前へ目次 次へ 21/94 第1話 宅配司書と作家志望 ⑳ 深々と女が一礼すると、呆然としたような沈黙があたりを包み込む。 婚礼という場で、通念から外れたものについて語るなど、非常識とはいわぬまでも、ちぐはぐではないか。 そんな疑念が人々の脳裏を過ったのは一瞬だった。 思わずというように二、三の拍手が零れ。 その後続いた喝采。 それはあたりが明るくなると、ぴたりと止んだ。 物語の最大に仕掛けに、人々は気が付く。 照明のあたった高砂席からは、花嫁の姿が忽然と消えていたのだ。