ね」

 呆れたような、しかしどこか嬉しそうに言う智野先生は、ガサゴソと二人についてくるよう促す。

 促された二人は、階段を下っていく智野先生の後についていった。


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