音楽は言葉より先に【詩】
いつだって 言葉より先に 音楽がやってきた
メロディや ハーモニー リズムの断片が
音階という言葉を教わるより先に
ドレミファソラシドの疾走が
和音は仲良し
不協和音はけんか
対旋律は
右と左の追いかけっこ
付点はスキップ
シンコペーションのメロディは
一段とばしの階段
カデンツにいたれば
優雅におじぎしたくなる
言葉にならない音の動きに
名を付け言葉を与えた人たちは
そして輸入し翻訳した人たちは
どういう願いをこめたのだろう
形にならない
水のように 風のように 明暗のように
そんなものに 枠をあてがい
理解を深めようとする
途方もない歩み
それ自体が祈りの歌なのではなかろうかと
低音進行の中に現れるテーマと
ソプラノでちろちろ光るテーマの結びつき
主題から展開し再現に至る
それ自体が物語なのではなかろうかと
いつだって音楽は時間の向こうへ飛び去って
ひとを置いてけぼりにする
その印象をとどめるために
選ばれた言葉たち
音符と指示記号の詰まった楽譜
記憶しようとするひとの努力の尊さ
それ自体が物語なのではなかろうかと
いつだって 言葉より先に 音楽がやってきた
そして ひとを置いてけぼりにして 過ぎていく
水のように 風のように 明暗のように
残った印象をかたちにしようと
言葉をひねりだす その道のりが物語




