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後ろを振り向くと、そこには意外な人物が立っていた。
「……麻穂さん?」
「一之瀬君だよね? 何やってるの?」
相変わらずの誰もが恋をしそうな、美しくも可愛らしい笑顔で神奈 麻穂がそこに立っていた。
「あ! 麻穂さんです!」
ロリ子も麻穂の存在に気づき、すぐさま麻穂の方に駆け寄る。二人のアイドルの共演が新次郎の目の前で実現している。聖也に言ったらブラックアウトするまで殴られるだろう。
「ロリ子ちゃん、一之瀬君と何をやってるの?」
「服を買ってきたのです! 新次郎が買ってくれるのです!」
麻穂の質問に答えるロリ子。
「……!」
しばらく二人を眺めていた新次郎は、さっきまでの悩みの解決策を思いついた。
「麻穂さん、今時間ある?」
「え? うん、あるけど」
突然の質問に面食らった表情の麻穂。
望みどおりの答えに安心した新次郎は、思いついた解決策を実行することにした。
「麻穂さん、ロリ子の服を選んでやってくれないかな?」
新次郎が考えたのは、麻穂にロリ子の服を選んでもらうことだった。自分よりも服のセンスはあるだろうし、何より性別が同じなら共通するものもあるだろう。無理して自分がやるよりも、聖也を呼ぶよりもよっぽど安全だ。
麻穂は急なお願いに戸惑うも、しばらくして笑顔を浮かべながら首を縦に振った。
「うん、私でいいなら」
その言葉にとりあえず一安心する新次郎。
そして、三人は目的地である服屋に向かって歩き始めた。
「そういえば……二人は恋人?」
服屋に向かう途中、麻穂は突然二人に質問をした。
その質問に対して、二人はそれを頭で理解する前に首と口が同時に動いていた。
「違う!」
「違うです!」
一寸の狂いもないタイミングで同時に叫ぶ二人。
その勢いに、麻穂は少し驚いた表情になっていた。
「そうなの? 二人共仲良いからそう見えちゃった、ごめんなさいね」
笑顔で二人に謝る麻穂。誰もが惚れるといわれているこの笑顔で謝れたら、反論する気にもなれない。何となく麻穂がクラスのアイドルになった理由がわかった新次郎。
そんな感じで会話が続いていると、いつの間にか三人は目的地である服屋にたどり着いていた。
「うわぁ……服がいっぱいあるのです!」
ここは、このデパートの中でも群を抜く程の種類豊富な服屋であり、学生達が数多く出入りしている人気スポットでもある。端から端まで服だらけであるこの店は、普通の人でも平均一時間以上は買うのにかかるとさえ言われている。ロリ子が目を輝かせながら食いつくのも無理は無いだろう。
「ロリ子ちゃん、どんな服が好きなの?」
早速服を選ぼうとする麻穂。こういう時、女子がいると本当に楽だ。
「あ! この服可愛いのです! こっちのも色がいいのです!」
「んー……、これだと組み合わせるとしたら青かな、でもロリ子ちゃんだったらもっと可愛らしい色の方が……」
早速女子同士の世界に入り込む二人。こうなってくると、新次郎の入り込む隙は全くと言っていいほど無い。
正直、新次郎はいつロリ子が無駄なことを口走るか心配していた。一応ロリ子はイギリスからの留学生という設定なのだ。無駄に「狩猟神一族」なんて言おうものなら、疑いがかけられるかもしれない。
しかし、その心配は杞憂なのかもしれない。楽しそうに麻穂と会話しながら服を選んでいるロリ子を見ていると、なんだか普通の人間の女の子に見えてきて、すごい微笑ましい。
「よし、じゃあロリ子ちゃん、これを試着してみよう」
「はいです!」
見ると、どうやら服を選び終えたようだ。麻穂から服を受け取ったロリ子は、すぐさま着替えようと着ていた学生服のスカートを脱いだ。ストンと真っ直ぐに落ちるスカート。その奥から、真っ白なロリ子の下着が遮る物を無くしてあらわになった。
「ぶっ!」
「ちょ! ロリ子ちゃん!」
突然の出来事に息を噴出す新次郎と、慌てて完全に露出しているロリ子の下半身を見えないように遮る麻穂。その俊敏な動きは、一流のスポーツ選手でも度肝を抜かれるほどの瞬発力が発揮されたに違いない。
「どうしたのですか?」
当の本人は、自分の下着が完全に見えていても全く気にしていないようだ。隠すような素振りも恥ずかしがるような素振りも一切無い。これではまるで露出狂だ。
「ロリ子ちゃん! 試着は試着室で! ここで着替えちゃダメ!」
「? 何でですか?」
「なんでも!」
まだよく状況を飲み込めていないロリ子。
周りを見渡していると、他の客が突如の出来事に口をあんぐりと開けている。男子諸君にいたっては顔が真っ赤だ。それは無論、新次郎も例外ではない。
「さ! さっさと着替えてこい!」
「ほらロリ子ちゃん! とりあえずスカートはいて!」
後ろを向いて顔が赤いのを隠す新次郎。
その新次郎を後ろに、麻穂はすぐさまロリ子にスカートをはかせて試着室へと引っ張っていった。




