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「納得いかないのです! 何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのですか!」
リビングで新次郎に詰め寄るロリ子。その姿はボロボロであり、先ほどの爆発による被害がどれほどだったのかを物語っている。何故あの爆発を受けて何故生きてるのか、という疑問はこの際放っておく、
「大体、何で私の爆弾を勝手に持ち出すですか!?」
「お前がリビングに置き忘れてるから悪い」
そう、新次郎が飴玉爆弾を見つけたのは、偶然リビングにそれがあったからなのだ。新次郎はそれをすぐさま拝借し、あらかじめ用意していた人形に忍ばせていたというわけだ。
「それに! 何で私が寝込みを襲うってことを知っていたのですか!? まさか私の部屋に盗聴器でも仕掛けたのでは、ギョム!」
「あれだけ風呂場で叫んでいれば嫌でも聞こえるんだよ」
相変わらず笑っていない目でロリ子の頬を掴む新次郎。
昨日、ロリ子がお風呂に入ってる時、新次郎の耳に「寝込みさえ襲ってしまえばこっちのものなのです!」と叫んでいるのが聞こえた。それによって、新次郎は事前に対策を打っておくことが出来た。
「ギュムムム! 敵に作戦を悟られるなんて油断したです!」
「お前はいつも油断しっぱなしだろうが」
新次郎は呆れたように言うと、ロリ子の頬から手を離してキッチンに向かった。いつものように、朝ごはんを作るためだ。
「とりあえずお前は着替えてこい。ボロボロの服で食卓にあげるわけにはいかないからな」
そう言うと、ロリ子はちょっと考えてから新次郎にきっぱりと言った。
「服はこれしかないのです!」
「………………」
新次郎は呆気に取られたような表情で固まった。
対してロリ子は、服がこれしかないのを誇りにすら思っているように見える表情でいる。
「そんな何日も滞在するわけじゃないのですから、着替えなんか持ってくる狩猟神一族はいないのです!」
当たり前のように言うロリ子だったが、新次郎は信じられないと言った表情でしばらく動けないでいた。
「……じゃあ、それ一着しかないってこと……なのか?」
「はいです!」
屈託の無い笑顔で返事するロリ子を見て、再びため息をつく新次郎。
そんな新次郎の頭の中では、二つの意見が戦っていた。
その一つは、学生服を着せることだった。一応、ロリ子には普段着以外にも学生服が一着だけある。
しかし、まさかロリ子がそのままおとなしくしているはずも無いだろう。学生服まで汚されたら最悪、下着で家の中をうろつかせることになってしまう。
「……仕方ない、行くしかないか」
新次郎の頭の中で、二つの意見の戦いの決着が着いた。
「うわぁ! 広いのです!」
ロリ子は、天井の高さと目線の先に広がる巨大な空間、そしてその中をたくさんの人が行き交う光景に驚きながらも目を輝かせていた。
「おいおい、あまり大声出すなよ」
その後ろで、今にもはしゃぎだしそうなロリ子を制する新次郎の姿があった。
「すごいです! 人間界のデパートって色んな物があるのです!」
ロリ子は周りにある様々な店に目移りしている。その様子は、買い物を楽しんでいる普通の女の子に見えてしまう。
ここは、新次郎が住んでいる所から最も近いデパートだ。服や小物などの店が軒を連ねる巨大デパートであり、新次郎の通う学校の生徒がよく利用していることでも有名だ。
新次郎が出した結論。それは、「ロリ子に普段着を買ってあげる」だった。予備の服が何着かあれば、多少汚されても安心だろうと思い、新次郎は服を買うためにここにやってきたのだ。
しかし、これには致命的な障害があった。
「さてどうするか……、服なんか選んだことないし……」
それは、新次郎自体がファッションに疎いことだ。服を買うときは機能性やどれだけ長持ちするかに重点を置く新次郎にとって、狩猟神一族とはいえ女の子であるロリ子の服を選ぶなど到底出来ないことだった。
しばらく頭を悩ます新次郎。
「聖也に相談……は出来ないな」
新次郎は聖也のことを考え、苦い顔をしながら首を横に振った。
確かに聖也は自分よりもファッションセンスはあるだろうし、女子の服を選ぶことは得意技のはずだ。しかし、問題はそれがロリ子であることだった。ただでさえ欲求の塊みたいな男に人間界の服に疎いロリ子。下手をすれば、黒と白のフリフリの服を着ながら「いらっしゃいませなのです! ご主人様!」なんて言うロリ子の姿を見ることになる。それだけは避けたいと思うし、同居している自分に変な噂が流れないとも限らない。
「さぁて……どうしたものか……」
再び頭を悩ます新次郎。
当てになりそうな女子の友達もいなければ、母親に聞くことも出来ない。完全に八方塞だ。
「……あれ?」
突如、新次郎の後ろから声が聞こえた。




