第1章 第9話 幽霊
「ここが巫子の家か……」
学校を休んだその日の昼前。俺はようやく巫子の家と思われる「杜松医院」に到着した。……さすがに巫子の家で合ってるよな。杜松なんて苗字そんなにいないだろうし、子犬の家の近くだし。にしても……。
「綺麗だな……」
子犬から聞いた話では、巫子の母親が再婚した相手が個人病院をやっていたそうだ。個人病院と聞いてそれなりに古臭い、地元に根付いた小さな病院だと思ったがとんでもない。汚れひとつない綺麗な外観に、居住スペースだと思われる2階と3階がついている。なんというか、なんだろう。勝ち組感がすごい。
巫子が言うお金持ちというのは自分が女優やってるから、ということだと思ったが、この感じだと家も間違いなく大金持ちだろう。言いたくないがうちとは正反対だ。
「……行くか」
外観にビビっていてもしょうがない。なんせ俺は今から巫子の母親に、元夫は俺の両親を殺しましたかと訊かなければならないのだから。
「すいませーん」
「はいどうしました?」
外観通りに綺麗な待合室を進み、受付に声をかける。受付にいるのは綺麗な女性。どことなく巫子と同じ雰囲気を感じるので姉かと一瞬思ったが、さすがにそれは通じない大人の雰囲気がする。だとすると母親か……? まだ30代前半に見えるが……そういう家庭もないわけではないだろうし、そこは今どうでもいい。
「……初めてなので。診察券作ってもらえますか」
「はい。では保険証の提出をお願いします」
そう言われ、わずかに空いたガラスの敷居の穴に保険証を置く。それを確認し、何かを書いているところで。
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
巫子の母親が悲鳴を上げた。待合室にいる暇そうな老人たちの視線を背中に浴びながら、俺は母親の表情を観察する。
巫子に比べると遥かにわかりやすい。いや、同じシチュエーションならさすがの巫子も悲鳴を上げるか。なんせ。
「どうしました? 幽霊でも見たような顔ですけど」
俺が差し出した保険証は、俺の父が使っていた保険証。その名前を見て悲鳴を上げたのなら、答えは一つだ。信じたくなかったけど、疑う余地はない。
「俺はその保険証に書かれている男の息子です。ここで話されたくなかったら、中に入れてくれますか」
少し長くなりそうだったので分割にした影響で短いです。申し訳ありません。本日もう1話投稿するので、どうぞブクマしてお待ちください。




