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18話 「店舗円滑化推進部、思ったよりいいじゃん」



一週間後、『創作和食ダイニング・はれるや』から嬉しい連絡が入った。


ランチの売り上げはあれ以来、高水準をキープし、夜営業にもいい影響が出だしたのだそうだ。炎上もすっかり収まり、例の社員も、改心してまじめに働いてるらしい。


店への処分も、一転取りやめになった。


誰が広めるものなのか。その噂は、瞬く間に社内で広まっていた。その日から希美は、よく知らない顔の同僚にも、おっスーパーバイザー! などと呼び止められ、


「店舗円滑化推進部、思ったよりいいじゃん」


こんなふうにお褒めの言葉をもらうようになった。


希美はおもばゆい思いはありつつも、都度、「はい!」と胸を張る。


影響は、希美個人の話だけにとどまらなかった。

本部直営店のオープン準備にも、よい形で現れたようだ。


「他の部署が、木原くんのいる部署なら、って早めに案を上げてくれてねぇ。おかげで調整する手間が減ったよ」


早川部長は、炎上騒ぎがあった時とは正反対、柔和に笑う。


だが、上司として誇りに感じでいるというよりは、仕事が減ったことそのものが嬉しいらしい。


昼休み明けも、草いじりに熱が入っていた。よく見れば鉢植えが一つ増えて、五つになっている。


……なんだか喜びきれない。でも、佐野課長よりはマシだ。


彼女は朝から、希美を見るや舌打ちを繰り出して、あとはそっぽを向いたままだった。


やはりこの部は、問題のある人が多い。もう一人の男も含めてだ。


「よかったな、スーパーバイザー」


鴨志田は、背もたれに頭をもたげて、希美の顔を下から見上げる。髪がでこからだらしなく雪崩れ落ちても、現れるのが整った顔だから少しむかつく。


「……馬鹿にしてます?」

「してない。むしろ感謝してるくらいだ。これで、とりあえずは俺もクビを切られない」


堪えきれないといったように、鴨志田は、ほくそ笑む。


やはり掴めない人だ。そもそも今回の案件は、半分近く鴨志田の手柄だ。それを主張すれば一躍ヒーローにもなれそうなものだが、そうはしないで、解雇を免れたと喜んでいる。


「鴨志田さんはいいんですか。私ばっかり持ち上げられてますけど」

「いいんだよ。実際、今回の件がうまくいったのは、全面的に後輩のおかげだからな」


優しい顔つきに、希美は喉奥にこみ上げるものを感じた。


「そんな顔するなよ。本気でそう思ってんだから」


それに、と彼はつけ加える。


「あんまり祭り上げられると期待されちゃうだろ。嫌なんだよ、そういうの。サボれなくなる」

「それが本音かい! またカロリーか!」


そんなことだろうと思ってたけど!

希美は、関西仕込みの突っ込みをお見舞いして席へ戻る。


うっかり手が滑った。積まれていた書類の山をなぎ倒してしまう。あぁ、あぁ、と小さな部署が、大きなビルの片隅で密かに荒れはじめる。


希美も入れて、やっぱり店舗円滑化推進部は問題だらけだ。






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