第11話 ラーゲルクヴィスト領での生活 その1
「昨日はどちらの組もお楽しみでしたね?」
「朝っぱらからから何言ってやがる」
翌日、ラーゲルクヴィスト家の離れのダイニングにて食事してるとソフィアがアストリッドとクロウ(雇用主がラーゲルクヴィスト家に移ったので順当)を伴って現れたかと思えばそう告げてきた。
「ふふふ、ヴァリアベル教の教えでは『他者に害なさぬなら思うことは自由』と『双方の納得なら愛の形は自由(娼人は仕事のためほぼ除外)』というのがありますので……」
オレとイオリを見たりしてニコニコ。
ちなみに部屋割りは宿時代(オレ、イオリ、由奈、リエル、アリーシャの組と恭二、魅音の組)と同じである。
「代わりに限界まで寛大なそのライン超えてると発覚した場合、信徒ならジャッジメントによる裁判の後投獄されて死刑か鉱山奴隷になり、異教徒ならその宗教に告発からの様式美化した宗教論争が起きて、基本実行犯が異教徒から破門されますね」
「……例外があるみたいな言い方だな?」
イオリが問いかける。
「たまにそれを是とする宗教があって庇い立てしますので……その場合は戦争ですね。この場合ジャッジメント配下のゴーレムなども戦争に参戦するのでヴァリアベル教は背信者や罪科持ち抱えた宗教との戦争では負けたことはありません」
「怖っ!」
宗教でちょっといざこざ経験ある恭二が叫ぶ。
「……あら? ジャッジメントは罪犯したのを確認したら即座に本体、あるいは代行が現れて裁きを行うと思っていたのですが……」
魅音が疑問を投げかける。
「……ああ、転移者の方々はご存知無いのも当然ですね。 ジャッジメントによる『常時庇護と監視』対象になるのは『冒険者、商人、職人などのヴァリアベル教と特殊契約を締結している公的ギルド加入者、ヴァリアベル教の司祭以上の権限持ち、または特殊都市領土の市民契約締結者』になりますので……。」
「……この世界の住人全員じゃないのですね」
魅音は不思議そうな顔をした。
「ええ。それ以外はヴァリアベル教の司祭以上の方が女神に要請を行うことで代行者が喚ばれ、要請に沿って調停や罪科の裁判を行われます。ヴァリアベル教がこの世界で最も信仰されて居るのは他の追随を許さない女神の恩恵があるからです」
でも戒律破らなければ他の宗教にも入ってて良いので、と付け加えるソフィア。
締めるところ以外割と緩い宗教だが、そのくらいの方が反発とかしないだろうし良いのかもしれない。
「さて、皆さん本日から正式にラーゲルクヴィスト家の食客として自由に過ごされていただいて構いませんが……」
食事を終えたオレたちにソフィアが問いかけてきた。
「ダンジョンで(主に戦闘職ジョブの)レベル上げだな」
「ですよね……」
あはは……と苦笑いのクロウ。
「しかしジョブのレベルは皆さん商人で既に30近く……なのに個人のレベルがまだ1なんですね……」
「普通ジョブが戦闘経験で10まで上がっているなら本人のレベルも2か3くらいになっててもおかしくないのだけど……」
ソフィアとアストリッドは首を傾げる。
「そこんところはオレらの転移特典……ってことにしといてくれ」
まあ、戦闘経験がテリオス第16迷宮の第1層のみ、期間等も加味するとレベル1が妥当である。
むしろ戦闘以外でも経験値が稼げる商人とはいえ、この短期間でジョブのレベルが30ある方がイレギュラーなのだが……まだ教えるほど信用してるわけではないのではぐらかす。
「本人のレベルが上がらないのは特典ではなく呪いの類な気が……」
ソフィアがうーん、と困り顔。
「その分レベルが上がった時伸びしろがある……と良いのですがね」
アリーシャが複雑そうにそう零す。
「この大陸東側をほぼ支配している千年の歴史を持つ帝国の現皇帝にして初代皇帝も遅咲きだったと言いますし……皆さんも大器晩成なのかもしれませんね」
ソフィアがフォロー?するようにそう告げた……。