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57話 ひきつがれる思い

「お姉ちゃん、それのこと言ってなかったと思って来たんだけど」


振り返ると、扉付近に美菜が立っている。


「……もしかせんくても、これ、美菜が使ってるん?」

「うん。私の練習用にちょうどいいサイズやったから。あかんかったかな?」


希美は強く首を横に振った。


「でも、これ捨ててたんやないの?」

「ううん。お母さんに聞いたら、倉庫に置いてたんやって。いつか、お姉ちゃんが使えるように、って」

「そんなん聞いてへんよ、うち」


だめだ、また目が潤んでしまう。


「言ったらお姉ちゃん無理するやろ。やから、お父さんが隠したんやって。……あのな、お姉ちゃん」

「どうしたん、改まって」


声が掠れるのを誤魔化して、姉の体裁を保つ。


「私さ、昔お姉ちゃんに憧れててん。いつも料理にひたむきで、一生懸命で。私が一人やったら、とてもそこまでできへんってところまでストイックにやる」

「……そんなこと」

「ううん、一人やったら絶対無理や。私、忍耐力ないもん。……でもね、この冷蔵庫使ってたら、変に思うかもしれんけど、お姉ちゃんと一緒に料理してる気になれてさぁ。今は、めっちゃやる気になってる」


美菜は、ぱちんと両手を合わせて目を瞑る。


「やから、もう少し貸しといてくれへん? お願い!」


そんな彼女を前に、希美はただ息を呑んだ。


美菜がそんな風に思ってくれていたとは、初めて知った。

そんな彼女を羨ましがって、避けてきた自分が恥ずかしくなった。


希美は妹の身体を引き寄せる。


「ちょっ、お姉ちゃん? どうしたん。うわ、泣きすぎやろ」

「しゃあないやんか。ごめんな、ありがとうな、美菜」

「ね、冷蔵庫は使ってもえぇの?」


彼女が若干戸惑いの色を見せつつ尋ねたのに、希美は渾身の力で頷いた。



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