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ダックダイニング店舗円滑化推進部 ~料理は厨房だけでするものじゃない!~  作者: たかたちひろ@『巻き込まれ転生幼女』2/28 発売!
一章

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11話 ペットの桜文鳥で癒される?


とはいえ、週明けまでに全てをまるっと解決できる良策なぞ、簡単に思いつくものではなかった。


業務に戻っても退勤してからも、ぐるぐる頭は空転だけを繰り返す。何度も、件のSNSを開いた。


元の呟きは消えていたが、延焼が止まらない。根も葉もない悪口が溢れ返っていた。


なにか言い返してやろうと、文字を打っては火に油だとやめる。家にたどり着く頃には、スマホも希美も、熱暴走する一歩手前まできていた。


だが、ひんやりとした部屋の空気に迎えられて、やっと少し和らぐ。


すうっと、頭から仕事のことが遠ざかった。


部屋は築十年、九畳のなんてことのない1Kだ。

キッチンを兼ねている細長い廊下を渡って、リビングルームに入る。


まず様子を確認したのは、机の端に置いた直方体のケージだった。小さな扉を開けると、キュウと声がして、ついにやにやしてしまう。


「ただいま。元気だったか~、きゅーちゃん」


希美がカゴの中へ手のひらを伸べると、その子は小さく跳ねながら、伝い出てきた。


あまりの可愛さに、目一杯抱きしめたくなるが、そんなことをして潰れたら大変だ。

そっと壊れ物を扱うように、両手で優しく包んでやる。くすぐったかったのか、彼は希美の指の間からまだら模様の顔を覗かせた。


赤いクチバシをふるふると振るのは、桜文鳥である。

一人暮らしと同時に飼い始めて、早二年。希美の癒しであり、生活のパートナーだ。飼う時には散々「結婚が遠のく」なんて友達に反対されたが、結局その可愛さには勝てなかった。


常に室温管理を徹底しなくてはならないなど大変な面もあるが、飼ったことは今も後悔していない。それ以上に、彼の存在には救われてきたのだ。


おかげさまで、一人の寂しさを感じたことはあまりない。


しばらく無心になって、指先で戯れる。頃合を見て、


「ご飯にしようね」


希美は小皿にエサとなる玄米を入れてやった。


二日前に補充したばかりなのだが、空に近い状態になっていた。


きゅーちゃんは皿の淵に飛び乗ると、一粒一粒ついばんでいく。その姿を見ていたら、ぎゅる~とアンニュイな音でお腹が鳴った。


また美味しそうに食べるのだ、これが。

その点は、飼い主に似たのかもしれない。


きゅーちゃんが満足したところで、ケージへ戻す。それから普段着に着替えて、もう一度家を出た。


基本的に希美は、外食しかしない。スーパーやコンビニの惣菜では味気ないし、自炊は高校生以来からっきしなのだ。


一通りの調理器具は一応揃えてあるが、二年過ごして、まだまな板さえ使ったことがない。冷蔵庫もお酒が冷えているだけ、ほとんど使っていない。


今日は中華か、和食か、イタリアンか。気分と相談しつつ、街へ繰り出す。きゅーちゃんに癒されたおかげだろう。すっきりとした頭に、また『はれるや』のことがかすめた。


こうして店に悩んだ時、選ばれる店になるにはどうすればいいか。


SNSでの炎上を発端に事は大きくなったが、究極的にはそこに尽きる気がした。

人が入る店は、噂がどうあれ潰れないのだ。


希美は、越谷の街並みに、金町の商店街を重ねてみる。ふと、一人の顔が思い浮かんだ。



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