第5章 第2話 復讐の闇
「むむむ……」
犬養先輩から話を聞いた日の放課後、私は学校から少し離れた辺鄙な場所にあるファストフード店でノートを広げる。このノートには私が調べ上げた『復讐者』の情報が全て載っている。これに犬養先輩の話から確定した内容を追加していく。
「『復讐者』は男でイケメン……それと女性を手籠めにするのがが上手い……」
犬養先輩は彼と言っていた。これで男性は確定……かなり重大な情報だ。半数が退学になった3年生からさらに半数を引くことができる。そして犬養先輩があんなにベタ惚れだったんだ。イケメンでなおかつ女性の扱い方が上手いのもほぼほぼ確定でいいだろう。
でもここで問題になるのが、言っちゃ悪いが残っている3年男子にイケメンはそこまでいないということ。遊んでそうだったりチャラチャラした連中は軒並み退学に追い込まれている。きっと例の学校大改革事件では『復讐者』とリア充グループの戦いになったのだろう。
となると非リアグループでイケメン……何となくイメージ通りだ。きっとダウナーで愛想が悪くて、でもイケメンで……そのギャップが魅力的な人物なのだろう。ダークヒーローというイメージが推測とピッタリ合う。
「やっぱり……宇佐美卯月かなぁ……」
ここまでは絞れたが、あと一歩が届かない。となると実際に付き合っていた宇佐美卯月に接触するのが一番。でもさすがは有名女優……あまり学校にいないし、見かけても接触する時間がない。それでも私の復讐を果たすためには……ん?
「宇佐美卯月!?」
「っ」
客が全くいない店内で、うちの学校の男子生徒と一緒にいるサングラスをかけている女性。一見不審者だけど、あの綺麗な黒髪をサイドテールにした姿……間違いない。宇佐美卯月……いや、本名宇佐田卯月に違いない。
「少しお話いいですか!?」
「え、あ、はい……」
宇佐美卯月の正面に座っていた男子生徒を隣に移らせ、私は彼女の正面に立つ。すると彼女はサングラスを外し……うわ、かわいい……。じゃなくて……宇佐美卯月。彼女で間違いなかった。
「サインかな? 写真とかもいいけど……あ、できればSNSに上げてくれると……」
「そんなのどうでもいいです!」
「そ、そう……」
有名女優だというのになぜかうれしそうにそわそわしていた彼女は私の返事を聞いてわかりやすくしょぼくれてしまった。なんか申し訳ない。
「だったらまずは自己紹介が先じゃないか?」
私にどかされた男子生徒が宇佐田先輩の隣に座る。……あれこの人、犬養先輩と話していた時に自販機でイチゴオレを買った人だ。宇佐田先輩と仲良さげということはおそらく3年生……3年生なら全員顔と名前は記憶してるけど……あんま印象ないな。それくらい地味。でも確か……。
「猪野……史郎……」
「……なんで俺の名前知ってんの?」
「勘違いしないでください。別にあなただけを特別覚えているわけではありません」
こんな人に関わっている場合じゃない。私の興味はただ一つ!
「私は1年A組、木矢戸こねこです。『復讐者』という人、知っているはずですよね!?」
「リベ……誰……? 史郎くん知ってる……?」
「あだ名だろそれ。知ってるわけない」
……ごまかすか。でもそれはありえないんだ。
「あなたは『復讐者』と付き合っていたはずです!」
「へぇ、卯月彼氏いたんだ」
「いないよ!? いないいない! 絶対いないからぁ!」
なぜか猪野先輩に強く弁明する宇佐田先輩。その様子はとても演技には見えない。
「……本当に『復讐者』を知らないんですか……?」
「うん……ごめんなさい。そんな人知らないです……」
嘘でしょ……あの情報がガセだったなんて……。だとしたら手がかりが……。
「リベンジャー、ってことは復讐だろ? 君……木矢戸さん。復讐したい人でもいるの?」
「……あなたに話すことはありません」
「とりあえず話してみたら? なんか知っていることあるかもしれないし」
「……そうですね」
どうしてだろうか。このいたって普通な男子生徒が、なぜか頼もしく見えてきた。わからない……わからないけどこの表情、話し方。何かが私の心に突き刺さってくる。それは優しくもないし鋭くもない、ただただ冷たく暗い闇のベールのように。
どことなく、私に似ている気がする。でも明確に違う。復讐という闇に囚われた私と、その闇を自在に操るかのような彼。そんなイメージに、私は呑み込まれる。
「私の姉を殺した男。そいつに復讐したいんです」
続編本格始動させていきます。ですが前までのように毎日投稿はできないかと思います。ゆっくりですが、ついてきていただけるとうれしいです。
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