【02 枯チューと僕】
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・【02 枯チューと僕】
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枯チューとのネタ合わせ。
ネタは枯チューが僕にお題を振って、それに僕が答えて作っていくスタイル。
日本という国のお笑い芸人さんはどちらか一方がネタを書くことが多いらしいけども、僕たちの世界ではこれが一般的だ。
それぞれのキャラクターを重んじる傾向があるので、コントだとしてもそのキャラクターらしさが無ければ低評価になりやすいのだ。
とは言え、僕たちは漫才師なので、そのまま喋っていればネタが作れるので簡単ではある。
「じゃあこんな感じでいいかな」
二時間くらい喋り合ったのち、枯チューがそう言った。
最後にネタを整える作業は枯チューがしてくれる。
この辺りは任せっきりなので、申し訳無いなと思っていると、枯チューがふとこんなことを言い出した。
「最後に雑談だけどさ、ニコの願いって何?」
「やっぱり、本当の笑顔になりたい、かな」
「まあニコと言えばそのキャラクターだけどさ、俺はマジなほうを聞きたいんだ」
それに対して僕は口ごもってしまった。
何故なら本気でそう思ってしまっているから、と正直に話そう。
「僕は本気でそう思っているよ、本当の笑顔になりたくて仕方ないんだ」
「やっぱりニコって変わってるよね、なんというかこの世界を楽しみきっていないというか」
そう言ってテーブルに置いていたペットボトルのお茶を飲んだ枯チュー。
飲んでいる姿をなんとなくじっと見つめてしまうと、枯チューが、
「こんな訳分からない世界、楽しんだもん勝ちだと思うけどね」
「僕もそう思いたいから本当の笑顔になりたいんじゃないか」
と少し強い口調で言ってしまい、ハッとした。
何か喧嘩になりそうなトーンで声を出してしまったから。
僕は慌てて、
「それよりも枯チューの本当の願いって何だいっ?」
と言うと、枯チューは優しく笑ってから、
「空気を急いで変えようとして、じゃないんだよ。全然気にしてないよ、というかニコの良いところだもん。そういう異質なキャラクターが。それは保つべきだと思うよ」
「いやだから僕は本当の笑顔になりたいんだよ、最終的には」
「まあそうか、そりゃそういう話だもんね。でもそれを貫く姿勢は本当にカッコイイと思うよ」
「カッコイイって……あえてバカなフリして愚直にやっているならカッコイイけども、僕はマジ中のマジなんだって」
何だこの言い訳、と自分で言いつつ思ってしまった。
枯チューは僕がなりたいような屈託の無い笑顔で、
「何はともあれ、俺は最高の相方と組めていると思っているよ。きっと優勝できる。だから本当の笑顔になれると思うよ」
「それならいいんだけども……って、そうじゃないよねっ、僕も枯チューが相方で良かったよ」
「そうなると言わせたみたいになっちゃうから」
「いや本当に」
僕が少し早口にそう言うと、
「まっ。大会は長そうだからゆっくりやっていこう。今日のネタ作りはこれくらいにして、一分ネタに仕上げるからそれで後日動画撮って投稿しよう」
そう言って立ち上がった枯チュー。
本当にできた相方だと思う。
こんな僕のことを受け入れてくれているし、何よりも芸に真面目だ。
枯れたチューリップが好きというキャラクターだけが謎だけども、それ以外は人格者だと思っている。
でも枯チューはこの世界にあまり疑問を持っていないらしい。
いやむしろ持たないようにしているといった感じかな?
僕も本当はそんなこと気にせず、みんなでワチャワチャしていれば、本当の笑顔になんてすぐになれるのかな?
でも僕は心の奥から本当の笑顔にはなれないんだ、何でなんだろう。
まるで神様から決められたキャラクターのように、僕の顔にへばりついている。