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異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない  作者: 葉泪 秋
聖地決戦編

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116/120

112 君に捧げるスローライフ

「姉様あああああああああああっ!!!」


 レイナだった。

 彼女は、女神の威厳も何もかもかなぐり捨て、アレアの元へと殺到し、その身体に思いっきり抱きついた。

 

「会いたかったです……うぅ……! 寂しかったんですからぁああ!」

「れ、レイナ……? く、苦しい……です……。それにあなた、少し太っ……」

「何も変わっておりませんッ!!」


 五百年ぶりの再会は、涙と笑いで渋滞していた。

 その人間臭い光景に、これまで戦場に張り詰めていた極度の緊張の糸が、ぷつりと切れた。

 最初に吹き出したのは、ラズだった。


「ぶはっ……! なんなんだ!? 女神ってのはどいつもこいつも、こんなんばっかなのかよ!」

「おいラズ! 女神様への敬意ってもんが……ぶっ……」


 ラズに注意するはずだったシェルカも、堪えきれず吹き出していた。

 その会話が、引き金となった。

 バルハが、ザルクが、腹を抱えて豪快に笑い出す。

 リオンやガランも、肩を震わせている。

 張り詰めていた空気が、一気に解けていく。


 アレアは改めて俺に向き直ると、俺の魂と繋がったことで、俺が「佐久間遼」として生きてきた人生と、その苦しみ、そして優しさを全て理解した上で、深々と頭を下げた。


「ありがとう、カイ。そして、ごめんなさい、佐久間遼。私の力が、貴方に重すぎる運命を背負わせてしまいました」


 妹がこれ以上苦しまないように怒るミリスと、妹に代わって頭を下げるアレア。愛の形はそれぞれだが……やっぱり大切にされてるじゃないか、レイナ。


「あんたのおかげで、俺は最高の仲間たちと出会えた。だから、感謝してるくらいだよ」


 俺たちの間に流れる、穏やかな空気。

 その光景を、フィオナが少しだけ寂しそうに、しかしどこか誇らしげな笑みを浮かべて遠くから見つめていた。


「……ふふ。貴殿はやはり……女神に愛される運命にあるようだな」


 そのつぶやきに、俺は気づいた。

 女神たちに一言断ると、まっすぐに彼女の元へと歩み寄る。

 

「ああ、全くだ。どう頑張っても、女神からは逃げられない人生らしい」

 

 俺は彼女の目を見つめ、真剣な声で言った。

 そして、その手を優しく握る。

 ……そうだ。もう、素直になっていいんだ。還し手との戦いが終わるまでは、決して口に出さないようにしていたこの想いを……伝えていいんだ。


「……でも、フィオナ。あいつらは、俺の心と繋がることはできても……俺の心を、奪うことはできない」

「俺の心を奪えるのは、この世界でたった一人。──フィオナ、君だけみたいだ」


 それは、俺がこれまでの人生で口にした、最も不器用で、最も真っ直ぐな愛の告白だった。

 フィオナの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。


「……馬鹿者。……言うのが、遅い……」


 彼女は、俺の胸に、その身を預けた。

 その瞬間、背後から野太い歓声と、盛大な拍手が沸き起こった。


「ヒューヒュー! やるじゃねぇか、旦那ァ!」

「見事だ、カイ殿! それこそが王の器よ!」


 ラズが囃し立て、バルハが豪快に笑う。

 ……ウザすぎる。

 フィオナは、真っ赤になって顔をうずめた。


「……二人の女神に愛されながらだなんて、貴殿は本当に……大した浮気者だ」


 俺は、そう言う彼女を、力強く抱きしめた。

 その、祝福の輪から少し離れた場所で、一人の男が、静かにその光景を見つめていた。

 ノアだった。 

 気まずいのか、少し仲間たちから距離を置いているようだ。

 彼は俺の元へと歩み寄ると、不器用に拳を突き出した。


「……お前にベットして、正解だったぜ。カイ」

 

 俺も、最高の笑顔で、その拳に自分の拳を突き合わせた。


「ああ。ありがとよ、ノア」


 その瞬間、リオンが感極まったように大声で叫んだ。


「さっすがカイ殿!!! いや、私は元から、貴方が世界を救い、最高の伴侶を得ることも、全て信じておりましたとも! ええ、ええ、全て私の計算通りです!!」


 その、あまりの調子の良さに、全員が爆笑する。

 世界の危機は去り、全ての謎は解き明かされ、そして、一つの恋が成就した。

 これから始まるのは、世界の平和を守りながらも、ちょっと騒がしい女神たちと、最愛の人と、最高の仲間たちに囲まれた、騒々しくも愛おしい日々。

 それこそが、俺がようやく手に入れた、真の「スローライフ」。

 聖地に昇る新しい朝日が、俺たちの輝かしい未来を祝福するように、世界を照らし出していた。

リアクションや感想が増えており、とても嬉しいです!

完結も近いですが、今後ともよろしくお願いいたします!

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