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【更新休止】魔法使いの花嫁たち  作者: 春夏 冬
5月:ようこそ魔法学園へ
35/62

side SS:とある少女と合コンパーティ

 わんわん:そういえば今度のゴールデンウィークで予定している女子会ですが、場所はこちらでいかがでしょうか。


 URL:https://www.×××.com/×××


 わんわん:私の知り合いが経営している料理店なのですが、今度ぜひお店の雰囲気や料理の味について感想を教えて欲しいと声をかけられておりまして。


 ALICE:私は構いませんが、複数人で押し掛けても大丈夫なのですか?


 わんわん:えぇ、そこはすでに確認済みです。お友達もどうぞとのことでしたよ。


 Melty:おぉ! 写真の料理がとても美味しそうじゃのぉ! わしも文句なしじゃて!

 

 HIME:iku


 N:問題ない。楽しみ。


 わんわん:まだお返事をいただいてない方もいますが、みなさん大丈夫そうですね。席が埋まるといけませんので、少し早いですが予約の連絡を入れておきます。


 HIME:あー、やっと落ち着いたー。


 HIME:お、なんかいい感じのお店じゃん!


 HIME:ん? てかなんかここ見たことある気がする。有名なところか?


 N:私は知ってる。多分ユーも知ってる。


 HIME:うん? どういう話?


 N:この前ユーと伊南くんが偶然話してるのを聞いた。


 N:今度合コンに行くって言ってた。


 N:でも口止めされてたの忘れてたからこの話はなし。


 ALICE:へぇ


 ユーくんのお姉ちゃん♡:ちょーっとお話聞きたいゾ♡

 はぁ〜、なんだか気が重いなぁ。

 私――三枝(さえぐさ)ゆうかは今から訪れる気重な時間についため息を吐いてしまう。

 今日は友人のみっちゃんとよしのんに誘われて街中でショッピングやスイーツ巡り、その他にも色々と楽しい時間を過ごしていた。

 普段はインドアで引きこもりな私を、趣味や性格が正反対なみっちゃんとよしのんはあちらこちらにと散々に連れ回してくれたおかげで、自分一人では絶対に体験しないであろう経験を得ることが出来た。

 誰かと遊びに出かけるということがこんなにも楽しいことなのだと、もしかしたら私は生まれて初めて感じたかもしれない。そう感じるくらいには私はこれまで外の世界に興味がなかった。

 

 私の世界は創造物の中にあって、特に本を介して没入できる数々の物語こそが私の唯一の楽しみだった。

 物語の中でなら、いくら冴えない私でも主人公でありヒロインでもある。

 楽しみがほとんど見出せない現実(リアル)に居場所を求めずとも、私は創作の世界に囲まれて暮らしていければそれでいい。そんなことを本気で思っていた。

 だけどそんな私の人生観を、みっちゃんとよしのんはたったの数ヶ月で大きく変えてしまったのだ。

 

 クラスの中心で明るい性格の、ちょっと見た目が派手なみっちゃん。

 同い年とは思えないくらいに大人っぽい、ちょっとアダルトな雰囲気のよしのん。

 二人とは高校二年生に上がってから知り合ったばかりの仲だけど、こんな地味で冴えない私なんかと仲良くしてくれるとても気のいい人たちだと心から思う。

 そして二人と友人になれたことがとても幸福なことだと私は胸を張っていうことが出来る。

 ……うん、本当にそう思うのだけれど。

 

「(でもやっぱり合コンはないよー!)」

 

 友達に向かって騙し討ちなんて言葉は使わないけど、残念ながら心象としてはそれに近い。

 空も暗くなってきたしそろそろ解散かなーと思った矢先、みっちゃんの口からまさかの合コン宣言。

 聞き間違えたかと思って聞いてみたけど、やっぱり合コン宣言。

 

『あれ? 言ってなかったっけー。今日ねー、良いとこの男の子たちと合コンするんだよ』


 聞いてないよー!

 ……うぅ、まさかこんな私が合コンだなんて。神様、お恨み申し上げます。

 ただせっかく今日という日を楽しませてくれたみっちゃんとよしのんの気を悪くさせたくないなと、なんとかギリギリのところで笑顔を取り繕いながら了承する。

 うん、了承するのだけれど胃がキリキリするよぅ。

 

 でもでも考え方によっては、男の子たちはきっと私なんかには目もくれないでみっちゃんとよしのんと仲良くしようとするに違いない! うん。絶対にそう!

 だから私は隅っこでじっとしてるだけでいいはず! もしも話しかけたら愛想笑いは……うん。上手く頑張ろう!

 そんな密かな決意を固める私を傍に、みっちゃんはどんどんと話を進めていく。


「あ、そうだー。ねぇよしのん、ゆうかっち。先に三人の合図を決めておかないとね」

「あ、合図って?」


 なんか言い出したー!

 え、え、合図ってなんの話だろう?


「もうゆうかっちってば分からないフリなんてしたってさー! そんなんもう男の取り合いに決まってるっしょ」

「と、取り合いって……!」

「ふっふっふ、それはとても重要なことじゃーないですか。こっちは三人、向こうも三人。いい? ゆうかっち。合コンってのはね……椅子取りゲームと同じなんだよっ!」


 合コン=椅子取りゲーム。そんな常識初めて聞いたよぉ!


「あ、あのでもぉ、わ、私はその、特に男の子とお付き合いしたいとか、そういうのはないので……」


 私のことは気にせず二人で楽しんでもらえればいい。

 そう思って提案したつもりだったけど、どうにもみっちゃんとよしのんのニヤケ顔は深みを増すばかりだった。

 うぅ……二人のその表情は碌な予感がしないんだよ。


「ばーかねっ! ゆうかっち。あんたそんなんじゃ一生独り身で人生終わっちゃうわよ! やっぱり女の子に生まれた以上恋の一つも二つもしてなんぼってものよ」


 う、うぅん

 

「そうだぞー。ってかさ、よく考えてみなって。これはチャンスよチャンス! 私たちがゆかりっちに似合いそうな男の子を見繕ってあげるからさ。ね? 人生初カレでも良さそうな子を見極めてあげるって」


 ……うぅん?


「そうそう! いやもちろんいい男がいなかったら別にいいの。でもさ、もしかしたら……万が一にもいいなーって男の子がいるかもしれないわけよ。無理強いなんてするつもりはないけどさ、あんたせっかく可愛い顔してるんだからそろそろ彼氏の一人でも考えてみなって!」


 彼氏……私に彼氏……。

 そ、そりゃあ彼氏に憧れを抱いたことがないなんて嘘は言わないけど……でもそんな人って本当にいるのかなぁ。


「ま、私とみっちゃんに任せときなって! もし大した男がいなかったらさっさと抜けて三人でご飯でも食べに行けばいいしさ」

「う、うん。わかった。その、もし本当にそういう男の子がいたら、ね? い、いなかったら本当にいいからねっ!」


 け、決して口車に載せられたわけじゃないんだからね!

 うんうん言いながら笑って頷く二人に必死に訴えかけるも絶対に聞いていない顔をしている。

 も、もぅ! 私の話をちゃんと聞いてよぉー!



 ******



「お、ここのお店だねー。とーちゃーくっ! ――おぉ、さすがは潤くん。なかなかセンスの良いお店だねー!」


 わぁー。私こういうお店に来るのって初めてだぁ……。

 そこは喫茶店とかファミリーレストランとか、そういう気軽に入れる雰囲気(私にはどちらにせよ敷居高めだが……)のお店ではなかった。

 外に出てる看板には学生にはいい値段のするコースの料金が記されているし、外観の装飾が派手すぎない程度に煌びやかで、そういった感性に疎い私から見てもとてもオシャレなお店なのだと感想を抱く。

 ……え、私なんかが本当に今からこのお店に入るのぉ?


「ちょっとー、ゆうかっちぃ? そんな惚けたなんて顔してると男の子たちに笑われちゃうぞー」

「こういうところも可愛いんだけど……まぁ初対面で見せる顔ではないよね」


 ぽけー。

 なんだか私、今日だけで大人の階段を全速力で駆け上がっているような気がする。

 お父さん。お母さん。どうやら世界は私が思っていた以上に広かったようです。


「男の子たちってもう中に入ってるの?」

「うん。ただ迎えに来るからちょっと待っててーって五分くらい前にメールが来てたわ。んで到着したよーってさっきメールを送り返したから……ほらゆうかっち! そろそろ戻ってこーい」


 ……はっ!

 心なしかどこか遠い世界へ飛び立とうとしていた矢先、みっちゃんの声で意識を取り戻す。

 危ない危ない。何かが始まる前から終わってしまうところでした。

 しかし改めて思う。こんな衝撃的な出来事を何でもない風に受け入れられるみっちゃんとよしのんはホントにすごい人たちだ。


「――恐るべしリア充」

「んー? ゆかりっち何か言ったー?」

「う、うぅん。何でもない! ちょっとお腹空いたかなぁって」

「え、さっき引くほど料理食べてたなかった……?」


 ともあれ、今日は私もちょっと頑張る日なのだ!

 ちょっと頑張ってちょっと大人になる。

 やれば出来る子! 頑張れ三枝ゆうかぁ!


 ――カランコロン

 

「ごめんね、お待たせしたかな?」


 ふとお店の扉が内側から開かれる。

 そういえば何やら誰かが迎えに来るなど話の断片が聞こえていたような気もするが、次の瞬間そんなことは頭から即消え去ることとなった。

 そこに現れたのは、中性的な優しい見た目をしているどえらいイケメン男子。


「………………おっふ」


 ……ふぇぇぇぇぇ。

 お父さん。お母さん。ゆうかはこんなハイグレード男子と合コンなんて生きて帰れる気がしないよぅ。


 

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