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39話 驚きの事実

はたしてそのわけは、すぐにはっきりすることとなる。


鴨志田の車に乗せられて帰社してすぐ、希美は、ダッグダイニング株式会社のホームページへとアクセスしていた。


画面が目に入ったらしい鴨志田に、なにしてんだと訝しまれて、


「どうせお店の問題に関わるんです。せっかくなら、悪の根っこから対処したくて。でも、私たちじゃあ岡さんの意識を変えるには力不足。だったら、昔なじみの会長さんにおでましいただこうってことで、連絡を取りたいんです。そんな人が出てきたら、犯人の特定に近づくことも間違いなしって寸法です!」


希美は胸を張って考えを披露する。


ワゴンを盛大に打ち付ける音が、部屋の一番奥で鳴った。佐野課長が席を外していた分、鮮明に聞こえる。


「き、木原くん。少し落ち着こうよ、ね? そんな偉い人が出てきてくれるわけないだろう。ここ数年はほとんど表に顔出してないんだしさ」


早川部長が、膝をぶつけたようだ。

さする両手さえ震えているから、明らかに取り乱している。


「ねぇ、どうにかしてくれよ、鴨志田くん~」


その懇願が向いた先は、なぜか希美ではなかった。お門違いに縋られた鴨志田は、つっけんどんに言う。


「ホームページ見たって会社の代表電話しか載ってねぇよ、後輩」

「わかってますよ~、それくらい。でもほら名前をちゃんと調べたら、今はSNSとかもありますし!」

「そんなのやってねぇよ、あいつは。もう七十後半なんだぞ」


自分の会社のトップに向かって、随分と失礼な口を聞くものだ。そう思いつつも、希美は、『取締役・名誉会長の挨拶』欄をクリックした。


考えてみればこのページを見るのは、新入社員研修以来だ。


そこには、トップ二人による料理屋営業への熱い思いが、長文で綴られていた。それに胸を熱くしつつ、ページ下部にあった署名欄を見て、マウスが動かなくなった。


「……鴨志田名誉会長…………?」

「それがどうした」

「いや、取締役はよく知ってるんですけど。名誉会長の名前が、鴨志田って、鴨志田さんと……あーえっと、先輩と同じだなあと思って」


こんな偶然もあるものだろうか。そもそも、中々遭遇しない珍しい苗字だ。


「なに言ってんだ、後輩。そんなの当たり前だろ」

「え? 当たり前?」


「……もしかして、本当になにも知らずに今までいたのか?」

「な、なにをでしょう?」


口をぽかんと開ける二人。知らないのは、希美だけらしい。


「俺は元取締役社長で現名誉会長・鴨志田聡さとしの孫養子なんだよ」


真相を教えてもらったら、今度は希美の口が塞がらなくなった。

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