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第四話 戯志才と夏侯惇 前編

 戯志才が曹操達の家庭教師になってから一月半程が経ち、週に一回ほどのペースで行われる授業もいつもの風景になっていた。

 そんなある日のこと。

 一つの区切りとして、戯志才は曹操達に試験を出した。

 数学・歴史・語学のような基礎から、果ては軍学・司法までという浅く広くの問題を書き込んだテストであり、ある意味で初のまともな授業でもあった。

 中には大学の学者でもなかなか解けない様な難問も混じっていたりするという極悪仕様のテストではあったが、戯志才は三人の学力をようやく測ろうと思ったらしい。

「・・・時間ですので筆をおいてください」

 カタンカタンと筆をおく音がするが、戯志才は音が一つ少ないことに気がつき一人一人見回した。

 曹操は余裕を持って、夏侯淵は何とかギリギリといった様子で筆をおいている。

 夏侯惇は頭から煙を上げて完全にオーバーヒートして固まっていた、戯志才が肩ごしに解答欄を見るとどうやら四則演算の複合式で脳の処理が追いつかなくなったらしい。

「元譲殿?・・頭から煙が上がっていますが大丈夫ですか?」

「姉者・・・姉者!」

「はっ!私は一体何を!?」

 夏侯淵が肩を強くゆすると夏侯惇は再起動した、前後の記憶が無いらしい。

「・・・予定通り一つ一つ答え合わせをしていきましょうか」

 戯志才はとりあえず見なかったことにした、なぜかここで混ぜっ返すと永遠に終わらない気がしたのだ。



 十数分後、わざと用意した難問以外は戯志才が丁寧に解説つきで問題を解いていった。

「一通り終わりましたが、何か質問はある方は?」

「むぅ・・・先ほどのあの計算なのだが、どうしてあんな簡単に解けるんだ?」

 夏侯惇がオーバーヒートした計算問題を、戯志才は一つ一つ計算の順番を教えて夏侯惇に解かせていたのだが、解法がするりと出てくることが不思議でならないらしい。

「複雑に見えますが、順序よくやれば元譲殿も出来たではありませんか」

 用は慣れの問題だと言いたいらしい、夏侯惇はしぶしぶながらそれを受け取っていた。

「他に質問は・・・・とくになさそうですね、では感想でも聞きましょうか」

 戯志才はいつもどおりに授業での感想を聞いた、戯志才が各自の傾向の補填のために始めたのだが、なかなか面白いと恒例になっている。

「そうね、貴方の授業は毎回破天荒で面白いわ。前回の農家で畑を耕すなんて貴重な経験だったし」

「前々回は王宮で使うの礼儀作法など、興味深い事柄を教わりましたね」

 曹操も夏侯惇も貴重な経験だったとしきりに頷いている。

「今回の試験も復習を兼ねながらきっちりと挑戦状というべき問題を入れている。私の能力を試しているかしら?」

「ただの罠問題でしたが、それを解かれたのはお見事でした」

「さすが華琳様!戯志才の問題など全てお見通しだったのですね!」

 難問は解いてしまった曹操を褒める戯志才と、それを我が事の様に喜び褒めまくる夏侯惇、曹操もまんざらではないらしい。

「ですが孟徳殿、今回はあまり増長なさらない様にお願いします」

「なぜだ!凄く難しい問題が解けたのは凄いことなんだろう!?」

 普段諌める事をしないような戯志才が今回に限って曹操を諌め、夏侯惇はそれに食らいついた。

「やめなさい春蘭、戯先生は私のために言ってくれた言葉よ」

「ですが!困難を成したのなら喜ぶべきでしょう!」

「まぁ姉者、少し落ち着け」

「秋蘭まで戯志才につくのか!」

 曹操と夏侯淵が抑えようとしたが、それを裏切りと解釈した夏侯惇には火に油を注いでしまったらしい。

「元譲殿、これは「戯志才なんか大嫌いだぁぁぁぁぁ!」・・・ああ、行ってしまった」

 戯志才が説明しようと声をかけたのだが、夏侯惇は泣きながら部屋を出て行った。

「あら、戯先生が春蘭を泣かせてしまったわね」

「孟徳殿、そんな楽しそうにしていないで下さい」

「だってこんな難問を戯先生ならどうやって解決するか楽しみで仕方ないもの」

 戯志才がどうしようかと悩んでいると、曹操は笑顔でそんなことを言った、単に戯志才を弄って楽しみたいらしい。

「まぁ、姉者なら二・三日もすればいつもどおりになるとは思いますが・・・」

「でも女の子を泣かせたのだから相応の対応が必要よね、たとえばそう・・・贈り物とかね?」

 戯志才の救援を求める目線に夏侯淵が助け舟を出す。しかし、それを曹操が遮った。

 彼女はさらにハードルを上げるつもりらしい。

「はぁ・・・贈り物ですか?」

「ええ、あの娘も色々不満があったみたいだしそれも一緒に解決してもらえると嬉しいわね」

 戯志才は止まるところを知らない曹操の要求に対し、夏侯淵に救援を求めたが目が「無理」と言っていた。

「・・・とりあえず、もう授業にならないので授業はここまでにしましょう」

「では戯先生、次回までにお願いしますね?」

 曹操の希望は次回の授業までらしい、戯志才はどうした物かと思いながら手早く曹操から離れるために帰り支度をしているのであった。

前・中・後の三篇になりそうです、中はまたそのうちに


誤字修正および、千切れているのを直しました。

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