プロローグ
好奇心、猫をも殺す、という格言がある。
なんとも物騒な言葉で、私はあまり好きではないが、研究者としてある程度の理解は示したいと思う。本論文にこれから目を通すだろう読者諸君にも覚えがあるだろう。
知りたいという欲求、そして知った、ということに対する満足感というのは、研究や勉学のモチベーションとして大変重要なところに位置していると考える。
「位相世界とその境界線上における空洞化現象」という、机上の空論と揶揄され、まるでSF映画のような研究テーマに好奇心を持ったことこそが、思えば私が研究者として歩み始める最大の動機だったように思う。
話を戻すが、猫=人と定義してしまうなら、好奇心は人を殺す、という関係が生まれてしまう。
好奇心というのはそれほどの力やエネルギーを持っているとも思うし、私の知る二人の人物を思い出すに、好奇心というのは生きるために絶対に必要なものだと結論できる。
その二人の共通点として、私が出会った当時に好奇心という概念を持ち合わせていなかったという所がある。私達が成長の中で学習している、知る、という喜びを彼らは覚えることなく生活していたのだ。
思えば出会った当時、彼らは生きていなかった。
好奇心という感情を抱くと共に、初めて人としての生を授かったといっても過言ではないだろう。
最後に、私に好奇心というものを改めて意識させてくれた二人の知人に謝辞を述べると共に、読者氏にも私が至った答えを少しでも体験してくれたらと切に思う。
20XX年 「位相世界とその境界線上における空洞化現象」序論より一部抜粋
さて、始まってしまいました。
夏休みの宿題の如く、一日集中連載の、短編。
空想科学祭2011の参加作品です。理想は昼すぎ、夜、の更新にて完結です。ええ、目処は立っていますが、現在絶賛作業中です。
連載モノですが、短編ぐらいの長さ……(約1千文字ちょっとの予定)で終わりますので、よろしければ、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。