第2話 初めての戦闘
「頼むぞ!お前だけが頼りだ!」
健の声に応えるように、狼は低く吠えると、一直線にバグベアへと駆け出した。その鋭い動きに、健は思わず息を呑む。
「す、すげぇ…本当に戦ってくれるのか…!?」
狼は飛びかかるようにしてバグベアの足元を狙い、牙をむき出しにして噛みつく。バグベアは怒り狂ったように手を振り回し、狼を振り払おうとするが、その動きは意外と鈍い。
「今のうちに…俺も何かできるはずだ!」
周囲を見渡すと、地面に転がった石が目に入った。健は咄嗟にそれを拾い上げ、過去の野球経験を思い出しながら、投げる準備をする。
「狙いは…背中だ!」
健は深呼吸をして腕を振りかぶる。野球部で鍛えたフォームで全力で石を投げつけた。空気を切り裂く音とともに、石はバグベアの背中に命中した。
「よし!当たった!」
バグベアは苦しそうに一瞬動きを止める。しかし、すぐに狼に向かって大きな爪を振り下ろしてきた。
「危ないっ…!避けろ!」
狼は鋭い動きでバグベアの爪を避け、再び後ろに回り込むと、その脚を噛みついた。バグベアは大きな体を揺らしながら、バランスを崩してよろける。
「い、今だ…もう一発!」
健は再び石を拾い上げ、今度はバグベアの頭を狙った。
「うおおおっ!」
力任せに投げた石は、見事にバグベアのこめかみを直撃。バグベアは低いうめき声を上げ、そのまま地面に倒れ込んだ。
「倒れた…!?やったのか…?」
健は息を切らしながらも、目の前の光景に信じられない思いで立ち尽くしていた。倒れたバグベアのそばに立つ狼が、こちらを振り返って小さく吠える。
「す、すげぇ…本当に勝てたんだな…!」
その瞬間、ウォッチが音声を発した。
「クエストクリア!報酬:ゴールド×10、経験値×50」
「ゴールドと経験値…?本当にゲームみたいだな。」
健は肩で息をしながら、目の前の画面を見つめた。そして、ウォッチの次の指示に気づく。
「回収モードを使用できます。モンスター:バグベアを回収しますか?」
「回収…?モンスターを回収できるのか?」
健は半信半疑で「回収する」を選択すると、バグベアの体が光に包まれ、そのままウォッチに吸い込まれていった。
「おお…本当に回収できた!」
驚きと興奮が入り混じる中、健はウォッチを見つめながら呟く。
「これ…思ったより便利すぎるぞ…!」
その時、健の足元に寄ってきた狼が、じっと彼を見上げた。その瞳には、不思議な知性を感じる。
「お前…ありがとう。本当に助かったよ。」
狼は嬉しそうに尻尾を振り、小さく吠える。その姿に、健はふと思い立った。
「そうだ、お前に名前をつけてもいいか?なんかこう…相棒みたいな感じだし。」
狼は健の言葉に応えるように首をかしげる。健は少し考え込んだ後、手を打った。
「よし、お前の名前はレオンだ!これから一緒に頑張ろうな。」
レオンと名付けられた狼は、しっぽを振りながら健の足元に頭を寄せてきた。その仕草に、健の口元も自然と緩む。
「レオン、頼りにしてるぞ。」
その時、ウォッチが再び音声を発する。
「召喚したペット:レオンのデータを登録しました。今後、いつでも召喚可能です。」
「なるほど、召喚って形なら、必要なときに呼び出せるってことか。」
健はウォッチを操作しながら、レオンの存在が心強く感じられるのを実感していた。
「これから、どんな敵が出てくるか分からないけど…レオンがいればきっと乗り越えられるよな。」
レオンは健の声に応えるように吠え、再び前方を見据えた。その姿に、健は改めて決意を固めた。
「よし、次は地図に表示されてる町に向かうか。冒険の始まりだな!」
健とレオンは、新たな冒険の一歩を踏み出した。