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根無し草  作者: はゆ
8/8

お姫様抱っこ

 紗良(さら)が立ち上がろうとすると、激痛(げきつう)が走る。足取(あしど)りが(みだ)れ、よろめく。(こし)へ伸びた、<彼>の手に支えられ、間一髪、転倒(てんとう)(まぬが)れた。

「僕の(くび)の後ろに、手を回して」

 <彼>は、紗良(さら)が立てないから、(かつ)ごうとしているだけ。他意(たい)は無いと判断し、命令(めいれい)に従う。

 (ひざ)裏側(うらがわ)背中(せなか)を引き()せるように()きかかえられ、お姫様(ひめさま)だっこと(しょう)される状態(じょうたい)になる。

 絵本(えほん)で見たことがあるから、知ってはいるけれど、実際(じっさい)にされるのは(はじ)めて。しかし、思い(えが)いていた理想とは(こと)なり、頭の中は()じらいで飽和(ほうわ)する。


 紗良(さら)が、最も懸念していること。

(おも)くないかしら?」

 (ふと)っているわけではない。けれど、四十一キロの質量(しつりょう)は、(かる)いとは言えない。

 お風呂(ふろ)に入ったばかりだから、(きたな)くはないとは思うけれど――気になり始めたら止まらない。

 <彼>が何を、どう感じているか、紗良(さら)にはわからない。(わる)印象(いんしょう)(いだ)かれないかと、不安(ふあん)になる。

全然(ぜんぜん)。天使を(ひと)()め出来て、幸せだよ」

「『幸せ』と云ってもらえて良かった……あ、声に出ちゃった。じゃなくて、()ずかしげもなく、よくそんな台詞(せりふ)()けるわね! 誰にでも云っているのかしら?」

「ツンデレか。本当にそう思ってるから、言っただけ。今言わないと、もう言える機会は無いだろ。誰にでもは、言わないよ」

 無意識に、涙が紗良(さら)(ほほ)()らす。

「失ってしまった機会は、二度と取り戻せないものね……」

 紗良(さら)自身を(いさ)めるように、声が()れ落ちる。目の前にある機会を大切にするのは至極(しごく)当然(とうぜん)。そうあるべきと、自戒(じかい)する。

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